女王陛下のボンドガール=ダイアナ・リグ
007シリーズ史上最高のボンドガールとも言われるトレーシーを演じた女優の名をダイアナ・リグ(1938-2020)と申します。
彼女は、1960年代に英国のTVドラマ『おしゃれ(秘)探偵』のエマ・ピール役(その名は、マン・アピールのアナグラム)で、当時のスウィンギング・ロンドンを象徴するファッション・アイコンの一人になりました。そして、ただそれだけの存在にとどまらない彼女のすごい点は、一方では、本格的なシェイクスピア劇の舞台俳優として活躍していた点にあります。
映画の中で、彼女が最高の存在感を示した『地中海殺人事件』(1982)はさておき、本作において〝ジェームズ・ボンドの唯一の花嫁〟を演じた彼女は、ボンドの妻として挙式を挙げたその日のうちに、殺されてしまう悲劇のヒロインを今までのボンドガールとはまったく違う存在感で演じ上げました。
ボンドガール史上最高のボディを持つ女
174㎝のスーパーモデル顔負けの八頭身ボディに抜群のファッション・センス、更にシェイクスピア劇を演じる抜群の演技力を兼ね備えた稀有な女優ダイアナ・リグ。
彼女は、1938年に英国のサウス・ヨークシャー州ドンカスターで鉄道技師の娘として生まれました。僅か生後2ヵ月後に、父親の転勤により共にインドへ移住し、8歳まで生活しました(ダイアナはヒンディーが話せます)。
彼女は、ロンドンの王立演劇学校(1955-57)出身で、1959年から64年の間、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーにも参加した本格的なシェイクスピア俳優でした。そんな彼女が、1965年から1968年まで、TVシリーズ『おしゃれ(秘)探偵』でエマ・ピールを演じることになり、一躍英国の大スターになったのでした(しかし、ギャラはカメラマンより安かった)。そして、1969年に本作のボンドガールに選ばれたのです。
1971年には『アベラールとエロイーズ』でブロードウェイ・デビューしたダイアナは、1994年にロンドンとブロードウェイの舞台で『メディア』を演じ、トニー賞の主演女優賞を獲得しました(同年にデイムの称号を得る。)。1997年には『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』でローレンス・オリヴィエ賞の主演女優賞にノミネートされました。
ダイアナ・リグは、トレーシーのファッションが大嫌いだった
私は実際のところボンドガールの衣装が好きじゃなかったわ。デザイナーは監督のピーター・ハントの友人なんだけど、古臭い、とても退屈な衣装ばかりだったの。
ダイアナ・リグ
ナイフを喉元に突きつけられても全く怯まないボンドガール・トレーシー。ボンドに救助されて砂浜に横たわっているときの表情の動きを見ていても、今回のボンドガールは今までのボンドガールとは次元の違う女優であることを容易に伝えてくれます。
ジェームズ・ボンドが唯一愛した女とも言えるトレーシーという女性を演じるに相応しい、気品と傲慢さとか弱さが奇妙に同居しているのです。
この作品の成功の大きな要因のひとつにダイアナ・リグの存在があることは言うまでもありません。
トレーシー・ルック1
『魅せられて』ドレス
- スパンコールガウン、シーグリーンシルクとスパンコールによるチューダースタイル、トランペットスリーブ、ディープ・スイートハート・ネックライン、ボヘミアン・スタイル
- エメラルド・ブルーのトングサンダル
トレーシー・ルック2
カジノ・スタイル
- デコルテ強調のホワイト・カクテル・ドレス、ロングスカート、フロントスリット
- ガマ口の白クラッチ
作品データ
作品名:女王陛下の007 On Her Majesty’s Secret Service(1969)
監督:ピーター・ハント
衣装:マージョリー・コーネリアス
出演者:ジョージ・レーゼンビー/ダイアナ・リグ/テリー・サバラス/アンジェラ・スコーラー/カトリーヌ・シェル
- 【女王陛下の007】スタイリッシュなスウィンギング・ボンド
- 『女王陛下の007』Vol.1|二代目ジェームズ・ボンド、ジョージ・レーゼンビー
- 『女王陛下の007』Vol.2|ジョージ・レーゼンビーとルイ・アームストロング
- 『女王陛下の007』Vol.3|ジョージ・レーゼンビーのモッズ・スタイル
- 『女王陛下の007』Vol.4|ジョージ・レーゼンビーとテリー・サバラス
- 『女王陛下の007』Vol.5|素晴らしかったジョージ・レーゼンビー
- 『女王陛下の007』Vol.6|女王陛下のボンドガール、ダイアナ・リグ
- 『女王陛下の007』Vol.7|ダイアナ・リグ、ルールブルーを愛するボンドガール
- 『女王陛下の007』Vol.8|ダイアナ・リグは永遠に不滅です。
- 『女王陛下の007』Vol.9|12人のボンドガール=死の天使たち