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セリーヌ

【セリーヌ】ズーズー(エディ・スリマン)

セリーヌ
©Celine
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ズーズー

原名:Zouzou
種類:オード・パルファム
ブランド:セリーヌ
調香師:不明
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/39,600円、200ml/60,500円
公式ホームページ:セリーヌ

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ベリーショートの美学とセリーヌの美学をひとつにした香り

©Celine

この香りのミューズは、フランソワーズ・サガン原作の映画『悲しみよこんにちは』(1957)でセシルカットを流行させたジーン・セバーグと、

『勝手にしやがれ』(1960)のジーン・セバーグの二人です。

永遠の若さという理想をとらえた、ユートピア的な青春の香りを作りたかったのです。フランスの若き作家フランソワーズ・サガンの無謀さ、ジャン=リュック・ゴダールが撮影したジャン・セバーグ(『勝手にしやがれ』)の純真な少年らしさ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの素晴らしいヒロインたち、そして20年以上前に私が撮影した若い女性たち。

私はセリーヌのための新しい香水を「ズーズー」と名付けました。これは、20世紀に登場したショートヘアの若い女性を表す、愛情のこもった子供っぽい愛称です。

エディ・スリマン

2018年1月にセリーヌのチーフデザイナーに就任したエディ・スリマンの指揮下、2019年11月15日から2022年10月7日にかけて、新生セリーヌ初のフレグランス・コレクションとなる「セリーヌ オート パフューマリー コレクション」11種の香りが発売されました。

そして、2024年6月20日に12番目の香りとして「ズーズー」が発売されました(2019年の時点で完成していたこの香りは、当初、パンデミックが起こらず予定通りに11作品が発売された一年後にあたる2021年発売予定とされていました)。

LVMHグループの総裁ベルナール・アルノーは、エディ・スリマンによる新生セリーヌの売上高を、5年以内に、着任前の10億ユーロ(約1350億円)から二倍に倍増させるという計画を発表し、2023年に見事その野望は達成されました。

大きな勝利を果たし、凱旋門に戻り、祝杯をあげるように発表されたこの香りの〝Zouzou〟とは、60年代から70年代にかけてフランスのファッション・モデル兼歌手兼女優として活躍したズーズー(1943-)からインスパイアされた香りです。

つまり、1つのフレグランスで、彼女をはじめとする1960年代の映画のヒロインや、文学の登場人物に描かれた妖精のような魅力を持つ生き生きとした女性たちを呼び起こし、21世紀に転生させたような現在の愛くるしいベリーショートの女性たちに捧げた香りです。

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60年代のスタイル・アイコン『ズーズー』

1961年のパリ・マッチ誌に掲載された、ナイトクラブでツイスト革命を起こす若者たちという記事において、ズーズーはミューズとして取り上げられました。真ん中の女性。

真ん中後方にいる女性が、ズーズー。

パリのディオールのブティック前にて、ズーズーとジャック・デュトロン。

ズーズーは1943年に生まれました。14歳半でバカロレアに合格する秀才少女だった彼女は、サンジェルマン・デ・プレ界隈で遊ぶようになり、16歳の時に、最初の恋人になるジャン=ポール・グード(1940-、シャネルのフレグランス キャンペーン等で有名なアート・ディレクター)を、60年代の申し子とも言える平らな胸と、アンドロジニーなファッションセンスで魅了しました。

やがて、ブランドを創立したばかりのイヴ・サンローランに見出され、キャリアが上昇しようとした矢先に、その自由奔放さにより、イヴを失望させました。そしてローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズと2年間(64年頃から66年頃まで)付き合い、スウィンギング・ロンドンのミューズとなりました。

ジャック・ニコルソン、ジョージ・ハリスンなど60年代の反逆児たちを虜にし、1972年にはエリック・ロメール監督の『愛の昼下がり』の主役に抜擢されます。しかし、ヘロインでキャリアは沈滞し、80年代には麻薬取引で二度刑務所に入ることになります。

21世紀に入り、ズーズーは、ヘロイン中毒を克服し、彼女は不死鳥のように蘇り、そのキャリアは復活し、80歳になっても積極的に活動しています。

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女性を妖精にするベリーショート

ピクシーカットのミア・ファロー

ミア・ファローのヘアカットをするヴィダル・サスーン。

ミア・ファローの表情が、じっと我慢してるみたいでとてもキュート。

ベリーショートが60年代に再び流行することになったのは、マリー・クヮントナンシー・クワンの髪を切り、スタイリッシュボブとして1963年に話題を呼んだ一人の男性によってでした。この男性の名をヴィダル・サスーン(1928-2012)と申します。

