セリーヌ オート パフューマリー コレクション
La Collection Celine Haute Parfumerie 2019年11月15日に、セリーヌがフレグランス・コレクションを発売するという発表が、8月18日にSNS上で行われました(そして、ほとんど姿を見せず、インタビューにもほとんど応じないエディ・スリマンが、ウォールストリートジャーナルにてチャンドラー・バールのインタビューを受けた)。
「La Collection Celine Haute Parfumerie」=「セリーヌ オート パフューマリー コレクション」と名づけられた11種類のフレグランスから成るこのコレクションは、エディ・スリマン就任以来初のセリーヌのフレグランスです。
私には、イヴ・サンローランとカール・ラガーフェルドという素晴らしいゴッドファーザーがいました。そして、もう一人、私の人生に大きな影響を与えたピエール・ベルジェのことも忘れてはなりません。私は常に裏方に徹し、自分の作品に集中することを好んできました。
エディ・スリマン
この男は21世紀のファッションを変えた男だった
香水とファッションの違いは、香水は長持ちするものであり、時を超えて忠実に私たちに寄り添い、私たち自身や私たちの人生と融合していくものです。それに比べれば、ファッションは忠実な友ではなく、ある瞬間すごく親しくなり、時が経てば、別れがやってくるのです。
エディ・スリマン
エディ・スリマン(1968-)という人の業績を一言に集約させると、〝メンズ・ワードローブの可能性を限りなく広げた〟ところにあります。つまりは、スーツ、レザーシューズ、タイ、ドレスシャツ等のクラシカルなファッション・アイテムを、一気にモードへと昇華させたのでした。
エディ・ルックは、ディオールオム、サンローランから一貫しており、それはネオクラシックとロック・テイスト及びヴィンテージ・ルックがトライアングルに結びつき、普遍の輝きを生み出しているのです。
そんな、エディ・スリマンが2018年1月にセリーヌのチーフデザイナーに就任したと同時に、まず最初に計画したのが、AWの準備ではなく、セリーヌ初のフレグランス・コレクションの創造でした。
エディ・スリマンという人は、過去にフレグランスの分野においても十分な実績を持つファッション・デザイナーなのです。
私が育ったのは1970年代から1980年代です。すぐにキャロンの香水をつけ、次にゲランの香水をつけました。大好きなオールド・イングランドのオーデコロンもつけるようになりました。
エディ・スリマン
エディ・スリマンのパフューム戦記
香水に対して元々私が持ち合わせていた情熱から、2004年にディオールでコロンのプライベートコレクションを作りました。当時、香水コレクションという概念は黎明期にあり、このプロジェクトに興味を持つ人はほとんどいませんでした。
ブランディングとは無縁の、フレンチ・パフュームの純粋な伝統に基づいたこのような贅沢なプロジェクトが、顧客を獲得できるとは想像し難かったのでしょう。
でも、今では、多くのラグジュアリー・ブランドがプライベートコレクションを作っています。つまり、その先駆けだったのです。
エディ・スリマン
2001年にディオールオムのクリエイティブ・ディレクターに就任したエディ・スリマンは、2003年にメンズ・フレグランスのクリエイティヴ・ディレクターを兼任することになります。そして、彼は、3本のスーパー・ディオールを発表したのでした(2007年に退任)。
2004年に発売されたこれらのフレグランスは、当初順調な売れ行きを見せたのですが、125mlという大容量と2万円近くする価格帯、さらには販売員のトレーニング不足により、瞬く間にディオールオムの実店舗においてお荷物扱いされるようになりました。
しかし、香り自体は、「ボアダルジャン」を筆頭に、どれもとても素晴らしい香りでした。さらにエディ・スリマンのフレグランスに対する実績はコレだけではありません。
それは、2005年に現シャネルの四代目専属調香師オリヴィエ・ポルジュと共に生み出したオリジナル版「ディオールオム」でした。
