ラトリエ デ パルファム JR京都伊勢丹店
場所 京都・JR京都駅
住所 〒600-8555 京都府京都市下京区東塩小路町 2階
電話 075-606-5015
『ブルーベルの良心』と呼ばれ、関西だけでなく全国のラトリエ デ パルファム(ブルーベル・ジャパン)のチーフの間でも、最高のソムリエール(女性チーフの方)として敬愛されてきた『レジェンド』が、今年10月初めに退職されるまで、チーフをつとめてきたお店です。
この方は、取扱ブランドの商品知識だけでなく、それぞれの香りの変化をまるで物語のように魅力的に伝えて下さること(ストーリーテリング)が出来る。さらに他ブランドの香りについての知識、調香師及び香料に関する知識全てがずば抜けている方でした。
新しくチーフになられた方はじめ、彼女が育て上げた超一流の販売員の皆様が、今、偉大なる遺伝子を継ぐべく頑張っておられます。
全国「ラトリエ デ パルファム」の中でもトップオブトップだった店舗
ペンハリガン、メゾン フランシス クルジャン、ラルチザン、グタール、ボンドナンバーナイン、キリアン、フレデリック マルなどラトリエ デ パルファムが取り扱いしているフレグランスは、とても魅力的なものが多いです。
しかし、ここ数年、店舗数の増加により、販売員のフレグランス接客力の能力差が深刻化しています。何よりも派遣社員とパートの急増により、ロクなトレーニングも行われず店頭で接客業務についているという実態があります(こういった現状は、フレグランス専門店として、お客様に対する背信行為であり、専門店として自分で首を絞めているようなものです)。
かつてブルーベル=ラトリエ デ パルファムが、日本でも最高の香水帝国として君臨していたのは、徹底したロープレ、挨拶・言葉遣い・所作・美しい日本語の徹底といった厳しいトレーニングが存在していたからでした。
厳しいトレーニングが行いにくいご時勢とはいえ、トレーニングを疎かにして良いはずはありません。香水販売においてトレーニングは命なのです!
現状のブルーベルは、かつて都内の香水愛好家だけが「どうせブルーベルだから、香りの説明は期待できないでしょ」と考えられていた企業イメージとして最悪のイメージが全国的に広がりつつあります(一部の若い販売員の方々がそのイメージを払拭しようと努力されています)。
そんな状況を最前線で払拭していた約20年のキャリアを誇る女性ソムリエール様がおられました。2024年10月初めまで、ラトリエ デ パルファム JR京都伊勢丹店のチーフをつとめておられた方です。
この御方の素晴らしいところは、メゾン フランシス クルジャン、パルル モア ドゥ パルファム、グタールについての知識もパーフェクトであるだけでなく、ブルーベルで扱っているフレグランス以外の知識も驚異的であり(例:フレデリック マル、ゲラン、ルイ ヴィトン、ジョー マローン、ディプティックなどなど)、調香師を含め香料についての豊富な知識により、本来、ブルーベルに望まれる、夢のようなフレグランス共感体験を提供して頂けるところにありました。
更に、素晴らしいのはルシヤージュ京都様が京都伊勢丹でフレグランス・イベントをするようになったこともあり、相互交流を持たれるようになり、この店舗の販売員の皆様が驚異的にフレグランスの知識及び接客力を高めていったところにあります。
しかし、この方は、もうおられません。ブルーベル・ジャパンは、日本の香水文化を高みに上げたブランドだと思います。20年前には、まだ百貨店においてフレグランス売り場は、隅っこのトイレに最も近い場所にあり、トイレから出てきたお客様に「臭い」と言われるような、コスメコーナーの最下層に位置する存在でした。
そんな百貨店におけるフレグランスの立ち位置を払拭していったのは、2000年代から2010年代に、素晴らしいトレーナーに鍛えられた精鋭部隊によってでした。ひとつひとつの香りを愛する販売員が多く存在したこの時代には、ブルガリもクリードもヴァン・クリーフ&アーペルも販売していました。
今、ブルーベル・ジャパンは初心に戻る時だと思います。もはや形骸化した香水トレーニングを見直し、マネジメントとソムリエールを各店舗分けていかないと、現場チーフは、三つのことを一人で行うこの異常な環境の中で、身も心もボロボロになってしまうことでしょう。そして、適切な香水接客を店舗として提供できず、益々お客様の足は遠のいていくことになるでしょう。
超一流のトレーナーでもあった〝最高のソムリエール〟
今では形骸化しつつあるブルーベルの〝ソムリエール〟。その本来あるべき姿を示しておられたのがこのチーフ様でした。お客様に対する接客力だけでなく、部下を育てていく能力の高さも兼ね備えておられました。
現在の大丸心斎橋店の女性チーフ様や伊勢丹新宿フレグランスコーナーの女性販売員様(元銀三)など、彼女に育てられた販売員は、間違いなく一流のフレグランス・スペシャリストになっていくと言うほど、この店舗で働いておられる販売員の皆様は、何かが違うのです。以下その点について箇条書きにしてみます。
- 目の輝きが違う。挨拶が素敵!(一部ブルーベル店舗において、ここからダメな店舗があります。挨拶の出来ない人は、得てして、お客様を見て挨拶したりしなかったりする人が多いです)
- 香水好きであることが、接客した瞬間からお客様に伝わる
