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【リベルタパフューム】日本の香りの世界を切り開く若い才能(3ページ)

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その他ブランド香りの美学香水特集記事
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プレタポルテ・コレクションについて

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――― さて、いよいよ2021年3月のプレタポルテコレクションにつながっていくのですが、オーダーメイド香水ではなく、創業時よりオリジナル香水を生み出していく予定でしたか?

元々、パーソナライズの香水を通して「もっと香りを自由に楽しむ世界」を創りたいという構想を持ちながら調香の世界へと入り、そしてリベルタパフュームという形でそれをはじめた私ですが、自分の思う「いい香り」をどうしたら世の中にもっと知ってもらえるかということに頭を悩ませていました。私たちがクリエーションする香りは、間違いなくあなた(自分自身)のための香りです。しかし、自分のための香りであるからこそ、周りの人と共有しあうことが難しいという課題に直面していました。

私たちの香りは、鼻にツンとくる強さやキツさがなく、優しく寄り添ってくれるような香りが特徴です。それでいて香水を嗅ぎ慣れた人にとっても、新しいアコードと軽快な心地よさからユニークに感じていただける香りでもあると自負しています。どこかで私たちの香りに出会っていただければ、間違いなくその香りを気に入っていただける。でも、どうしたらもっと多くの人に香りを届けられるだろう……。

そんな答えのない悩みを抱えながら悶々と過ごしていました。そんな中、ある日開かれた香水好きの方々が集まったホームパーティが自分の中の転機となりました。集まった人の全員が香水好きのパーティでしたが、とある一人から「パーソナライズもいいけれど、あなたの価値観で作った香水が欲しい。」と言われたのです。

言われた直後は、否定的ではあったのですが、もし「これがリベルタパフュームだ!」という「象徴となる香り」をクリエーションすることができたら、今よりもっと多くの方にも”わかりやすく”私たちの香りを伝えることができるのではないか、と考えたのです。それなら、プレタポルテ(完成品)だからこそできることをやってみよう。すでにご愛用いただいている方にとっても、初めて触れていただいた方にとっても「共通の指針」となるような香りを創ろうと決意したのです。

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一作目の「サクラマグナ」について

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――― 一作目の「サクラマグナ」(50ml 19,778円)について聞かせて下さい。この香りは四季に分けて発表される「香りのないものに、香りを与える」シリーズということなのですが、「香りのないものの香りを作ろう」と考えたきっかけは何ですか?

私は香水とは、記憶を紡ぐものだと思っています。ブランドディレクターとして、香りを創ろうと考えた時に参考にするのは自身の原体験です。

心が打ち震えた体験を紐解いていく中で、私の記憶の中には、さくらやひまわり、もみじといった存在がありましたが、ある日ふと、それ自体はどれも香りのないものたちだな、と気がついたのです。しかし私の記憶の空間、その情景には香りのイメージは存在しているのです。

その記憶の中にあるイメージをおぼろげながら紡ぎ出し、香りという実態を与えることができたのであれば、きっと誰かにとっても感動を与えることができるのではないか、と考えたました。それが「香りのないものに、香りを与える」というシリーズのインスピレーションです。

このプレタポルテコレクションは、開放という意味の「LIBERATIONコレクション」という名前をつけました。あらゆる既成概念を取っ払い、自由な発想とアコードでクリエーションするという、私たちの意思表示でもあります。

――― 日本人の誰もが知っていて、食でたとえると松茸のように貴重なものとして崇められている〝桜〟の香りを作るということは、否応なしに注目されることなので、プレッシャーにはなりませんでしたか?

