究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
フレデリック・マル

【フレデリック マル】ビガラード コンサントレ(ジャン=クロード・エレナ)

フレデリック・マル
©FREDERIC MALLE
この記事は約6分で読めます。

ビガラード コンサントレ

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Bigarade concentree
種類:オード・トワレ
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2002年
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/8,250円、50ml/29,040円、100ml/42,460円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

スポンサーリンク

フレデリック・マル版「オー ソバージュ」

©FREDERIC MALLE

ビガラードとはビター・オレンジの別名で、ビガラード果皮オイルはシトラスオイルの中で最も色が濃い。また、最も洗練されているとも言える。ジャン=クロード・エレナはこの香りを主役に、カルダモン、ピンクペッパー、干し草(ヘイ)、シダーも取り入れ、重層的で質感のある作品に仕上げた。

チャンドラー・バール(ニューヨーク・タイムズ、2021年)

2000年にフレデリック・マルが創業した時、ジャン=クロード・エレナは、「アンジェリーク スーラ プリュイ」を調香しました。そして、マルに、毎年〝渾身の一作品〟を発表していきたいという提案をしました。かくして、翌2001年にエレナ第二弾として「コロン ビガラード」が生み出されました。

元々、フレデリック・マルにおける「オー ソバージュ」の創造を望んでいたマルにとって、折角なら、もっと持続性のあるEDTヴァージョンも必要だと考え、エレナに再調香を依頼し、生み出されたのがこの「ビガラード コンサントレ」でした。

ちなみにこの香りだけが、フレデリック・マルの中で唯一濃度違いが存在する香りです。本来、マルは信条として、「1つの香水というのは、それに合った1つの濃度で作られるべき」という考えの持ち主なのです。

そのため彼の香りはそれぞれ最適な濃度にしてあるため、すべてがオード・パルファムで統一しているわけではありません。つまりマルにとって、香水は持続力が長いほど良いというわけではないのです。

「ビガラード」とは「ビターオレンジ」のことであり、この香りについて「ビターオレンジ(の皮)一番搾り」と形容するのがとても分かりやすいと思います。収穫される寸前の熟したフレッシュなオレンジの香りの再現に徹底的に拘った香りです。

ラボラトリー・モニーク・レミーにおいて、収穫されたばかりの新鮮なビターオレンジの花以外の全てを分子蒸留しており、実から抽出したビターオレンジ精油、葉から抽出したプチグレン精油が贅沢にブレンドされています。そこにローズとアルデハイドを加え、透明感に満ちた甘さと苦味のせめぎ合いが始まります。

それはまるでオレンジのライフ・サイクルを逆回転させた香りです。最初に、熟したビターオレンジの香りからはじまり、まだ緑の目立つ果実の香りへと変化していきます。そして、最後には、静かな若葉と小枝の香りでドライダウンしていくのです。

私は自然をコピーするのではなく、自然をトランスフォームするのです。

ジャン=クロード・エレナ

最上級の品質のビターオレンジを大量に使用したこの香りは、カルダモンとピンクペッパーにより持続性を保ちます(この香りのビターオレンジの割合は55%という大容量です)。

スポンサーリンク

ルイ・ヴィトンよりも、17年先をゆく香り

©FREDERIC MALLE

より的確に「コロン ビガラード」とこの香りの違いを表現すると、前者は「もぎたてのビターオレンジを鼻の近くで嗅いでいる感じ」であり、後者は「そのもぎたてのビターオレンジを鼻の前で剝いているような感じ」、つまりは後者のほうがよりジューシーということなのです。

エレナは、この香りにおいて、ルイ・ヴィトンが2019年にやってのけたことを、なんと2002年にすでにやっていたのでした。つまりは、元祖パルファン ド コローニュを生み出していたということです。

それはコロンの持つフレッシュ感と透明感を出来るだけ持続させる、スーパー・オーデトワレを創造するという離れ業です。

実際には「永遠に美しく」というテーマでアンチエイジングを図る美魔女のように、ルイ・ヴィトンのようにオードパルファン並みの持続性を持つスーパーコロンの創造を実現するまでは行かなかったのですが、その分、自然の中の生き生きとしたビターオレンジの再現という思わぬ副産物をもたらしました。その功労は、ベースに控えし、新緑の草と干し草とシダーによるものでしょう。

チョコレートと同じくただ甘いものに人は酔いしれることはできません。それは甘い囁きと同じこと。少し苦さがあるものにこそ、真実味と安心感が生まれるのです。甘い囁きには、必ず毒があるのです。

この香りの素晴らしさは、オレンジの新鮮な感触を感じさせるだけでなく、私たちが、昔々に、オレンジと共有した懐かしい記憶を瞬時に蘇らせてくれる〝懐かしさ〟と〝アナログ=郷愁〟を呼び覚ますスイッチを押してくれる所にあります。

ちなみにチャンドラー・バールはこの香りを「男の腋の下の香り」「雨によってずぶ濡れになった女の香り」をわずかに感じることが出来るから素晴らしいと言及しています。この香りには、間違いなくクミンが密かに紛れ込まされているはずです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「私はトップノートにほんのすこしゴムの香りを感じる。とても心地よい香水、意図的にシンプルに作られている。しかしどことなくミステリーに欠ける。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

スポンサーリンク

ヒュー・グラントをイメージさせる香り


フレデリック・マル自身は、この香りから『ノッティングヒルの恋人』(1999)のヒュー・グラントを連想すると言っています。「若くて、スマートで、腹蔵がなく、とてつもなくいセックスアピールがある。でありながら、エレガントで、モダンだからこそ、控えめなこの香りがパーフェクトにマッチする」

ちなみに、この作品は、ジュリア・ロバーツが演じるハリウッド・スターと、グラントが演じる一般人男性が、オレンジジュースをきっかけにロマンスを深めていくロマンチック・コメディです。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:ビガラード コンサントレ
原名:Bigarade concentree
種類:オード・トワレ
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2002年
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/8,250円、50ml/29,040円、100ml/42,460円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


トップノート:ビター・オレンジ
ミドルノート:ローズ
ラストノート:シダー、草、干し草