【軽蔑】
Le Mépris 1959年に『勝手にしやがれ』を監督し、はじめての長編作にして世界中にヌーヴェルヴァーグ旋風を巻き起こすことになったジャン=リュック・ゴダールが、『女は女である』(1961)『女と男のいる舗道』(1962)などの傑作を生み出しながら、ついに60年代を代表するフランスのセックスシンボルであるブリジット・バルドーを主演に迎え作り上げた作品。
イタリアの小説家アルベルト・モラヴィアが1954年に発表した原作は、1961年にアンナ・カリーナと結婚し、早くも破綻していた夫婦生活について大いに悩んでいたゴダール自身の深層心理と強く結びつくものがありました。
カプリ島を一望する岬の先っぽに建築された奇跡の近代建築物マラパルテ邸でロケーションされた映像もとても美しい。
こう言ってよろしいならば、私は自分の映画をいつも、人生を生きるのと同じやり方で作ってきました。私は映画を作ることと人生を生きることを区別して考えたことがありません。
ジャン=リュック・ゴダール
あらすじ
脚本家のポール・ジャヴァル(ミシェル・ピッコリ)はアメリカから来た映画プロデューサー、ジェレミー・プロコシュ(ジャック・パランス)に、大作映画『オデュッセイア』の難解すぎる脚本の手直しを命じられます。
そして、映画監督フリッツ・ラングを紹介され、ポールの妻であり女優のカミーユ(ブリジット・バルドー)も合流します。ジェレミーのカプリ島のロケーションに誘われた二人は、自宅のアパートメントに戻るとすぐに口論をはじめます。そして、「私はあなたを軽蔑する。もう愛はないの。あなたに触られると気分が悪くなる」とカミーユはポールに冷酷な一言を吐き捨てるのでした。
カプリ島のロケーション撮影に参加する二人には倦怠感だけが漂っています。ラングとの仕事に熱中するポールを尻目に、夫に対する軽蔑の気持ちが高まっていくカミーユ。そして、ジェレミーに誘われがまま、ローマに帰ってしまいます。
しかし、スポーツカーに乗った二人は交通事故に巻き込まれ無残な死を遂げるのでした。
ファッション・シーンに与えた影響
1963年に公開されたバルドーとゴダールの唯一の接点『軽蔑』が、ファッション・シーンに与えた影響は、以下の一点であり、その一点が永遠の閃光を放ちます。
- ブリジット・バルドーとフレンチ・カジュアル
世界に影響を与えるフレンチ・ファッションは、今ではラグジュアリー・ブランド発信によるものなのですが、フレンチ・ファッションの本質は、ブランド品ではなく、カジュアルな装いの中にあるということを教えてくれます。
作品データ
作品名:軽蔑 Le Mépris (1963)
監督:ジャン=リュック・ゴダール
出演者:ブリジット・バルドー/ミシェル・ピコリ/ジャック・パランス