美しさのためにメイクをするのではなく、美しさを封印するためにメイクを施す。
明らかにこの作品のデルフィーヌ・セイリグ(1932-1990)は、美しさのためにメイクをするのではなく、美しさを封印するためにメイクを施しています。それゆえに、時に老けて見えるほど、どこか悪魔的なメイクなのです。
もしかしたらこの集まりは、(『ローズマリーの赤ちゃん』のように)悪魔の集まりかもしれません。そして、Xと呼ばれる男こそが、天使なのかもしれません。
物語が進むにつれデルフィーヌ扮するAの表情には若さ=生気が蘇ってきます。彼女は最後に死に支配された世界を抜け出して、人間に戻ったということなのでしょうか?
女Aのファッション6
リトルブラックドレス
- デザイナー:ココ・シャネル
- リトルブラックシフォンドレス、スクエアネック、プリーツフリル、幅広のXサテンストラップ・バック
- 2連のアクセサリー
- パールのドロップイヤリング
- バイカラーパンプス、スティレットヒール
チェロの声を出す女=デルフィーヌ・セイリグ
物語も中盤も過ぎると、耳障りに感じていたデルフィーヌ・セイリグの声が心地よく感じてきます。
丁度、デルフィーヌと映画で6回共演しており、ずっと片想いし続けていたと自伝で書いていたマイケル・ロンズデール(1931-2020『007 ムーンレイカー』で悪役ドラックスを演じた)が、彼女の声を「チェロの響きのようだ」と形容しているのですが、まさに言い得て妙です。
女Aのファッション7
リトルブラックレースドレス
- デザイナー:ココ・シャネル
- リトルブラックレースドレス
- レースボレロストール
- パールのドロップイヤリング
- バイカラー・ハイヒールパンプス
最初に登場する貴婦人が着ていたレースドレスもとても印象的です。
女Aのファッション8
最後のリトルブラックドレス
- デザイナー:ココ・シャネル
- リトル・ブラック・ドレス
- ファーコート
- コスチュームジュエリー
- レザーグローブ
- バイカラー・ハイヒールパンプス
ココ・シャネルのデザインした衣装は、今までの8着と最後にもう1着のガウンを合わせると9着になります。そのどれもが極めてシャネルらしく、時が過ぎても色褪せるどころか、逆に、女性が華やかでエレガントだった時代を教えてくれます。
作品データ
作品名:去年マリエンバートで Last Year in Marienbad / L’Année dernière à Marienbad (1961)
監督:アラン・レネ
衣装:ココ・シャネル
出演者:デルフィーヌ・セイリグ/ジョルジュ・アルベルタッツィ/サッシャ・ピトエフ