- 香りひとつひとつに対する知識が、香料の羅列ではなく、物語としてお伝えすることにつながっている
- 〝沈黙接客〟に甘んじることは無い。←ムエットに香りを吹きかけ、黙って隣に立ち、お客様に選択を促す接客ではない
- 取り扱いブランド以外の香りに対する探究心が強く、香りの文化に敬意を払っている
- 最後に、香りを作ってくださる調香師に対する敬意を皆様お持ち(一部『香りの匿名性』に拘るブランドの販売方法が矛盾しているのは、であるならブランド名まで隠さないとダメであり、ネット上で公開されている調香師の名を隠しているのは、ただその香りの世界観を説明するトレーニングを放棄しているだけのように思えます。香りを調香して下さった調香師=職人に対する敬意は、これからの時代、何よりも大切なことです)
この店舗の販売員の方々は、どの方々も本当にびっくりするほど一流なのです。
フレグランス販売員にとって、最も重要なことは、良い先生・同僚に恵まれ、尚且つフレグランスを愛する人々と一人でも多く知り合い、〝フレグランスについて高度に語り合う時間(アウトプット&ブラッシュアップする時間)〟をどれだけ作れるかということにあるのです。
最強の遺伝子を継ぐ、新しき女性チーフの方。
2024年、香水ブームが終焉し、本物が求められる時代となります。
コロナ期から2023年に起こった香水ブームは、価格の高騰や、ブランドの乱立により、2024年に終焉することでしょう。ちなみに香水ブームは世界的な流れなので、インバウンド景気の恩恵を受けているブランドが、最も影響を受けていくはずです。
つまり、店舗さえ出していれば、売り上げが立つという神話は崩れ去り、これまでのフレグランス販売は、〝ゲームチェンジ〟していく流れとなります。それは、以下の〝五つのゲームチェンジャー〟が生み出した香水市場の変化からもたらされています。
- SNS・ウェブサイトを通して『ひとつひとつの香り』に対する想い(作り手、愛用者それぞれの想い)を知ることが出来る
- ルシヤージュ京都様による『香水接客革命』
- リベルタ様、日本香堂グループをはじめとする『ジャパンメイド』旋風
- カラリア様をはじめとするサブスク香水による、色々な香水を生活の中で楽しむ『香水愛好の一般化』
- サロンドパルファンの大盛況と、NOSE SHOP様の多店舗展開による『香水を楽しむ若者』と『ふたたび香水を愛する人』の増加
つまり、香水を愛するお客様は、香水疲れして離れていくか、もっともっと香水を愛するようになるか、どちらかに転んでいくことになるでしょう。
更に、2024年にルイ・ヴィトンのオーダー香水(現在2500万円)をはじめとするラグジュアリー・ブランドの本格的な香水市場開拓のための、巨大な資本力をバックにした十分に香水トレーニングが行われたスペシャリストによる〝ブティックの空気感と合わせて、コト消費としての香水購入〟する〝コト・フレグランス販売〟の流れがはじまることでしょう。
だからこそ、カイエデモードをはじめとする香水関連のサイトや本によって、自習している販売員とそうでない販売員の格差がすごい勢いで生まれてきているのです。この聖地ガイドをはじめとするクチコミ情報が、素晴らしい店舗に素晴らしいお客様を集め、駄目な店舗には、閑古鳥を集めるようになってきているのです。
フレグランス販売における、香水販売員に求められる〝本物志向〟は以下の六点です。
- 香りひとつひとつを大切にする精神
- 調香師に対する正確な知識
- ヴィンテージの香りに対する知識
- 自分が働いていないブランドのフレグランスに対する知識
- 香料に偏りすぎず、でも香料を程よく知るバランス感覚
- 美しい所作と美しい日本語の徹底
2015年くらいから2020年の間にかけ香水の接客力は急激に落ち、この六点を強化せずとも、フレグランス販売員はそれなりにやっていくことが出来ました。しかし、現在はお客様に対して、この六点がフォロー出来ていない販売員は、もう相手にされない時代になってきているのです。
何よりも駄目なこと、それはSNSにより、香水を愛する皆様の知識も高まっているのですが、そこに甘えた接客をすることです(ただムエットを渡し無言で隣に立つ謎の存在)。
後は、フレグランス販売員という職業が、給与的にも社会的に認められる仕事になっていく必要があります(現状香水販売職は薄給です。これをまず各社が変えていこうと考えないと日本の香水業界に明るい未来はありません)。
だからこそ、こういった環境に順応できない、社歴だけが無駄に長い「何も知らない」販売員は、初心に立ち返り、香水愛を蘇らせないと店舗の空気を悪くする存在になってしまうのです。
一方、京都伊勢丹店のように香水愛が強い販売員が多い店舗は、それぞれの販売員が、水を得た魚のように、その店舗の香りから香りへとしなやかに泳ぐことが出来、どんなお客様も魅了するようになるのです。
ラトリエ デ パルファム JR京都伊勢丹店は、まさにお客様を魅了するフレグランス販売が出来る店舗のひとつであり、東京のあらゆる店舗と比較しても頭一つ抜け出た存在なのです。
最近の京都伊勢丹のフレグランス関連の躍進を見ていると、間違いなくこの百貨店のコスメ・フレグランス担当者たちの能力と意識の高さが反映しているように思えます(ちなみにココには、日本最大のディオールコスメ・ブティックが存在し、なぜかシャネル・ブティックはありません)。