イヴ・サンローランのブラックフェザードレス
カティ・ルック1 イヴ・サンローラン・ドレス
- 黒のフェザードレス、ロングスリーブ
- ピンクのドロップイヤリング
1971年12月から1972年2月の間に本作が撮影された間は、カトリーヌ・ドヌーヴが、マルチェロ・マストロヤンニとの子を妊娠していた時期でした(1972年5月に娘キアラ・マストロヤンニを出産する)。そのためか、彼女にはほとんど見せ場と言えるシーンが存在しません。
警部として、感情を捨てて職務に忠実に生きてきたコールマンと、リチャード・クレンナ扮するシモンは親友という設定です。そして、コールマンにとって、シモンの経営するナイトクラブでピアノを弾いたり、お酒を飲んだり、ダンサーと雑談する時が、恐らく昔の自分を取り戻せる瞬間だったのでしょう。
そして、ドヌーヴが演じるカティ。彼女とシモンには、恋人らしさよりも、兄と妹のような関係性が見られます。もしかしたら、3人は幼馴染であり、2人の男たちは戦争中レジスタンス活動をしていたのかもしれません。
しかし、メルヴィルの演出からは、そういった3人の深みは全く見えてきません。だから、ドヌーヴが着る衣装にも、魂が宿っていないのです。
ドヌーヴが最も輝いた瞬間。
ナース服姿で、「白衣の暗殺者」となったドヌーヴ。この瞬間だけが、彼女が輝いた瞬間でした。そして、観客は、この瞬間、ドヌーヴとアラン・ドロンのより濃厚な化学反応を期待したことでしょう。