あまりプレッシャーに感じることはありません。先ほどお伝えしたとおり、私の原体験から紡ぎ出しているので、確かにそこには「N=1」が存在していると思います。

あとは、私たちは信じる道を進んでいくだけです。そこに同意されない方々もいると思います。しかし、それでも良いと思っています。ただ私たち自身と、その大切な人たちにとって、恥じないものでありさえすればいいと思います。

――― 威風堂々と咲き誇る満開の桜をイメージした香りを創造するにおいて注意を払った点についてお聞かせ下さい。

自分の中に持っていた「従来の桜の価値観」への違和感が起点となっています。私が幼少期に住んでいた場所は、住宅街ですが全長3kmもある桜並木が有名でした。満開になると、まるで覆いかぶさるように咲く桜の情景は、他のブランドが表現するような可憐な桜とは異なっていたと思います。その原体験にある香りはなんだろう、と常に問いかけながらクリエーションすることを大切にしていました。

構想期間を含めると1年くらいかけて、39回の試作を経て出来上がりました。同じくパフューマーである武宮と共同クリエーションする初めての試みでもあったので、お互いの感性を混ぜていくことにも多くの苦労がありました。

――― 反響の方はどうでしたか?

香り自体に、好意的なご意見が多くて嬉しかったです。この頃から、香水業界で長年活動されてきた方々を中心に、リベルタパフュームの香りを嗅いでいただく機会が増えました。

――― そして、このサクラマグナと共に、名古屋初上陸を果たされました。2021年5月12日から18日にかけてジェイアール名古屋タカシマヤでポップアップイベントが開催されたのですが、このタイミングで名古屋上陸を想定しておられたのですか?

いえ、お恥ずかしながら、たまたまお声がかかったので…(笑)

――― 名古屋のお客様のリベルタパフュームさんに対する反応はどうでしたか?

緊急事態宣言下だったので、お客様は来ないのではないかと心配していましたが、結果的にそのフロア全体で一番の売上となっていたようです。通りすがりの方が一目惚れしてくださって、2日間じっくりとお選びいただき、フルボトルを4本もお迎えいただけるなど、驚きの連続でした。

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二作目の「ソルテッラ」について

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――― 続いて、2021年5月にプレタポルテコレクションの2作目の「ソルテッラ」(50ml 17,578円)の登場となるわけです。ひまわりの香りなのですが、「地上に咲いた太陽の香り」というキャッチコピーが素敵ですね。リベルタパフュームさんのホームページを拝見して感じたのが、絶妙なキャッチコピーです。これは山根さん自身がお考えになるのですか?

リベルタパフューム発足時から、チームで活躍してくれている女性メンバーが考えてくれています。私の言葉を彼女に伝え、彼女がそれをより素敵なものへと昇華してくれます。

――― さて、「ソルテッラ」についてですが、私が一番最初に気になったのは、一作目との価格の違いです。

私が価格をつける時は、自分がいち愛好家として手にとった時に、お得に感じるかどうかを大切にしています。もっと取引できる量が多くなれば、よりお求めやすい価格でご提供できるようになると思います。

――― 香りのないひまわりの香りを創造する中で、苦心された点について教えていただけませんか?

公式サイトのジャーナルでも紹介しているのですが、いちど完成と決めた香りを、シニアパフューマーにコテンパンにダメ出しされたんです。アコードを取ることばかりに目を向けると、自分たちの視野が狭くなってしまい、俯瞰すると完成度の低いものになってしまっていました。そこから再構築をはじめ、構想期間を含めると1年くらいかけて、25回の試作を経て出来上がりました。

――― そして、2021年7月28日から8月3日にかけて博多阪急でポップアップが行われました。遂に九州にも進出したわけです。さて、今月(10月)27日から日本一の香水イベントであるサロンドパルファンに目玉イベントとして2週間にわたり出展されるということですが、これは本当にすごい事ですね?イベントのご招待を受けたいきさつを教えていただけますか?

これまでどのイベントも、自分たちでここに出店しよう!と考えて取り組みを進めてきたわけではありませんでした。今回のサロンドパルファンも、先方からお声がけをいただいたことがきっかけです。やはり香水に対するカウンセリングやオーダーメイドといった要望が高まっているのだと思います。

ただ出店自体は実は悩んだ部分もあります。メンズ館での開催は、ジェンダーニュートラルを掲げる私たちにとって、誤解を与えてしまうような表現になるのではないか、と。私たちは香水に性別は関係ないと考えているので、自分が心惹かれる香りを自由に選ぶことをサポートする存在でありたいと考えています。ですので、場所がメンズ館であってもリベルタパフュームが掲げる価値観は変わらないと思っていただけたら嬉しいです。

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