ジョン・カサヴェテスVSロマン・ポランスキー
ローズマリー・ルック9 小花柄ワンピース
- 聖母のようなローマンカラー、ダークブルーの小花柄のロングスリーブミニドレス、トラペーズライン、白のカフス
- 黒のパテントレザーのメリージェーンシューズ
- ベージュのガーターストッキング
カスタベット夫婦を訪問する時のローズマリーのスタイルは文句なしにキュートです。一方、夫ガイは、ネイビー・ブルーの3つボタンのフランネル・ウール・ブレザーのアイビールックです。この作品のジョン・カサヴェテスは、実にリラックスした、いい雰囲気を醸し出しています。当初、ロマンは、ガイ役にロバート・レッドフォードを希望していました。しかし、叶わず、プロデューサーのロバート・エヴァンスから提案された、ジャック・ニコルソンの起用に対しては反対しました(理由はいかにも悪魔に魂を売っていそうで意外性がないから)。
長回しで撮影する主義であるロマン・ポランスキー監督が、30~40テイクを1シーンに費やすことに対して、歴史的傑作『フェイシズ』(1968)を完成させたばかりのカサヴェテスは、計算されたものより、「生」の要素や、即興のやりとりを重んじる演出スタイルなので、役者が一言一句を脚本どおりに話すことに固執するロマンとは事あるごとに敵対しました。
ある時、ロマンは、男性が一人の女性に夢中でいる期間と言うものは自然の摂理からいって短いものだ、また脇見をせず一人の特定の相手とつきあうのは不可能だと言いました。それに対して、カサヴェテスは、激しく反論しました。私は妻のジーナ・ローランズを昔も今も変わらず愛している、ロマンは女のことも恋愛のことも何も分かっていないのだ、と。このときばかりはロマンも返す言葉がありませんでした。ここに二つの発言を引用しましょう。
ジーナ・ローランズは私にとって奇跡だ。彼女にはすばらしいユーモアのセンスがある。しかも美しい。私を引きつけてやまない女性だ。それに信じられないほど優しくて親切で、確固とした人生観を持っている。加えてすばらしい女優でもある。ジーナは微妙な演じ分けもできるし、演技に非常に神経が行き届いている。奇跡だよ。彼女は、性格もまっすぐだ。自分の信じていることを決して疑わないんだ。
ジョン・カサヴェテス
彼ほど真剣に女性が抱える問題を描こうとした監督はいなかったんじゃないかしら。私が言うのも変だけど、彼は真のフェミニストだったのよ。
ジーナ・ローランズ
カサヴェテス夫婦は、1954年に結婚し、1989年にカサヴェテスが亡くなるまで共にいました。ジーナ・ローランズは、彼の死後、二度と自分が出演した作品を見ていないと言います。「もっともお気に入りの作品は、ジョンとの作品よ。でもそれを見ることはとてもつらいの」。間違いなく、『ローズマリーの赤ちゃん』は、2人の天才監督のプライドのぶつかり合いによって生み出された化学反応がプラスに働いた稀有な例なのです。
デザイナーの見事なバランス感覚
ローズマリー・ルック10 タータンチェックスカート
- ネイビーニット、タートルネック
- 赤のタータンチェックのウールのキルトスカート
この作品の見事なところは、マリー・クヮント的な60年代前半のユースクエイクの要素を押さえながらも(舞台設定は1965年~66年)、60年代後半的なマキシ丈のボヘミアンの要素も押さえ、バランスを取っているところにあります。本作の衣装デザインを担当したのは、アンシア・シルバート(1939-)です。後に『チャイナタウン』(1974)と『ジュリア』(1977)において、アカデミー衣裳デザイン賞にノミネートされます。
アイコニック・ジャケット
ローズマリー・ルック11 ギンガムチェック
- イエローのハイネックセーター、ハイゲージ
- ステンカラーのブラウンのギンガムチェックのジャケット
- ブラウンのミニスカート
- ロジェ・ヴィヴィエのローヒールパンプス