市川雷蔵が最も会いたかった女優。
日本の女優の中で好きなタイプの女優は、中年の方では、山田五十鈴、田中絹代さん、若手の方では、岡田茉莉子、若尾文子、有馬稲子さんです。そして、お話してみたい俳優は、ロッサナ・ポデスタさんです。
市川雷蔵 1961年
1961年に当時の日本映画界の至宝・市川雷蔵(1931-1969)が〝お話してみたい俳優〟(女優ではなく、俳優である点がポイントです)として挙げた名前は、意外すぎる人物でした。
この当時、ロッサナ・ポデスタは、1956年に公開された『トロイのヘレン』(この作品でブリジット・バルドーがデビュー)で話題になった程度の女優でした。まだ『黄金の七人』も作られていない頃の彼女と雷蔵は何を話したかったのでしょうか?永遠の謎です。
60年代のショートボブ・アイコン
それまで歴史劇においてお姫様女優として名を残す程度だったロッサナが、30代を迎え、夫であり監督のマルコ・ヴィカリオの協力の下、本作によって華麗なる転進を果たしました。
この作品により、彼女は、ルイーズ・ブルックスのようなショートボブと共に、60年代のスタイル・アイコンの一人に駆け上がったのです。
1920年代にサイレント映画で活躍した女優ルイーズ・ブルックスのトレード・マークだったショートボブ。そのヘアスタイルをウィッグをかぶり変装の一つとして引用するロッサナ=ジョルジア。このヘアスタイルをオープニング・ヘアに選んだ瞬間、ジョルジアの勝利は決まったも同然でした。
そして、この決断の瞬間。世界の悪女像はアップデートされ、日本では峰不二子とドロンジョ様、東映特撮の悪のヒロイン達が生み出されることになったのです。
〝おもいっきり悪趣味〟なことが出来た幸福なる時代
1960年代に、小学生男子に最も分かりやすい「お金持ちのおねえさん」の絵を描かせたかのようなファッションで登場するジョルジア。まさに悪趣味ここに極まれりのスタイルで登場します。決して誤解してはいけないのは、これは60年代においてもかなり悪趣味なスタイルだったということです。
それは60年代という10年間が、〝おもいっきり悪趣味〟なスタイルへの暴走が許された10年間だったことを教えてくれます。なぜならば、当時は、インターネットもなく、ファッションに関する情報も少ない時代だったからこそ、枠に捉われない自由な表現が生まれ、それが思いもよらぬパワーを生み出したのでした。
そして、60年代の数々の悪趣味が、21世紀の私達に対して、新たなる創造のための多くのヒントを与えてくれるのです。
そんな世界観が、アルマンド・トロヴァヨーリの音楽と共にタイムレスな輝きを生み出しています。
ジョルジア・スタイル1
バタフライ眼鏡スタイル
- ダイヤモンドを散りばめたバタフライ眼鏡
- ミンクのフード付きゼブラ柄コート
- 黒のロングレザーグローブ
- 黒のクラッチ
- 黒のショートブーツ
ルイーズ・ブルックス・スタイル
男にアドレナリンを与える女になるならどっちになりたいですか?
1.全裸の上にミンクコートを着る女か?
2.全裸を売りにする女か?
〝見てしまったら、はい!ソレまでよ〟それが男と女の関係なのかもしれません。だからこそ、見えるまでが勝負。少しでも見たいという男の気持ちを揺さぶれる女でありたい。
男の悲しい性(さが)とは、その想像力です。男は、パーフェクト・ボディを前にして、性欲を掻き立てられるよりも、自信を失いがちです。だからこそ、全てが出来すぎていないジョルジアのような肉体は、男にとって、手が届きそうな野望を抱かさせてくれるのです。
ジョルジア・スタイル2
ホワイト・ファーコート
- ホワイトミンクコート、トップのボタン以外は比翼仕立て
- 黒のロングレザーグローブ
- 白のハンドバッグ
- ブラック・レースの全身タイツ
- 黒のショートブーツ
作品データ
作品名:黄金の七人 Sette uomini d’oro (1965)
監督:マルコ・ヴィカリオ
衣装:ガイア・ロマニーニ
出演者:ロッサナ・ポデスタ/フィリップ・ルロワ