ピエールを演じるヘンリー・フォンダ
ソーニャの機転と、ピエールの献身により、アナトーリー・クラーギンの誘惑から救われるナターシャ。ピエールを演じるヘンリー・フォンダ(1905-1982)は、『ミスタア・ロバーツ』(1955)、『十二人の怒れる男』(1957)と、この時代最も勢いに乗っていた俳優の一人であり、当時50歳でありながら20代のピエールを無理なく演じていました。
このピエール役は、当初、オードリーとメル・ファーラーの希望により『ローマの休日』のグレゴリー・ペックが予定されていたのですが、スケジュールが合わず、次に二人に希望されたピーター・ユスティノフは、プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスによって無名すぎると退けられたのでした。
一方、マーロン・ブランドには、オードリーとの共演を拒否されました。そして、ヘンリー・フォンダに役柄がめぐってきたのでした。
この時、ヘンリーは、10代の娘ジェーン・フォンダとピーター・フォンダをローマに連れ、撮影に臨みました(そして、再婚相手のイタリア女性とも出会いました)。当時、世界でもっとも〝享楽の都〟と言われたローマでの滞在の経験が、二人の将来の映画人生に多大なる影響を与えたのでした(ピーターは15歳にしてローマでアメリカ人の若い空軍士官夫婦により童貞を喪失しました)。
ヘンリーはピエール役を原作どおり醜い男として演じようとしていました。しかし、デ・ラウレンティスは、ピエールにロマンティックな風貌を望んでいました。そのためヘンリーが役作りのためにかけていた銀縁の眼鏡をめぐり、二人は衝突し、あるシーンでは付け、あるシーンでは眼鏡なしといった奇妙な現象が生まれることになりました。
撮影後、ヘンリーは、この作品に出演した事を後悔し、決して本作の話題を口に出すことはありませんでした。
ナターシャのファッション13
『麗しのサブリナ』のようなジャンパースカート
- グレーのジャンパースカート
- 白の透かしストライプブラウス、パフスリーブ、黒のくるみボタン
ナターシャのファッション14
ペタルカラー
- チャコールグレーのノーカラーロングワンピース、フロントがダブル
- 白のペタルカラーのブラウス
オードリーらしい素敵なヘッドスカーフ
オードリーの頭を覆う、サンドベージュ色のヘッドスカーフの花柄がとても美しいです。横に流した前髪の出し方が絶妙です。
ナターシャのファッション15
オールミントルック(ボンネット帽子の時代)
- オールミントのデイドレス、広いラペルにホワイトレース、ハイウエスト
- 同色のボンネット
- 白のオーガンジーグローブ
- シルバーのローヒールパンプス
ナターシャのファッション16
避難民
- フリンジの付いたベージュ色の大判ストールとピンクのナイトガウン
作品データ
作品名:戦争と平和 War and Peace (1956)
監督:キング・ヴィダー
衣装:マリア・デ・マッテイス
出演者:オードリー・ヘプバーン/アニタ・エクバーグ/ヘンリー・フォンダ/メル・ファーラー/ヴィットリオ・ガスマン/ハーバート・ロム/ジェレミー・ブレット