究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
ルラボ

【ル ラボ】ベローズ26 シカゴ(フランク・フォルクル)

ルラボ
この記事は約6分で読めます。

ベローズ26 シカゴ

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Baie Rose 26 Chicago
種類:オード・パルファム
ブランド:ル ラボ
調香師:フランク・フォルクル
発表年:2010年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/1,650円、15ml/22,110円、50ml/48,730円、100ml/70,180円
公式ホームページ:ルラボ

スポンサーリンク

ルラボ最高のローズ・フレグランス

©LE LABO

シカゴ暗黒街の帝王アル・カポネ

ル ラボが出店している都市ごとの限定の香り「シティ エクスクルーシブ コレクション」。その中のひとつであるシカゴ限定の香り「ベローズ26」は、2010年に発売されました。ベローズとは、ローズ(薔薇)ではなく、フランス語でピンクペッパーを意味します。

ピンクペッパーとその他のスパイスが、グラース産のメイローズとアルデハイドにより躍動するフローラル・アルデヒドの香りは、「サンタル33」を後に生み出すフランク・フォルクルにより調香されました。

全米第三の都市シカゴ(第一はニューヨーク、第二はロサンゼルス)という都市から限定販売されているだけあり、この香りのベースに流れているのはジャズであり、アル・カポネなどのギャングが蔓延っていた1920年代の禁酒法時代の葉巻とアルコールです。

更にもうひとつ、シカゴがなぜピンクペッパーなのかという解釈をしてみると、シカゴには超高層ビルが多く、発売当時、ウィリス・タワー(旧シアーズ・タワー)は、全米一高いビルであり、1973年完成以来、世界一の高さを誇っていました(1998年まで)。

シカゴには高さ500フィート(152m)の高さの超高層ビルが116あります。これは世界でもニューヨーク、香港に次ぐ数です。そして、シカゴは英語で「風の街」(Windy City)と呼ばれ、この強い風を高所で感じる=ピンクペッパーの風のような軽やかさを連想させます。

都会的でありながら、大自然に最も近い不思議な感覚を、合成香料アルデハイドと天然のピンクペッパーの対比で表現したとも解釈できるのです。

スポンサーリンク

〝スカーフェイス〟=美容整形した美しきローズの香り



(水蒸気蒸留された甘酸っぱい)ピメントベリーが振り掛けられ、ブロードウエイミュージカルのようなシカゴが登場するのかと思いきや、すぐに(ローズ調の香りを放つ)ピンクペッパーとメイローズが相まみえ、肉体と精神は、狂騒の20年代のシカゴへと飛んでゆきます。

それは妖しくも物憂げに、モノクロの中でグレーに浮き上がるムーディーかつ透き通るようなレッドローズの香りです。

ブラックペッパーがメイローズ(グラース産メイローズ・アブソリュート)に加わり、スパイシーかつスモーキーなムーディーさを生み出しながら、クローブとアルデハイドが、シャンパンが降りかけられた真っ赤なカーネーションのようにレッドローズに、雨に濡れた新鮮さを与えてゆきます。

やがて、スパイスが生み出すタイトドレスを剥ぎ取られたレッドローズは、クリーミーなアンブロックスと涼しげなシダー、温かなムスクに包まれながら、魅惑の裸体をさらけ出してゆくのです。最も高価なブランドのドレスよりも高価な裸体の香りがします。

スカーフェイス=プラスチック・ビューティー=美容整形した美しきローズの香り。それはモノトーンの世界に永遠に焼き付けられた30年代~50年代のハリウッド女優のような圧倒的な存在感を持つ魅惑のローズの香りです。

何よりも素晴らしいのは、濃厚なローズではなく、ゴージャスでありながら、透明感溢れる軽やかさがこのローズには存在するところです。

スポンサーリンク

ピンクペッパー×アルデハイド

©Cindermint, LLC

ピンクペッパーは香水に現代的なタッチを加え、あらゆる客層に向けた香水において変幻自在の爽やかさを表現する手助けになります。さらに、いくつかのベースノートをトップノートで香るように押し上げる能力もあるのです。

マーク・バクストン

Pink Peppercornとも呼ばれるピンクペッパーは、ペッパーという名であるにも関わらずコショウ科に属さず、フランス語ではBaie Rose(ベローズ)、Poivre Rose(ポワブルローズ)と呼ばれます。

赤色の小さな実は、コショウ(ブラックペッパー)とは異なり、辛さが無く、フレッシュでハーバルかつ、ローズのようなニュアンスがあります。スパイスの中では、コールドスパイスに分類され、フレッシュな香りを生み出すために使われる香料です。

そんなピンクペッパーを世界ではじめて本格的に使用した香水は、1995年にアルベルト・モリヤスが調香した「プレジャーズ」でした。

ピンクペッパーは、近年(ここ10年くらい)かなり多くの香水に使われており(もちろんメインというわけではない)、人気の高い香料になっています。

「ベローズ26」の魅力は、アンブロックスがかなり入っているため、爽やかなウッディさを出している所にあります。そこにピンクペッパーが、ローズとの抜群の相性の良さを示し渾然一体となり、うっとりするような赤い薔薇の花びらを開花させてゆくのです。

そして、ここに1920年代の香水界のスターだったアルデハイドが、(2010年当時)これからの時代を築くであろうと予想されたピンクペッパーと結びつき、過去と未来の融合は達成されるのです。

更に言うと、この香りの面白さは、アルデハイド・ピンクペッパー・合成ムスクといった、本来メインの香料ではなく、他の香料を輝かせる名脇役を主役に配したところにあります。

ディファレント・カンパニーでジャン=クロード・エレナが調香した「ローズ ポワブレ」(2000年)、エタ リーブル ド オランジェでクリスティーヌ・ナジェルが調香した「アルシーブ 69」(2011)と比較するとよりこの香りに対する魅力は深まっていくことでしょう。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:ベローズ26 シカゴ
原名:Baie Rose 26 Chicago
種類:オード・パルファム
ブランド:ル ラボ
調香師:フランク・フォルクル
発表年:2010年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/1,650円、15ml/22,110円、50ml/48,730円、100ml/70,180円
公式ホームページ:ルラボ


シングルノート:ピメントベリー、ムスク、ヴァージニア・シダー、クローブ、ピンクペッパー、ローズ、ブラックペッパー、アルデハイド、アンブロックス