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イングリッド・バーグマン

イングリッド・バーグマン1 『カサブランカ』2(2ページ)

イングリッド・バーグマン
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ハリウッド史上初のナチュラル・ビューティーの誕生

一度目の「君の瞳に乾杯」が発せられる衣装。

ブラウスとスカートに極めてナチュラルなメイクアップ。

ハンフリー・ボガートと地図でモロッコを見るバーグマン。

クロード・レインズと愛猫を抱くバーグマン。

イルザ・ラント・ルック2 ブラウス×スカート・アンサンブル
  • 白のシルクブラウス、胸ポケット
  • グレーのスカート、白のストライプ、パリ陥落のシーンで登場するスカートスーツのスカート
  • バイカラー・シューズ

スウェーデン映画『間奏曲』(1936)を見たデヴィッド・O・セルズニックは、1939年に23歳のバーグマンをハリウッドに招いてリメイク版として『別離』を製作することになります。そのときに、彼女に出会った瞬間に彼が言い放った言葉が以下のものです。

「なんてこった!靴を脱ぎたまえ。」(バーグマンの高身長に対してハイヒールを履いていると勘違いして生まれた発言)

「もちろん気がついているだろうが、君の名前はそのままじゃ困るんだよ。まずファースト・ネームがいけない。われわれには発音できないんだ。きみはアイン=グリッドと呼ばれるだろうし、バーグマンもいけない。あまりにもドイツ的すぎる。」

そして、別の名を提案されたときに、バーグマンは答えたのでした。

「わたしは他人の名前など欲しくありません。じつをいうと名前を変えるつもりはまったくないんです。わたしの名前はイングリッド・バーグマンで、生まれたときからこの名前で通してきたんですから、アメリカでもイングリッド・バーグマンと呼んでもらいます。皆様には私の名前の発音の仕方をおぼえてもらいますわ。」

反論するバーグマンに対して、さらにセルズニックは言い放ちます。

「きみは眉が濃すぎるし、歯並びもよくない。ほかにもいろいろと問題がある。」またまたバーグマンも反論します。

「あなたは大きな間違いをしたようですわ。あなたは袋に入った豚を盲買いすべきではなかったんです。『間奏曲』のわたしを見て気に入ってくれたのだと思っていました。でも実物と会ったらあらゆることを変えさせようとなさっています。そういうことならわたしはこの映画には出ません。この話はなかったことにしましょう。私はつぎの列車に乗って家へ帰ります」

初対面にして二人は睨み合いながら坐っていたのでした。しかし、その時に、セルズニックは決心していたのでした。「彼女には、芯の強さがある一方で優しさがある。そして、天然の美しさが存在する」と。こうして、彼女は、ハリウッド史上初めて、ナチュラル・ビューティーを売りにした女優として売り出されることになったのでした。

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衣装デザイナーが最も苦心したドレス

実際の二人の身長は、バーグマンが3~5㎝ほど高かった。

バーグマンほどドレスの似合わない女優はいなかった。しかし、このドレスは彼女に似合っています。

ハート柄のデザイン。フリルなどのカワイイ要素は排除したデザイン。

ドレスの全体像。肩幅を隠すためのショルダーシルエット。

イルザ・ラント・ルック3 イブニングドレス
  • オーガンジー二重構造のハート柄のイブニングドレス、ハイショルダー、フルスカート、半袖
  • アクセサリーはピンキーリングのみ

この作品ほどバーグマンの北欧人の美貌が生かされた作品はありませんでした。それはノーメイクでも完璧と言えるほどの美貌が生み出す氷のような美貌が、笑顔で溶けた瞬間を、光と影、白と黒で、見事に表現したところにあります。

そして、ハリウッド史上初のナチュラル・ビューティーは、バーグマンのナチュラル・メイクがより映えるように、セットにペイントを施し、人工的な影を作り出した監督のマイケル・カーティスの執念が生み出したものでもありました。ちなみにメイクアップを担当したのは、オードリー・ヘプバーンを創造したメイクアップ・アーティスト・ウォーリー・ウエストモアの兄パーク・ウェストモアでした。

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グレタ・ガルボを髣髴させるナイトガウン



イルザ・ラント・ルック4 ナイトガウン
  • 光沢のあるシルクのナイトガウン、襟はシフォンラッフル、クラップドスリーブ、ウエストにコルセット