エルメス・イン・カラー 阪急うめだ本店
場所 大阪・阪急うめだ
住所 大阪府大阪市北区角田町8−7 2階
電話 06-6361-1381
なぜエルメスの販売員のほとんどが香水の説明ができないのか?
ジャン=クロード・エレナとクリスティーヌ・ナジェルという素晴らしい専属調香師が作り上げている偉大なるエルメスの香りの数々。カイエデモードがそのすべての香りについて徹底分析(エルメス香水聖典)させて頂くほど、どの香りもブランドと調香師の「心」が込められた素晴らしい香りばかりです。
しかし、エルメスのブティックにおいて、その香りの「心=素晴らしい世界観」が、お客様に伝えられることはほとんどありません。
エルメスのフレグランス接客は、以下の3パターンです。
- フレグランスが好きで、個人的にエルメスの香りについて調べており、とても詳しくお客様に寄り添う接客ができる販売員→全体の5%にも満たない
- 会社の資料をお客様の目の前でめくり話す販売員→ほとんどがコレ。果たして接客の場で資料を棒読みして「とても素敵な商品なのです」と言って、果たしてお客様の「心」に響くのでしょうか?
- たった一言「何かお決まりですか?」と聞く販売員→論外接客。コレって、あなたじゃなくてもいい仕事=販売員がいる必要がない作業ですよね?
エルメスは、服やシューズ、ジュエリー、ウォッチに関して、それぞれスペシャリストの方々がおられ、良いスタッフに当たれば(最近は商品名の意味さえも知らない、エルメスに相応しくないスタッフも増えてきています)、しっかりとした接客をしていただけるのですが、フレグランスに関しては、スペシャリストを育成するトレーニング自体が存在しないので、適切な香水接客が分からない環境に、販売員の皆様はただただ放置されています。
これは恐らく、エルメスほどコロナウイルスに左右されずにブランド力により売れ続けているブランドは存在しないので、「説明せずに売れるのがエルメスなんです」という考えによるものなのでしょうが、エルメスの専属調香師やフランス本国のパルファン部門の責任者にとっては、悲しすぎる販売スタイルであると言えるでしょう。しかし、驕れる者久しからずです。
つまり、何十種類もの芸術の域に達している超一流の香水がそこにあるのに、その価値がわからない人たちがそれを販売している現状なのです。もし、あなたがルイ・ヴィトンのフレグランス・スペシャリストの接客を経験していたら、大いに失望することは間違いありません。
今までのエルメスの典型的なフレグランス接客の実例
ここでひとつエルメスのフレグランス接客の悪しき典型をひとつ挙げさせていただきます。
ひたすら沈黙で、「いかがですか?」を繰り返し、「どれが気になりますか?」と聞かれ、「これを」と指差せば説明なしに香りをムエットにつけて渡され再び沈黙し、「いかがですか?」の繰り返し。
「私も全てが分かる訳ではないのですが…」と言い訳がましいことを言いながらも、ひとつの香りについてさえもまともな説明が出来ずに、引き出しの中から、資料を取り出し、読み上げる始末。
そして、ムエットに何度も何度も…至近距離で表と裏に香りをつけて、エレガントとは真逆のムエットぱたぱた…ぱたぱた…をずっと繰り返す。
この販売員の方は、こうは考えないのでしょうか?もし5つ星のレストランで、ワインを提供する時に「私ソムリエじゃないんでよく分からないんですけど…」と、落ち着きなくテーブルにグラスをバン!!と置かれるようなそんな接客をしているということを…
仮に、エルメスの販売員の方々がしっかりとフレグランスについて説明できるならば、メゾンマルジェラやジョー マローン ロンドン、ディプティックを購入しているお客様のほとんどが、ノマド 4本セットを購入することでしょう(エルメスのノマドのコスパは最強です。しかし、1本から購入できないからこそ、一緒に選んでくださるスペシャリストの存在が必要になるのです)。
2022年、ついにエルメスが目覚める!
