〝ホンモノ〟の存在感とは何か?
しかし、この作品『007 ゴールデンアイ』には、ゼニア・オナトップ並みに強烈な個性を放つ女性がもうひとり登場します。ニューMとして登場し、以後「007 スペクター」(2015)までレギュラー出演するジュディ・デンチ(1934-)です。
ローレンス・オリヴィエ賞を7度、トニー賞を1度受賞しており、1988年にはその貢献が認められ、イギリス王室からデイムの称号を授与されたイギリスの国宝とも言える大女優がM役に就任したのは、ひとえに彼女自身が大のボンドムービーファンだったからなのです。
そして、トップに立つものの孤独と冷酷無比さの中に一瞬だけ見せる「ボンド、生きて帰ってきてね」の一言がこの作品のすべてのシーンを奪い去るほどの〝ホンモノ〟の存在感を生み出したのでした。
1999年には『恋におちたシェイクスピア』でアカデミー助演女優賞を獲得し、以後、出演する映画ごとにオスカーにノミネートされる世界的な大女優になるのですが、M役は、ギャラ交渉を度外視し、二つ返事でずっと継続してくれたのでした。
ゼニア・オナトップ・ルック3
パイロットスーツ
- ネイビーのパイロット用ジャンプスーツ
ゼニア・オナトップ・ルック4
軍服
- よく見るとオールレザーの軍服
ゼニア・オナトップ・ルック5
ロシア・ルック
- 黒のウシャンカ
- 黒のロングコート
- ブラックロングブーツ
ゼニア・オナトップ・ルック6
ブラックスーツ
- ブラックスカートスーツ、ハイネック、コメットモチーフのベルトとボタンがついている
- 黒のパンティストッキング
- ブラックハイヒールサンダル
- ブラックレザーグローブ
60年代の東宝映画で水野久美様あたりが来ていたような宇宙人ファッション。
ゼニア・オナトップ・ルック7
コンバットルック
- シースルーシャツ
- サイドジップカーゴパンツ
- ロングコンバットブーツ
- ブラックグローブ
ゼニアのファッションで最も魅力的なものは全て戦闘服(ミリタリー)系であるということを考えても、90年代の女性ファッションにおけるミリタリーの重要性と革新性が見えてきます。
「戦う女は美しい」時代のはじまりであり、男性と対等に戦うことのできる女性=ノージェンダー時代が本格化される狼煙がこの時あげられたのでした。
作品データ
作品名:007 ゴールデンアイ GoldenEye(1995)
監督:マーティン・キャンベル
衣装:リンディ・ヘミングス
出演者:ピアース・ブロスナン/イザベラ・スコルプコ/ファムケ・ヤンセン/ショーン・ビーン/アラン・カミング
- 【007 ゴールデンアイ】五代目ニュー・ボンド=ピアース・ブロスナン登場。
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.1|五代目ボンド=ピアース・ブロスナン登場
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.2|ブリオーニを着るピアース・ブロスナン
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.3|イタリアンスーツがニューボンドの戦闘服
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.4|ピアース・ブロスナンとオメガとBMW
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.5|サンローランの赤リップの殺し屋=ファムケ・ヤンセン
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.6|ニューM=ジュディ・デンチとファムケ・ヤンセン
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.7|KENZOを着るイザベラ・スコルプコ