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【エルメス】屋根の上の庭(ジャン=クロード・エレナ)

エルメス
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屋根の上の庭

原名:Un Jardin Sur Le Toit
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2011年
対象性別:ユニセックス
価格:30ml/9,460円、50ml/14,520円、100ml/20,350円
公式ホームページ:エルメス

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パリ・エルメス本社の『シークレット・ガーデン』の香り

©Hermès

パリ・エルメス本社の屋上に存在する『シークレット・ガーデン』。©Hermès

ある日、目と鼻の先で、はるか彼方にあると思っていたものを見つけたのです。そして、この香りを本当にパリらしくするために、水ではなく、光を散りばめたのです。

ジャン=クロード・エレナ(以下すべての引用は彼の言葉です)

エルメスの専属調香師ジャン=クロード・エレナは、2011年にエルメスの『庭園』シリーズ第四弾として「屋根の上の庭」を調香しました。この香りは、同年の年間テーマの〝現代(いま)に生きるアルチザン〟(La main de l’artisan)に合わせて生み出された香りでした。

元々エレナは、『庭園』シリーズは三部作で完結したものと考えていました。しかし、アルチザンが生み出した庭園の香りというテーマを考える中で、最も重要な庭があることを思い出したのでした。

パリのフォーブル・サントノーレ通り24番地に建つメゾン・エルメスの屋上にある〝空中庭園〟こそが、このテーマに相応しいとエレナは考えました。そこは、ピンクとホワイト・ローズ、セージ、ローズマリー、ハイビスカス、マグノリア、百合、そしてりんごの木が生育している人工庭園なのです。

もともとはナチスドイツのパリ占領中に食糧不足に陥ったため、エルメス家によって始められた菜園でした。そして、解放後、エルメスの従業員のプライベート・ガーデンとしての役割を与えられたのでした。

ちなみに2011年はエルメスにとって、〝カシミヤを着た狼〟ベルナール・アルノーとの攻防戦の一年でもありました。LVMHが2010年12月に突如エルメスの株式の20%を買収したことを公表したのでした。そして、追加のエルメス株取得を阻止するためエルメスの創業者一族(エルメス株を70%以上を保有)が2011年1月6日に会議を開催し、正式に持ち株会社を設立し、狼を撃退したのでした。

私もアルチザンでありたいと思っています。私が最も馬鹿げていると考えていることは、天然香料の品質を羅列し、ひけらかすことです。

そんな事よりも重要なのは、アルチザンに与えられる自由な時間なのです。何よりも失敗したり、反省したりする時間が必要なのです。そして、エルメスにはそれが許されています。私から言わせれば、調香師にとってこれほどの贅沢はありません。

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赤りんごとマグノリアの奇跡のマリアージュ

この庭園は、ヤスミンという女性の庭師によって管理されている庭園です。©Hermès

従業員以外には決して公開されないシークレット・ガーデンです。©Hermès

帽子を宙に放り投げるエレナ。©Hermès

私が最初に作った香りは160種類以上の材料で構成されていました。しかし、今では、とても少ない材料で作っています。ただし、ひとつだけ注意しているのは、その分、官能性が損なわれてしまう危険性があるということです。だからこそ、バランス感覚が重要だと考えています。

私は「良い香水を作る方法は知っているが、成功する方法は知らない」。ジャン=ルイ・デュマにはいつも「エルメスの精神を香りで伝えてほしい」と言われています。エルメスと私の考え方はよく似ています。つまり、お金儲けはしたいのですが、儲け方にはいろいろあるという考えなのです。金のなる木を思う存分枯れるまで使いたいとは思わないのです。

太陽の黄金の輝きを、パリの空が人々に伝えてくれることはなかなかありません。そのためにエルメスの空中庭園には、黄金のりんごと洋ナシが栽培されているのです。草木が新緑あでやかに露をしたたらせ、甘美なる果実の香りを運ぶようにしてこの香りははじまります。

酸味豊かな赤りんごと洋ナシが、グレープフルーツにより発泡するように弾けてゆきます。そこに注ぎ込まれる草とハーブ(ローズマリー、バジル)が、すぐにクリーミーなマグノリアにより円やかに広がってゆきます。

赤りんごとマグノリアの絶妙なマリアージュが、まだ木になっている自然の赤りんごの自然な甘やかさを、涼しげな風に乗せて運んできてくれるのです。

何よりも魅惑的なのは、湿った土とオークモスにより、どこまでも緑豊かな草原と果樹園を見事にエルメスの屋上に作りあげ、光に包まれたピーチのような透明感に満ちたローズで祝福しているところです。

高級ブランドの本店が建ち並ぶ、パリモードの中心地に人工的に造られた空中庭園が生み出す〝究極の自然〟を全身で感じ取る至純至高の精髄。それはまるで乗馬する習慣のない人たちに対して、レザーの優雅さを感じてもらうためにサック・ア・クロアを生み出したように、エルメスのシークレット・ガーデンを香水の中に凝縮しているのです。

前三作のように〝水〟ではなく〝光〟で表現したパリの庭の香りです。どこか「ケリー カレーシュ」と「ナイルの庭」を連想させる香りとも言えます。

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香水データ

香水名:屋根の上の庭
原名:Un Jardin Sur Le Toit
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2011年
対象性別:ユニセックス
価格:30ml/9,460円、50ml/14,520円、100ml/20,350円
公式ホームページ:エルメス


シングルノート:グラス、赤りんご、ローズ、洋ナシ、ローズマリー、マグノリア