パリ エディンバラ
原名:Paris – Edimbourg
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:オリヴィエ・ポルジュ
発表年:2021年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/14,520円、125ml/20,900円
公式ホームページ:シャネル
シャネルにとってエディンバラは聖地です。
「パリ エディンバラ」は、スコットランドのハイランド地方の香りを反映し、サイプレス、ジュニパーベリー、ラベンダー、ベチバー、シダーなどのノートが、不思議な湿度とグリーンの美しさを醸し出している。
チャンドラー・バール(ニューヨーク・タイムズ、2021年)
2018年5月に、シャネルから「レ ゾー ドゥ シャネル(シャネルの水)」シリーズが三作品発売されました。そして、2019年6月1日に数量限定で、第四弾「パリ リヴィエラ」が発売され、2021年6月4日からレギュラー商品として発売されることになりました。
同じくこの日に、第五弾「パリ エディンバラ」も発売されました。この香りは、元々2020年に完成しており、同年発売される予定でしたが、新型コロナウイルスのパンデミックにより無期延期となっていました。
今回の作品の舞台となるエディンバラは、シャネルにとってとても重要な聖地です。それはツイード、ニット、カーディガンといったシャネルのメンズライクなスタイルのエッセンスは、すべてかの地においてココ・シャネルが吸収したものだったからです。
1924年にココは、モンテカルロで、当時世界第三位の大富豪ウェストミンスター公爵ヒュー・グローブナー(時の英国王ジョージ5世の従兄弟)と出会い、1930年まで交際していました。この間、彼女はイギリスの上流社会と競馬の楽しみを知りました。
一方、彼女は社交界から離れ、澄みわたる湖や岩だらけの森に囲まれた緑豊かなカントリーサイド、スコットランドのハイランド地方に籠って過ごす時間も愛しました。
サーモン釣りに出かけたり、若き日のウィンストン・チャーチルやヴェラ・ベイト・ロンバルディとトランプをしたり、ハイランド地方にある公爵の3つの土地を行き来して過ごしました。ハイランド地方にある公爵の3つの邸宅、スタック・ロッジ(素朴なカントリーハウス)、ロッホモア(ヴィクトリア朝の荘園)、ローズホール邸で自由に過ごす権利を与えられていたのでした。
そして、当時の英国の貴族たちがレジャーを楽しむ際に着用していたツイードジャケット、フェアアイルセーター、タータンチェック、ウールのベレー帽などがインスピレーションの源となり、ココによって再解釈され、シャネルスタイルの象徴になったのでした。
ラガーフェルドによるエディンバラ・コレクション
2012年12月4日に、カール・ラガーフェルド率いるシャネルは、小雪の舞う中、スコットランドのリンリスゴー宮殿で2012-13年メティダール(プレフォール)・コレクション「パリ – エディンバラ」を発表しました。ツイード、ニット、カーディガンといったシャネルのアイコンの発祥地であるエディンバラを称えるコレクションでした。
リンリスゴー宮殿は、15世紀に建造され、スコットランドの女王メアリー・ステュアートが1542年に生まれた場所として知られています。しかし、1746年1月にハノーヴァー朝が建物を放火して以降は廃墟になっています。
恍惚感すら与えてくれる至上のベチバー。
ウッディでスモーキーなベチバーがこの香りの中心にはあります。そして、ミドルノートとトップノートには、ラベンダーとアロマティックノート、ジュニパーベリーがたくさん入っています。
エディンバラよりも、スコットランドのカントリーサイドをイメージしています。また、イングリッシュラベンダーの記憶もありました。
オリヴィエ・ポルジュ
神秘的なグリーンのパワーを感じさせる、ウッディ・アロマテックの香りは、シャネルの四代目専属調香師オリヴィエ・ポルジュにより調香されました。オリヴィエ自身がエディンバラで感じた氷のようなジュニパーベリーとスモーキーピート(泥炭) の空気を捉えた香りです。
この香りは、とんでもなく優れた香りです。一吹きすると一瞬にして、スコットランドのハイランド地方に瞬間移動するほどの清涼感に包まれます。それぞれの香料について探求する気持ちが失せるほど見事にブレンドされています。
ベチバーが絶えずボトルの中で刈り取られ、レモンとベルガモットの雫が振りかけられるように、この香りは最初から最後まで輝くように、爽やかなベチバーが肌と鼻腔に届いてきます。隠し味としてユーカリの芳香がほのかに感じられます。
ミンティなジュニパーベリーとサイプレスのアロマティックな煌きは、タンカレーナンバーテンをベチバーに注ぎ込んだような奥行きと甘さを与えてくれます。そこにシダーが現れ、クローブが効いたソーピィーな感触も感じさせてくれるのです。
ドライダウンに向かうにつれ香りは、ラベンダーバニラのアンダートーンとピートベチバーのスモーキーさを掻き混ぜながらも、ムスクとほのかなトンカビーンにより、ペトリコールの温かな余韻で包み込んでくれます。
この香りは、男性が着ていたツイードジャケットを女性のファッション・アイテムに昇華させたように、男性的な香料を女性も使用できるジェンダーレスの香りへと昇華させた五つの香りの中で、最もアーシィーかつウッディなフレッシュな香りです。
人はいろいろな音楽を同時に聞くことはできぬ、美しいものの真の理解はただある中心点に注意を集中することによってのみできるのであるから。
『茶の本』岡倉天心
この香りの素晴らしさは、まさに、ベチバーに注意を集中することによって、スコットランドの自然の美しさを無意識のうちに体感できるところにあるのではないでしょうか。ベチバーを透かして見えるジュニパーベリーとラベンダー、シダーの香りの美しさに恍惚感すら覚えます。
香水データ
香水名:パリ エディンバラ
原名:Paris – Edimbourg
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:オリヴィエ・ポルジュ
発表年:2021年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/14,520円、125ml/20,900円
公式ホームページ:シャネル
トップノート:ジュニパーベリー、サイプレス
ミドルノート:シダー、ベチバー、ラベンダー
ラストノート:ムスク、バニラ