『ローズマリーの赤ちゃん』の撮影が始まる一週間前の1967年8月14日に、ロンドンから招聘されたヴィダルは、パラマウント・スタジオのボクシング・リングのセット上にて、ミア・ファローの髪をカットしました。それは、友人のロマン・ポランスキーによる要望でした。

まだ髪が洗い濡れた状態で、いくつかに区画分けし、1cmの厚みでカッティングしていく画期的な方法により、60年代にヘア・スタイリストという職業を創り上げたヴィダルのために、このキャンペーン・カットで支払われたギャランティは5000ドルでした。

このミア・ファローのベリーショートは、ピクシーカットと呼ばれました。それは女性を妖精にするヘアスタイルが発見された瞬間でした。このヘアスタイルにひとつだけ大きな問題があるとするなら、小まめにメンテナンスしなければならないという点です。

この香りの精神は、実はこの部分にあるように思えます。真に魅力的なものは、伝統的なものを大切にしながら、常に新しい養分を与えていかなければならない。セリーヌ・ファッションに対するメンテナンスの役割を果たすのが、この香りなのです。

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あらゆる心の状態に心地よく染み込んでくれるバニラ

ピクシーカットのツイッギー

『転校生』(1982)で少年の心と入れ替わる少女を演じる小林聡美様。

©Celine

60年代のパリジェンヌへの賛歌〟として生み出されたこの香りは、クールに焼き尽くすように燃えるバニラと、弾けるベルガモット、内から秘めやかに放射するような五彩に煌めくベンゾイン、トンカビーン、パチョリ、ラブダナム、ムスクの光の、予測不可能な結びつき合いが、ゆったりと絶え間なく素肌の上で、最初から最後まで、繰り返されてゆきます。

軽やかに(キャラメルポップコーンやミルクチョコレートのように)艶めく甘さを、素肌の上にクリーミーに引き伸ばしていくように、香りの背景に湛えながら、少年のような魅力的な少女のように ――― それは『勝手にしやがれ』のジーン・セバーグのようでもあり、『転校生』の小林聡美のようでもある ――― 心を高揚させるスパイシーなトンカビーンと、甘いパウダリーなアンバリーバニラの輝きを解き放ってゆきます。

あらゆる心の状態に心地よく染み込んでくれるバニラ〟つまり、「ズーズー」の凄いところは、ゲランの最近のオリエンタルバニラの心地良さと同じ方向性にあり、〝身に纏う香水〟ではなく、〝内から外に出るオーラを生み出す香水〟または〝素肌から心地よく匂い立つ香水〟を作り出したところにあります。

でありながら、囁くような可愛らしさ=ミステリアスなところが、この香りが、破竹の勢いで世界的なビューティー帝国を築かんとするセリーヌの香りである所以です。

ブラック タイ」のスタイリッシュなバニラが、クロスジェンダーなバニラ=〝コト消費〟するバニラとなる香り。それはまるでヴィダル・サスーンにピクシーカットにしてもらったミア・ファローとセシール・カットのジーン・セバーグ、マリー・クヮントのミニを履くベリーショートのツイッギー、ツイスト革命中のズーズーなど、フランスとイタリアとアメリカの60年代の青春をスウィンギングさせ、最後に『転校生』のショートカットの二人の少年少女が寺の階段を転げ落ち、性別が入れ替っていくようです。

広告キャンペーン・モデルとして、ユアン・マクレガーの娘であり、英国系アメリカ人女優兼ミュージシャンのエスター・ローズ・マクレガーが起用されています。キャンペーン・フィルムは、キングスメンの「ルイ・ルイ」がバックに流れています。撮影はエディ・スリマン自身が担当しました。

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香水データ

香水名:ズーズー
原名:Zouzou
種類:オード・パルファム
ブランド:セリーヌ
調香師:不明
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/39,600円、200ml/60,500円
公式ホームページ:セリーヌ


シングルノート:バニラ、トンカビーン、ベンゾイン、ラブダナム、ムスク、パチョリ