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『西湖』紫野和久傳【京都の和菓子図鑑】4

京都和菓子図鑑
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商品名:西湖
評価:★★★★★(+★)
金額:1個 324円
原材料:蓮粉、和三盆糖、和三宝糖蜜、甘味料(トレハロース)
賞味期限:4日
特記:これぞ世界に誇れる、もうひとつのSEIKOブランド!
公式ホームページ:紫野和久傳


明治3年(1870年)に、丹後峰山町で湧屋傳右衛門(桑村傳右衛門)が始めた旅館が、和久傳のはじまりです。その屋号の由来は、「湧」に平和の「和」と、傳右衛門の妻だった「久」の名前をあてたものでした。

江戸時代から丹後ちりめんで栄えた丹後地方において、和久傳は京都などから訪れる商人たちの宿や、会合などの場として、峰山が誇る老舗旅館として百年以上も栄えました。やがて、化学繊維が普及し、絹織物=ちりめん産業の陰りに伴い、昭和43年(1968年)に、町中の旅館から山の麓へと移転し、敷地3千坪に客室七部屋という贅沢なカニ料理を売りにした旅館を建てました。

しかし、ちりめん産業の衰退の中、旅館の未来に何一つ明るい兆しが見えない中、女将・桑村綾の指揮の下、銀行から多大な借金をして、大博打とも言える京都市内進出に打って出ます。

昭和57年(1982年)に、京都市内の高台寺近く、現在の「高台寺和久傳」に移転し、現在の料亭として新たにスタートしたのでした。峰山の名物だった囲炉裏の蟹焼き(料亭らしからぬ囲炉裏を切った部屋を作り、そこで「蟹」を焼くというスタイルを、ひとつの名物にした)など、季節の素材の味を生かした味わいで細工を凝らし京懐石とは一線を画する内容で、現代では、高台寺和久傳と室町和久傳、京都和久傳と三つの料亭を要するに至っています。

2003年に、料亭の味を「おもたせ」としてお持ち帰り出来る店「紫野和久傳(むらさきのわくでん)」をスタートして、今に至ります。

和菓子の魅力の一つに、ミニマルでありながら凝った包装があります。

笹で包まれた独特な形状のれんこん菓子「西湖」。

中身を取り出すと、笹の香りがほんのりとします。

着物のような帯を解くと、中から羊羹のような三角形の物体が現れます。

箸では掬えず、唇を笹に吸い付かせるように食べる。

和久傳を代表する和菓子の一つ「西湖」。れんこんの根から採れる蓮粉に、和三盆(砂糖としては最も高価であり、黒砂糖をまろやかにしたような独特の風味を持つ)と、和三宝糖蜜を加えて練り上げた後、蒸しあげて作られたものです。その独特の食感を持つ、とろりとした柔らかい羊羹のようなものが、二枚の笹で包み込まれています。

笹の葉で包まれているのは、防腐作用以上に、ちまきのように巻くと中身がこわばるので、そうならないように巻き方を工夫した末に考案されたことでした。微妙な手加減が必要なため、全て手作業です。

名前の由来は、蓮の花が浄土のごとく咲き誇る美しい湖=西湖(中国浙江省杭州市)から取られました。

れんこん菓子という打ち出し方により、多くのスイーツ好きを寄せつけないイメージに包まれている西湖。ひとたびそれを口に入れてしまうと、他にはない独特かつ優しい喉ごしに「れんこんじゃないよね?」という問いかけが生まれてきます。

箸で救うことが出来ないので、笹に口づけするように食べるのが、正しい食べ方。京都の自然に接吻しながら、味わう和菓子、それが西湖です。