レーヌドゥヴェール
原名:Laine de Verre
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2014年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/8,800円、100ml/14,300円

10年早かったクワイエット・ラグジュアリーなフレグランス

©Serge Lutens
冬の寒さに身を染め尽くされて初めて、ガラスの王は武器を置き、羊毛の貴婦人の足元に、自身の身に霜が降り積もった花やシダを捧げにやって来た。
セルジュ・ルタンス公式サイトより
2010年2月(日本発売は同年4月から)に、セルジュ・ルタンスから〝アンチ・パフューム〟のコンセプトで、最も安いエントリー・プライスのコレクションとして「ルタンスの水(ロー)」コレクションの展開が開始されました。
その第三章として2014年2月に発売されたのが「レーヌドゥヴェール」でした。フランス語で〝ガラスのウール〟を意味します。〝ガラスのウール〟とはグラスウールのことです。それはグラスファイバーの一種であり、断熱材として主に使用されるものです。
そんな変わった名を持つこの香りは、アルデハイドが呼び覚ますメタルと、カシュメランが呼び覚ますカシミアという相反する素材感を素肌の上で同時に感じさせる香りです。
そんなルタンス曰く「私の女性性と男性性の間の家庭内争い」を表現している香りとして、クリストファー・シェルドレイクにより調香されました。
あまりに早すぎた「AIのために作られたような香り」


超高速コンコルドが、氷で作られたアイスキャッスルを突き破るように、メタリックなアルデハイドが、氷結されたホワイトムスクと衝突し、溶かしていくような感触からはじまります。実際のところ、この香りは、相反する香りの衝突ではなく、ひとつの物体が氷から水へ変わる過程を〝きらめき〟により感じさせます。
それはまるで雪の冷たさが、水の温かさに変わる「自然の不思議」を爆発するソーピィーさと共に、香りで表現しているようです。すぐにフレッシュなオレンジ×レモンとコリアンダー、ミントが注ぎ込まれ、シュワシュワと弾ける苦くて青々しい爽快感に満たされてゆきます。
そしてうっとりするようなカシュメランとムスクの奥から、淡いピンクのピュアローズがほんのりと香り立ち、早春の山の小川のほとりで雪解け水に、裸足の足先が触れるような、とても贅沢なミネラルを感じる余韻で満たされるのです。
洗い立ての何かではなく、とことんシンプルに、自然が生み出す清潔感を、冷たさと温かさのコントラストによって、素肌に転写するような、10年早かったクワイエット・ラグジュアリーなフレグランスと言えます。もしこの香りが、普段フレグランスを使わない人に向けて、エルメスやシャネルが、ブティックのVIP顧客限定で売り出したら、またはカルティエやグラフがダイヤモンドの香りとして売り出したら、たとえ10万円でも易々と世界的に売り切れるでしょう。
しかし、何よりもこの香りが、魅力的なのは、近未来の『2001年宇宙の旅』のような無菌室の機械化された空間を感じさせる所にあります。まさに「AIのために作られたような香り」と言えます。
カルバン・クラインの「シーケーワン」をラグジュアリーにしたような香りという印象もあります。私にとってこの香りは、ビバリー・ヒルズにある『ザ ロンドン ウェスト ハリウッド』の香りです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイドⅢ』で、「アルデヒド・カシュメラン」と呼び、「興味深く刺激的なアコードが、香りの五分の一くらいはある」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:レーヌドゥヴェール
原名:Laine de Verre
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2014年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/8,800円、100ml/14,300円

シングルノート:アルデハイド、柑橘類、ホワイトムスク、カシュメラン、香辛料

