エル
原名:Elle
種類:オード・パルファム
ブランド:イヴ・サンローラン
調香師:ジャック・キャヴァリエ、オリヴィエ・クレスプ
発表年:2007年
対象性別:女性
価格:50ml/11,000円、90ml/15,500円
〝パンツスーツ〟に最も似合う香り
フィルメニッヒ社の若手調香師だったジャック・キャヴァリエの才能に目をつけ、チャンスを与え、スター調香師にしたのは、BPI(ボーテ プレステージ インターナショナル)のCEOだったシャンタル・ルースでした(1990年~2000年まで)。彼女がイッセイ・ミヤケの最初の香水「ロー ドゥ イッセイ」(1992)のためにジャック・キャヴァリエを起用し、一緒に香りを作り上げたのでした。
シャンタルは1976年から1990年までイヴ・サンローラン・パルファムのインターナショナル・プロダクト・ディレクターとして「オピウム」「パリ」などのクリエイティブ・ディレクターの役割を果たしました。
そして再び、2000年にYSLパルファムを買収したグッチ・グループのトム・フォードに請われ、新しく生まれ変わったYSLボーテの最高責任者として、2007年までイヴ・サンローランの香りの創造に再び取り掛かることになるのでした。
そんな彼女のYSL最後の白鳥の歌が「エル」=〝彼女〟という名の香りでした。
女性の持つ魅力を全て覚醒させるイメージで生み出された確信犯的美女の香りです。フローラルウッディの香りはジャック・キャヴァリエとオリヴィエ・クレスプにより調香されました。
この香りでシャンタルは、二人に、〝モダンで都会的でフェミニンでありながら、スタイリッシュでメンズライクなアクセントを加えた香り〟を考案するよう依頼しました。
スモーキング・ルックでマニッシュに決めた美女のための香り
最も魅力的に輝く〝女性らしさ〟の瞬間を、ピオニーに託したこの香りは、搾り出された女性の情念と共に弾け出すアマルフィ・レモンに、咲き誇るピオニーと摘み立てのライチのスコールが降り注ぐようにしてはじまります。フレッシュでフルーティなピオニーが素肌の上で、豊かに大胆に舞い踊るように香り立つのです。
そして、官能的に甘やかなジャスミンとローズのくちづけを受け止めるように、ピリリと甘酸っぱいピンクペッパーとピンクベリーのスパークリングワインが注ぎ込まれていくのです。やがて、渋くてクリーミーなパチョリと、メンズライクなスモーキーなベチバーとウッドの神秘的な自然の匂いが、すべてを包み込み、女性の中に秘められたあらゆる力を開花させてゆくのです。
アンブレットシード(植物性ムスク)のきらめく香りのオーラが、クールビューティなスタイル(パンツスーツ)で決めている自信に満ち溢れている女性が、ふとした瞬間に見せる笑顔のような、颯爽とした、ファミニンな空気で満たしてくれます。
どこかディオールの「ミッドナイト プワゾン」を思わせる香りです。
このキャンペーン広告には当時18才だった人気モデル、ココ・ロシャ(1988-)が出演しています。そして、その意図はミレニアム世代の客層の開拓でした。さすが!イヴ・サンローラン!スモーキング・ルックで決めたココがクールに登場します。
フューシャピンクのボディに、黄金のYSLの刻印がされたスクエアボトルもモダン・クラシックでクールです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「模倣がお世辞の最高の表現であるならば、この作品はその例証だ。他人が編み出した透明なウッディ調のフローラルを、「エル」はそのブランド力でいっきに主流へと引き上げた。」
「若年層を取り込むために、安っぽく、明るくしたのが難点だが、この作品は、「ミラク」を1、「コムデギャルソン」を1、「ナルシソロドリゲス」を2の割合で配合した感じだ。」「いちばんのオリジナル要素は、ジャック・キャヴァリエがブレッドミルクの香調を忍ばせる方法を見つけたことだ。「ルフードゥイッセイ」を良質かつ奇妙にしたものだ。不快ではないが、ややごたまぜの感がある。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:エル
原名:Elle
種類:オード・パルファム
ブランド:イヴ・サンローラン
調香師:ジャック・キャヴァリエ、オリヴィエ・クレスプ
発表年:2007年
対象性別:女性
価格:50ml/11,000円、90ml/15,500円
トップノート:アマルフィ・レモン、ピオニー、ライチ
ミドルノート:ピンクペッパー、ジャスミン、フリージア
ラストノート:パチョリ、ベチバー、アンブレット