何よりも、ラグジュアリー・フレグランスの接客方法を一歩前に前進させたのは、2016年9月からフレグランスを扱うようになったルイ・ヴィトンが、フレグランス・スペシャリストという肩書きを販売員に付けたことからでした。
フランスのエルメス本社において、常にインハウス・パフューマーを持つ他の5ブランドの動向はたえず注視されています。やがて、ディオール、シャネルは独自の香水専門ブティック展開を軌道に乗せ、一方、ルイ・ヴィトンは、スペシャリストの精鋭化を実行していくかどうか(つまり本格的なフレグランストレーナーを雇用するかどうか)、現在様子見をしている状況であることを察知したのでした。
かくして、ラグジュアリー・フレグランスの接客重視の流れに乗り遅れてはまずいとエルメスは、2022年9月14日に、日本初のエルメスのパフューム&ビューティを専門的に展開する店舗「エルメス・イン・カラー」を伊勢丹新宿店 本館1階にオープンさせ、メイクアップ・アーティストと共に、フレグランス接客の経験のある販売員を雇用したのでした。
さらに同年10月26日に阪急うめだに二号店がオープンしました。ちなみにカルティエが10月末に表参道で2週間、さらにその後、神戸でおこなったフレグランスポップアップは、現状において、泥沼に嵌りつつあるカルティエのフレグランス販売をどのように軌道に乗せていこうかを考えての施策でした。
エルメス・フレグランス接客の『希望の星』
さて、2024年10月現在の調査では、新宿伊勢丹店に素晴らしいフレグランス接客の出来る販売員様がおられるという情報をまだ確認できていません。相変わらずお客様の前で、バインディングされたカタログを棒読みし、魂のない朗読を繰り返しています。
一方で、GINZA SIX店は、女性チーフの方がしっかりしておられるので、しっかりとしたトレーニングをエルメスが施せば、良い店舗に成り得る潜在力があるように思えます(さらに新しくオープンした京都高島屋店には素晴らしい販売員様がおられます)。
これは香水を扱うラグジュアリーブランドが勘違いしがちなことなのですが、香水専門のトレーナーがいないことは論外であり、さらに名ばかりのトレーナーを置いていても、同じくらい論外であることを知らなければなりません。何よりもまず自社のトレーナーがトレーナーとして相応しいかを知る必要があります。
アフターコロナ時代の今、すべてのラグジュアリー・ブランドにおいて、自社トレーナーの能力のアップデートが求められているのです。
話を戻しましょう。一方で、阪急うめだ店には、素晴らしい女性スペシャリスト様がおられます。
この方は、元々、ブルーベルで香水販売員として経験を積み、当時ソムリエールとして梅田大丸店のチーフをつとめられていたルイ・ヴィトン神戸店の元フレグランス・スペシャリスト様の部下として最高の経験を積んだ後(ちなみにもう一人の元部下の方は、阪急うめだ店のブルーベルのチーフをつとめておられます)、大阪高島屋に存在したフレデリック・マル/キリアンを経て、心斎橋大丸のフレデリック・マルで接客されていた方です。
フレデリック・マルを扱っていたということは、ジャン=クロード・エレナ様の偉大なクリエイションについてもしっかりと説明していただけるということです。
まさにこの方こそは、エルメス・フレグランス接客の『希望の星』なのではないでしょうか。エルメスは、そろそろまともなフレグランス・スペシャリストを育てていく必要があるのです。
総合的に見ても『エルメス・フレグランスの聖地』
この方だけでなく、こちらの店舗には、ドルチェ&ガッバーナ・ビューティで、メイクアップ・アーティストとしてだけでなく、フレグランスの説明もピカイチだった美しい販売員様がおられます。この方のフレグランスの接客は、先のスペシャリスト様と遜色のない能力をお持ちです。
詳しくは述べることは出来ませんが、この方は、梅田阪急において聖人のような方として人気のある方です。
さらに元心斎橋大丸でメゾン・クリスチャン・ディオールのフレグランス・エキスパートだった女性販売員様や、これまた素晴らしい男性販売員様、さらにグレグランスの重要性について理解のある女性の現場チーフにも恵まれています。
私は、東京のエルメス・ブティックや「エルメス・イン・カラー」の接客に失望されている方は、是非、こちらの神接客を体感していただきたいと思います。
お客様は神様ではありません。ですが、自社商品に込められた思いを知らずに、テーブルの引き出しを開け、冊子を取り出し、目の前で香りについての文章を棒読みし、商品の購入を促す販売員の姿勢に対しては、「香水に対する愛のない人から香水を購入したくない」という思いがこみ上げてきて当然です。