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アニック・グタール

【グタール】フォリー ダン ソワール(マチュー・ナルダン/ジュリー・マッセ)

アニック・グタール
©Goutal Paris
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フォリー ダン ソワール

原名:Folie d’un Soir
種類:オード・パルファム
ブランド:グタール
調香師:マチュー・ナルダン、ジュリー・マッセ
発表年:2022年
対象性別:女性
価格:50ml/23,760円、100ml/33,330円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

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温かいココアの中に、身も心も溶けてゆく至福のひととき。

©Goutal Paris

ファッション・モデル時代のアニック・グタール ©Goutal Paris

2022年3月30日にグタールより発売された「フォリー ダン ソワール」は、フレグランス・コレクション「レ パルファン ドゥ ジェラルディーヌ」の第四弾の香りです。

フランス語で〝今宵の熱狂、夕べの激情〟の意味を持つこの香りは、ロベルテのマチュー・ナルダンジュリー・マッセにより調香されました。ちなみに二人は2020年の「ル タン デ レーヴ」でも共同調香を行いました。

グタールの創業者であるアニック・グタール(1946-1999)は、1960年代後半から70年代前半にかけて、ジェラルディーヌという名のファッション・モデルとして活躍していました。当時のロンドンはスウィンギング・ロンドンと呼ばれるファッションを中心とした若者文化の開花により活気に溢れていました。

ちなみに、フランス本国の公式サイトに記載してある〝それは70年代、アニックが20歳の時〟という文章は、アニックの年齢と照らし合わせても明らかに誤りです。重要な事実、それはアニックはスウィンギング・ロンドンの熱狂の真っ只中に、ロンドンに降り立ったということです。
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運命の男・デヴィッド・ベイリー

カトリーヌ・ドヌーヴとデヴィッド・ベイリー、1966年のカンヌ国際映画祭にて。

母は、誰かに言われたからではなく、思いついたらすぐに実行に移す人でした。

カミーユ・グタール

きっかけは、ロンドンでオペア留学中のある夜、ホストファミリーの家族の友人であり、『ヴォーグ』の専属フォトグラファーのデヴィッド・ベイリー(当時、ベイリーはカトリーヌ・ドヌーヴと結婚していた)が、やって来たことからはじまりました。

彼は、アニックを一目見て、ファッションモデルとしての素養を見出したのでした。

そして、ジェラルディーヌというモデル名を名乗り、アニックは、ハーパーズ バザーの一面を飾り、瞬く間にトップモデルとして10年間活躍するようになるのでした。

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運命の星に出会い、永遠の伴侶の下に舞い戻る。

©Goutal Paris

アニック・グタールの〝決断〟と〝運命の星〟が結びついた新世界を香りで表現したこの香りは、静かなる情熱を感じさせる知的なターキッシュローズの調べからはじまります。毎日8時間ピアノを練習し、パリのヴェルサイユ音楽院で学ぶようになったアニックの少女時代そのものの香りです。

そして、この頃、生涯の伴侶になるチェロを弾く青年との恋もありました。この恋が、ココアで表現されているのがこの香りの素敵なところです。はじめにほんのりと温かみのあるパウダリーなココアがターキッシュローズと寄り添うように香り立つのです。

まさに音楽の世界におけるエリートコースを歩もうとしていた少女アニック。しかし、卒業後、恋人は、一流チェリストの階段を駆け上る中、彼女はピアニストとしての限界を知り、その道を断念し、夢を諦め、二人は別々の道を歩むことになります。

まさにほとばしる情熱を感じさせる、透き通るように鮮やかなピンクペッパーに、旅を予感させるレザーが、軽やかにターキッシュローズを包み込んでゆきます。アニックはロンドンへと羽ばたいたのでした。そして、ココアは一歩引いて彼女を静かに見守るのです(でも確かに存在し続ける)。

60年代半ばのロンドンはスウィンギング・ロンドンと呼ばれるファッションを中心とした若者文化の開花により活気に溢れていました。

そして、ある夜、運命の星=デヴィッド・ベイリーと出会い(もしかしたら、恋に落ちたのかもしれません)ファッションモデルとしての、隠された才能が見出されたように、甘く艶やかにスモーキーかつフェミニンなミルラとオリバナムが解き放たれるのです。

