ゲット アポン/アトラプ クール
原名:Guet-Apens/Attrape Coeur
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:マチルド・ローラン
発表年:1999年、2005年
対象性別:女性
価格:120ml/30,000円
21世紀最高のゲランの香り
1999年にゲランからクリスマス限定フレグランスとして「ゲット アポン」は発売されました。「ゲット アポン」とは、フランス語で「待ち伏せ、罠」という意味です。現在カルティエの専属調香師をつとめるマチルド・ローランにより調香されました。
そして、2005年に、シャンゼリゼ通り68番地の店舗を改装し、地上3階の「メゾン・ド・ゲラン」 が完成した時に、「アトラプ クール」と名前を改め再販されました。「アトラプ クール」とはフランス語で「ハートを捕まえる」の意味です。
さらにさらに2007年には、「夜間逃避行(Vol de Nuit Evasion)」の名でオードトワレとして微調香され再販されました。この香りはつまりは三回ほぼ同じ処方で、しかし違う名前で販売された珍しい香りなのです。そして、2010年に「アトラプ クール」は廃盤になりました(正確には、2002年に「No.68」、2014年には「ロイヤル エクストレ」として再販されているが、こちらはかなり処方に手が加えられています)。
「ゲット アポン」のボトルは1935年に制作されたランタン型を復元したものでした。
マチルド・ローランこそ五代目に相応しい人でした。
1999年に生まれたこの香りをあえて〝21世紀最高のゲランの香り〟と呼ばせてください。
そんな至宝の香りは、ローズとヴァイオレットに、ベースのアイリスが蜃気楼のように絡み合うトップノートからはじまります。口紅を唇につけるときのような感覚が全身に与えられます。そして、ゲランを象徴するピーチが加わります。
アンバーとムスクがゆっくりと罠を張り巡らすように香り全体に浸透していきます。そして、その企みが気づかれないように、表向きには、ローズとチューベローズとジャスミンが馥郁に広がり、オークモスとサンダルウッドが香り全体をシプレにしていきます。
この香りの名ほど、この香りの素晴らしさを端的に示しているものはありません。フローラル、フルーティ、シプレ、クリーミー、レザー、ウッディ、パウダリー、甘さ、苦さ、ジューシーさ、お酒っぽさ、そして、言葉にならないもの。そういったものが入れ代わり立ち代り現れ、ハートを捕らえて離さないのです。
ミドルからラストにかけ、レザリーな空気と共に、ローズは高級ワインのような信じ難い香り立ちに包まれていきます。そして、この香りを身に纏うものは、120%その瞬間すべてを理解することになるのです。
- マチルド・ローランがなぜ五代目調香師になれなかったのか?
- 彼女は、1999年にすでにこの香りを超えることが出来ない21世紀のゲランの最高傑作を生み出してしまった。
- もし彼女が五代目になっていたら、ゲランは確実により栄光に包まれていたであろうことを・・・(ただしLVMHグループが彼女に自由なクリエイションを許せるなら)
現在のゲランというフレグランス帝国が置かれている現状が、この香りを通して透けて見えてきます。マチルド・ローランという天才が、ゲランの歴史のすべてを世紀末にひとつのボトルに詰め込もうとし、そして、その偉業を達成してしまった〝悲劇の香り〟なのです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「アトラプ クール」を「アンバー・バイオレット」と呼び、「この香水はアンバー(正確にはアンブル83と呼ばれるベース)をシャネルの「ボワ デ ジル」風なやりかたで、しかもゲランのスタイル特有のパウダリーな不透明さと共に表現しようという試みだ。」
「後は激しく輝かしいローズ、バイオレット、アイリスの香調が、巨大なワーリッツァオルガンのように響く。香りは豊かで素晴らしい。ブランデーの炎に包まれたクリスマスプディングが、さらにブランデーで一気に喉に流し込まれるように。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:ゲット アポン/アトラプ クール
原名:Guet-Apens/Attrape Coeur
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:マチルド・ローラン
発表年:1999年、2005年
対象性別:女性
価格:120ml/30,000円
トップノート:ピーチ、ローズ、ヴァイオレット
ミドルノート:シナモン、チューベローズ、ジャスミン、クローブ
ラストノート:バニラ、アイリス、アンバー、オークモス、サンダルウッド、ムスク