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ペンハリガン

【ペンハリガン】レガシー オブ ペトラ(ナタリー・グラシア=セット)

ペンハリガン
©Penhaligon's
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レガシー オブ ペトラ

原名:Legacy of Petra
種類:オード・パルファム
ブランド:ペンハリガン
調香師:ナタリー・グラシア=セット
発表年:2022年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/34,430円

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失われた王国ペトラの香り

©Penhaligon’s

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2014年にペンハリガンから(19世紀末の)ロンドンと植民地とを結ぶ大英帝国の貿易ルートから想起された「トレードルート コレクション」として、「ロタール」「エンプレッサ」「ラヴァンティウム」「エッサウィラ」といった4種類(うち1種類は限定品)の香りが発表されました(日本では2015年2月25日から全国発売されました)。

そして、2015年に5作目の「ハルフェティ」が発売され、翌2016年に〝エジプト〟をテーマにした二つの香り「Alizarin」と「オードドニル」が発売されました。さらにその流れを汲んで、2017年に発売されたのが、8~9作品目となる〝インド〟をテーマにした「パイタニ」と「Agarbathi(アガルバティ)」でした。

2018年に発表された「カイロ」は、コレクションの記念すべき第10弾の香りでした。さらに2019年に発売された第11弾の香り「バビロン」が発売され、2021年に第12弾の香り「コンスタンチノープル」が発売されました。

そして、2022年に発売された第13弾の香り「レガシー オブ ペトラ」は、ナタリー・グラシア=セットにより調香されました(日本では2022年10月のサロンドパルファンで限定販売されました)。

ジョン・ウィリアム・バーゴンの詩「ペトラ」の一文〝時の刻みと同じくらい古いバラ色の都市(the Rose Red City)〟からインスパイアされた香りです。

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『インディ・ジョーンズ』にも登場したペトラとは?


『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)

『シンドバッド虎の目大冒険』(1977)

「ペトラ」とは、ギリシャ語で〝崖〟を意味する、ヨルダンにある世界遺産の遺跡です。それは死海とアカバ湾の間にある渓谷にあります。特にエル・カズネ(宝物殿)は、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)や、『シンドバッド虎の目大冒険』(1977)のロケ地としても有名であり、紀元前30年~9年の間に建設されました。

紀元前168年にかの地は、アラブ史上初めて騎馬部隊を編成した戦闘民族であり、遊牧民としてキャラバン貿易(香料を中心とした貿易)と盗賊稼業で莫大な富を生み出したナバテア人により、ナバテア王国の首都として建設されました(ワインも独自生産)。

古代中東のシルクロードの交易路としてペトラは、キャラバン隊が運んできた香辛料がガザの港からヨーロッパへ運ばれるまでの最後の逗留地として大繁栄しました。

やがて紀元前63年ごろ、ローマの将軍、ポンペイウスにより、ローマの属国(自治は認められる)になります。しかし、西暦1世紀ごろになると、アラビア半島西域を通る交易ルートは紅海を利用した海上貿易が主流となり、陸上交易路も、パルティアのハトラやシリアのパルミラなどのペルシャ湾ルート上の都市が台頭し、ペトラの商業都市としての価値は失われていきます。

結果的に、106年にローマ皇帝トラヤヌスによってローマのアラビア属州に組み込まれ、363年と749年のガリラヤ大地震により消滅しました。

時は経ち、1812年に遺跡としてはじめてヨーロッパへ紹介されてからは、アッシリアやヘレニズム文化などの影響を受けたエキゾチックで美しい建造物や彫刻が、世界中の人々を魅了することになりました。そんな悠久のロマンに満ちた〝ペトラの遺産〟を素肌に投影させる香りなのです。

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ミルラとリコリスに降りそそぐ、ベルガモットとウイキョウの神秘的な香り

©Penhaligon’s

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〝ペトラの遺産〟という名のこの香りは、紀元前のスパイス交易の街へと私たちを誘う(いざなう)香りです。未知の香りとの遭遇により、新しい感覚を呼び覚ましてくれる、過去と未来をつなぐ旅のはじまりです。

砂漠を照らし続ける太陽を思わせる輝くベルガモットとフェンネル(ウイキョウ)の独特な甘辛くて苦い野菜の香りの中に、グリーンティーが注ぎ込まれるようにしてこの香りははじまります。

最初からその香りの背後に、スパイシー/蜂蜜なリコリスと暖かいミルラが広がっていることを感じることが出来ます。それはまるでペトラのエル・カズネ(宝物殿)の前に立った瞬間の壮大さと神秘と畏怖の念さえも抱かせる未知なる感覚に包み込まれていくのです。

どこまでもストレートなリコリスが黒い不安を生み、どこまでも優しく暖かく抱擁するようなミルラが、琥珀色の安心を生み出していく不思議なハーモニーに心奪われていきます。何よりも素晴らしいのは、ドラマティックでありながら、すべてがまろやかに調和が取れていることです。

そして、ハーバルなローズマリーの静寂を湛えたインセンスがうっすらと注ぎ込まれ、さらなるよろめきが付け加えられてゆくのです。やがて、満たしゆくバニラと(ミルキーなチョコレートのような)ベンゾイン、アンバーグリスがミルラと溶け込み、燃える抱擁とスパイシーな官能が混ざり合う、エキゾチックでロマンティックな余韻を残してくれるのです。

世界中のそれぞれの古代遺跡が突出した個性と大胆さを兼ね備えているように、この香りもそのような特徴を持つ大胆な香りです。

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香水データ

香水名:レガシー オブ ペトラ
原名:Legacy of Petra
種類:オード・パルファム
ブランド:ペンハリガン
調香師:ナタリー・グラシア=セット
発表年:2022年
対象性別:ユニセック
価格:100ml/34,430円


トップノート:グリーン・ティー、フェンネル(ういきょう)、ベルガモット
ミドルノート:リコリス、ミルラ、オリバナム、ローズマリー
ラストノート:ベンゾイン、バニラ、ウッディノート