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イッセイ・ミヤケ

【イッセイ ミヤケ】ル フードゥ イッセイ(ジャック・キャヴァリエ)

イッセイ・ミヤケ
©ISSEY MIYAKE INC.
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ル フードゥ イッセイ

原名:Le Feu d’Issey
種類:オード・トワレ
ブランド:イッセイ・ミヤケ
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:1998年(現在廃盤)
対象性別:女性
価格:情報なし

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世紀末に現れた『イッセイの元気玉』

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©ISSEY MIYAKE INC.

私は、グルマンノートに対して画期的だったのは、ティエリー・ミュグレーの「エンジェル」と「ル フードゥ イッセイ」の二つだと考えています。グルマンは、最近の傾向が示すように、フルーツと結びつくと、砂糖漬けのフルーツとなり、面白みも創造性もなくなっていくのです。

マチルド・ローラン

イッセイ・ミヤケから1992年に発売されたファースト・フレグランス「ロー ドゥ イッセイ」は、三宅一生の予想を遥かに超える成功を収め、『香りのオゾン革命』を生み出し、世界中の男女が、〝水の香り〟を浴びるように身に降りかけるきっかけを生み出したのでした。

そして、その勢いの中、2年後の1994年に「ロー ドゥ イッセイ プールオム」が生み出され、こちらも大ヒット作となり、世界中に〝ユズ旋風〟を巻き起こしたのでした。

シャンタル・ルース様

そして、いよいよ世紀末の足音が聞こえ始めた1998年に、ボーテ・プレステージ・インターナショナル社( BPI )シャンタル・ルースは、前二作品を生み出し、イッセイ・ミヤケの香りと共に、香水業界に下剋上を果たしたジャック・キャヴァリエに、第三弾の香りを生み出すことを指示したのでした。

この香りの名を「ル フードゥ イッセイ」と申します。〝イッセイの炎〟と名づけられたこの香りは、発売と同時に、その挑発的かつ奇妙な香り立ちにより、まったく売れず、わずか2年で廃盤になってしまった『自らを焼き尽くす火の玉』となってしまいました。

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ハートに火をつける、香りの〝燃える闘魂〟

©ISSEY MIYAKE INC.

スモーキーなガイアックウッドの香りに乗って、情熱の赤い薔薇(スパイシージャミーローズ)の妖しい煌きが全身に降り注ぐようにしてこの香りははじまります。

すぐに酸味の効いたライムとベルガモットに生温かいココナッツミルクが注ぎ込まれ、素肌の上に滑らかに引き伸ばされてゆきます。どこか焼きあがったばかりのキーライムパイのような香ばしさに包まれてゆきます。

まるで聖母のような清らかな心を持つ女性の中に眠る情欲を、呼び覚まし、炎のように燃え上がらせていくように、この香りの中に、ゴールデンジャパニーズリリーが花を咲かせ、粘土のような奇妙な香りを広がらせてゆきます。

そして、むせ返るように甘いオリエンタル・フローラルブーケに、スパイス、酸っぱさ、鋼鉄、食欲と性欲を掻き立てるといった、あらゆる香りが〝ハートに火をつける〟ように押し寄せてくるのです。

ジャック・キャヴァリエは、リリーこそが、『イッセイ ミヤケの世界観』の象徴だと考えていました。だからこそ、最初の三作品において、三種類のリリーに、香りの方向性を決定付ける役割を託したのでした。

やがて素肌の上に溶岩のように降り注ぐミルクが、すべてと混ざり合い、独特な香りを溶け込ませてゆきます。それはホイップクリーミーなサンダルウッドのようでもあり、パウダリーな白いバニラのようでもある、何よりも死の灰のようなガイアックウッドとも言える、退廃的かつ背徳的な余韻に包まれ、もう何者も怖くなくなる無敵の感覚に満たされていくのです。

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人々が復活を待ち望む、香りの〝恐怖の大王〟

©ISSEY MIYAKE INC.

『真田幸村の謀略』(1979)の燃える彗星

『真田幸村の謀略』(1979)の燃える彗星

心に爽やかな風が吹く、うっとりするような甘さを生み出すといった〝愛される〟要素を一切排除した、あの「ロー ドゥ イッセイ」の世界観とはまったく逆の『炎の惑星』=ノストラダムスの降臨を予見したような、ミルキーアンバーに溺れる香りです。

それはまさに、香りの〝燃える闘魂〟であり、別名〝ル フードゥ イノキ〟と呼びたくなるほど、プロレスを楽しむような感覚で、香りを楽しむことが出来る人に捧げられた「香りのワンダーランド」とも言えます。心地よい香りである以上に、ワクワクさせる、血湧き肉躍る香り。ハートに火をつけてくれる香り。それが「ル フードゥ イッセイ」なのです。

いまだに、この香りと似た香りを見つけ出すことのできない〝恐怖の大王〟が降りてきたかのような唯一無二の香りです。

個性的なボトル・デザインは、プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケの店舗デザインや、ルイ・ヴィトン、フェンディ、ベルルッティや、ユニクロの銀座店や新宿メガストアなどの店舗デザインを手がけてきたデザイナー、グエナエル・ニコラによるものです。

もしかしたら、1979年の東映時代劇『真田幸村の謀略』(1979)の燃える彗星からインスパイアされたデザインかもしれません。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ル フードゥ イッセイ」を「ミルキーローズ」と呼び、「ルフードゥイッセイはすべてが驚きだ。嗅いでみると、狂気じみたビデオクリップの再生ボタンを押しているようなものだった。そこからいろいろなものが飛び出してきて鼻先をかすめる。」

「焼きたてのバゲット、ライムの皮、清潔で湿ったリネン、シャワー用石けん、熱せられた石、塩からい肌、少量のビタミンB錠さえも。ほかにも未確認飛行物体があったのは確かだが、初めはいくつかはつかみ損ねてしまった。」

「この製品を作ったのが誰であれ、香水業界では極めて稀な素質を持っている。ユーモアのセンスだ。ここまでオリジナルのものを恐れずに、瓶に詰めて販売した人に「ブラボー」と叫びたい。だが、人気が出る前に怖気づいて製造を止めてしまったのではみっともない。」「この香りをまとうかどうかは別にしても、どこかで見かけたらコレクションに加えたほうがよい。香水というのは、どんなものよりも携帯しやすい知性だということを忘れないためにも。」と5つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ル フードゥ イッセイ
原名:Le Feu d’Issey
種類:オード・トワレ
ブランド:イッセイ・ミヤケ
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:1998年
対象性別:女性
価格:情報なし

トップノート:ブルガリアンローズ、コリアンダーリーフ、マホガニー、アニス、ベルガモット、ココナッツ
ミドルノート:ミルク、花椒、キャラメル、ローズ、ゴールデンジャパニーズリリー、ジャスミン
ラストノート:ガイアックウッド、サンダルウッド、ホワイトアンバー、バニラ、シダー、ムスク