アイリスを男性用フレグランスのために香りの中心に持ってきた史上初めての画期的な香りです(アイリスの女性らしさとベチバーの男性らしさが巧みにブレンドされています)。そして、この香りによって、メンズ・フレグランスにフローラル旋風が巻き起こされるきっかけとなったのでした(2011年にフランソワ・ドゥマシーにより再調香され、パチョリとレザーが取り除かれた)。
こういったエディ・スリマンのパフューム戦歴を知ると、否応なしにセリーヌから出る新作コレクションについての期待値は高まるのでした。
セリーヌの過去のフレグランスについて
1945年に創業したセリーヌは、1964年にブランド初フレグランス「Vent fou」(ガルバナム・ジャスミン・ローズから成るフローラルブーケ)の後、1996年の「マジック」(調香はソフィア・グロスマンが担当した)まで新作を発売しませんでした。
1988年にLVMHグループに買収され、1997年からマイケル・コースがチーフデザイナーに就任し、セリーヌの復興が始まります(2003年まで就任)。
最終的に今までに、2006年(イヴァナ・オマジック時代)までに9つのフレグランスが発売されたのですが、人々の記憶に残るものは、何一つ生み出されませんでした。2008年から2018年のフィービー・ファイロのセリーヌ黄金期においては、香水はひとつも発売されていませんでした(ちなみに2000年から2011年にかけてセリーヌのフレグランス販売のライセンスを持っていたのが、アンテルパルファン(インターパルファム)でした)。
「セリーヌ オート パフューマリー コレクション」の概要
ディオールでもそうだったのですが、私はいつも文章で香りのアイデアにアプローチしてきました。クリエイティブなプロジェクトの輪郭をよりよく定義するために、言葉を費やすことが大切なのです。
しかし、香水について文章を書くことはとても大変な作業です。なぜなら、香水は定義上、言葉にできないものであり、本能的なものだからです。しかも、当初は、12人の調香師に今回のプロジェクトを託していたのです。そして、やり取りを重ねるうちに親和性が生まれ、3人の調香師が選ばれ、プロジェクトを継続することになったのです。
エディ・スリマン
「セリーヌ オート パフューマリー コレクション」は、2020年までに全部で11種類のフレグランスが発表される予定でした(新型コロナウィルスの蔓延により2本は延期)。特徴は以下の通りです。
- 全てユニセックス
- 3人の調香師により作られたが名前は明かされていない
- 8種類がデイタイム向き、3種類がナイトタイム向き
- 最初に9種類が発売され、2020年に残りの2種類が発売される(2022年に発売)
- すべて〝肌の上に重なる透明なヴェール〟のようなパウダリー・ノート
- 60年代と70年代のスモーキーなパリのナイトクラブと、フランスの香水からインスピレーションを受けた香りである
- アイリス、スパニッシュ・モス、シプレが大多数で使用されている
- エディ・スリマンの人生における経験や場所からインスパイアされたフレグランス
母は一番付けていた香りはゲランの「シャリマー」でしたが、今回のコレクションに与えた影響は全くありません。
パウダリーノートが、このコレクションに共通するものです。パウダリーが主体となったパフュームは、洗練されたエレガントでコケティッシュなパリジェンヌを連想させ、靄のかかった軌跡を描きます。
エディ・スリマン
ボトル・デザインもエディ自身が行ったものであり、アールデコ・モチーフのような17世紀スタイルに影響を受けています。両サイドには縁の鋭いフルーティングで装飾され、メゾンのエンブレムである「トリオンフ」が刻まれたブラックラッカーのキャップがあしらわれています。
特に、琥珀色と金色のジュースの深みをだすために、ガラスの輝きとボトルの反射に工夫が凝らされています。
そして、このフレグランスのために、セリーヌは、フレグランス専用ブティックを、パリのサントノレ通り390番地にオープンしました。
2022年に発売された残り2つの〝昼の部〟
遂に2020年11月6日コフレミニチュアセット発売!
2020年11月6日(金)から、遂に9種類(各10ml)の香りのコフレミニチュアセットが41,800円で発売されています。→さらに現在は10種類のヴァージョン(50,600円)が発売中です。