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【トム フォード】ブラック ラッカー(ギヨーム・フラヴィニー)

トム・フォード
©TOM FORD
トム・フォード
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ブラック ラッカー

原名:Black Lacquer
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:ギヨーム・フラヴィニー
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/53,350円
公式ホームページ:トム・フォード

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日本の漆工芸から想起された、黒漆×縞黒檀のスモーキーな香り

©TOM FORD

トム・フォード 2024年SSキャンペーン ©TOM FORD

重苦しい闇の奥に静かに呼吸づきながら、何年も何十年も、もしかしたら何百年もこの一瞬を待っていたかのように、闇がスプレーから飛び出し、あなたの素肌に歩いてくる。

トム・フォードから2025年夏のミラノコレクションの公式フレグランスとして発表され、「トム フォード プライベート ブレンド」の新作として、2024年9月13日に日本上陸したのが「ブラック ラッカー」です。

銘木に漆を施す、日本の漆工芸からインスパイアされた、黒漆(くろうるし)×縞黒檀(しまこくたん)のスモーキーな香りは、ギヨーム・フラヴィニーにより調香されました。

縄文時代から利用されてきた〝漆〟、即身仏になろうとする者が、ミイラの状態に体を近づけるために飲んでいたという伝承がある〝漆〟。世界最高峰の伝統的な食器(工芸品)である輪島塗の〝漆〟。それは、ウルシ科ウルシ属の落葉高木のウルシから採取した樹液です。

南蛮貿易を介して世界中に輸出された漆器の中でも、特に、漆に鉄を入れると黒くなるという反応から生み出される〝黒漆〟は、深みのある、艶やかな、味わいのある黒色により最高級品として崇拝されました。

一方、インドネシアなどの熱帯雨林に育つ樹木・縞黒檀は、極めて硬質で耐久性が強いことから、古代から仏壇や弦楽器などに使用されてきた、漆黒の木目が特徴的な第一級の銘木です。

つまり「ブラック ラッカー」は、自然が生み出した鋼鉄の堅さを持つ黒=縞黒檀を、レザーとバーチを想起させるインドネシア産のマカッサル・エボニー(縞黒檀)ノートの上に、闇を燃やすスモーキーで立体的な豪華さを捉える輝くブラック ラッカーのアコード=漆黒を塗り込んでいくように、デジタル空間に飼い馴らされたあなたの素肌を、闇で燃やしてゆく香りなのです。

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昇っているのか堕ちているのか分からない不思議な感覚。

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トム・フォード 2017年SSキャンペーン ©TOM FORD

スプレーをひと吹きした瞬間、素肌の全細胞が、防御シールドを発動するような、悪臭に対する警戒心を感じさせるインクとビニールに、ラム酒を注ぎ込み煮詰めた液体にブラックペッパーを加えたような、シュワっとした暗黒の襲来からこの香りははじまります。

すぐに闇に闇を重ねるように、ひんやりとしずやかにスモーキーなオリバナムとベチバーが広がってゆきます。そして、エレミとシダーウッドのうっとりするような甘さも加わり、漆黒の中で蝋燭のように揺らめく、不思議な浮遊感に満たされてゆきます。

闇の奥に向かうように、前に進むのではなく、闇の空に近づく酔い心地に全身が包み込まれていくように、煤けた漆黒の中からラムに酔わされた(ピーチのような)アプリコットとピオニーが、信じられないほど滑らかに、抑えきれない甘やかな神秘を咲き誇らせ、艶やかに煌めき、魅惑の漆黒の世界へと誘ってくれるのです。

悪魔の儀式と神々の黄昏を同時に感じさせる、神秘的な香り。癒しのオーラで包み込むというよりも、何らかのイニシエーションを我が身に与えているような昇っているのか堕ちているのか分からない不思議な感覚に、完全にハマってしまうことでしょう。

まるであなたの中に潜む〝黒=悪魔〟を明るく魅力的に輝かせてくれる香り、つまりは、あなたの中の悪魔的な魅力を引き出してくれる、邪悪な黒を魅惑の黒に変えてくれる、謎めいた体験をもたらす神秘の水なのです。

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香水データ

香水名:ブラック ラッカー
原名:Black Lacquer
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:ギヨーム・フラヴィニー
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/53,350円
公式ホームページ:トム・フォード


トップノート:インク、ビニール、ブラック・ペッパー、ラム
ミドルノート:マカッサル・エボニーウッド、エレミ、アプリコット、ダークピオニーアコード、シダーウッドアトラスネオアブソルート™
ラストノート:オリバナム