ゆっくりとほんとうにゆっくりといつも見守ってくれているココアと結びつき、パリ時代に培われたエレガンスが折り重なり、クリーミーに昇華してゆきます。背後に煌き続けるピンクペッパーがこの香りを常に、気品ある華やかさなものにしてくれます。

そして、ファッションモデルとしての10年間の間奏曲を経たある夜、あのかつてのチェロ弾きの青年であり、いまや一流のチェリストとなったアラン・ムニエと再会し、再び恋に落ちるのです=温かく包み込むココアの到来。

その至福のひとときが、まさに触るとバターのように崩れてしまいそうなほど、繊細にすべてが滑らかに溶け合い、肌とひとつになるクリーミーな余韻により表現されているのです。

パリでピアニストとしてエレガンスを身に着け、ロンドンでそのエレガンスを若い情熱とともに解き放ち、やがて、パリに戻った後、ピアニストを目指していた頃の初恋の男性と再会し、生涯の伴侶を見つけ、『アニック・グタール』という生涯を捧げる〝不滅の記念碑=香水ブランド〟までも打ち立てることになるのです。

そんなアニックの人生のハイライトとなる夜をつなぎ合わせた香り、それが「フォリー ダン ソワール」なのです。だからこそ、ただ喧しく変化に富む華やかな香りではなく、しっかりと築き上げられたエレガンスという土台の上に、建てられていく〝一本筋の通った女性の気品〟をローズとピンクペッパーを包み込むココアとレザーによって表現した、身も心もうっとりさせる香りなのです。

新しい人生に飛び込むという言葉の真の意味。それは、運命の出会いを大切にし、経験を自信に変え、女性らしさを慈しむ姿勢があればこそ、ある瞬間、すべてが結びつき、昇華するというもの。つまりは、毎日を明日のために生きる女性にこそ相応しい香りなのです。

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グタールの『女性の旅の香り』=「アトラップ レーヴ」

©Goutal Paris

元々、「オワゾー ドゥ ニュイ」(夜遊び人)というコレクション名で発売されていた三作品はこの香りの発売と同時に、「レ パルファン ドゥ ジェラルディーヌ」として転生することになりました。そのコンセプトは以下の通りに変更されました。

  1. トゥニュ ドゥ ソワレ」〝イブニングドレス〟カメラのフラッシュの中で、イブニングドレスを着たジェラルディーヌの華麗に浮き立つ心。
  2. ニュイ エ コンフィダンス」〝夜と自負〟ファッション写真の創作活動を共有する中で、ジェラルディーヌとフォトグラファー(デヴィッド・ベイリー?)が甘い言葉を囁き合うようになる大人のロマンス。
  3. エトワール ドゥヌ ニュイ」〝夜の星〟ジェラルディーヌのメイクアップに焦点を当てた、娘カミーユによる〝永遠に美しい母の面影を探して〟。

そして、本作は、ジェラルディーヌの運命的な出会いと、別れ、そして、新たなる出会いと、別れ、最後に〝不滅の再会〟へと至る香りなのです。それはどこかジェラルディーヌが、現代のパリもしくは東京に現れ、新しいモードを私たちの心に降り注いでくれるような感覚を与えてくれるものでもあります。

疑いようもなくルイ・ヴィトンの「アトラップ レーヴ」と比較して、楽しみたくなるココアの香りです。このボトルカラーがこの香りの世界観をすべて示しているともいえる〝ココア色の温かいウッディローズ〟の最高傑作と言い切っても過言ではありません。

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香水データ

香水名:フォリー ダン ソワール
原名:Folie d’un Soir
種類:オード・パルファム
ブランド:グタール
調香師:マチュー・ナルダン、ジュリー・マッセ
発表年:2022年
対象性別:女性
価格:50ml/23,760円、100ml/33,330円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


トップノート:ターキッシュローズ、ピンクペッパー
ミドルノート:ミルラ、オリバナム
ラストノート:レザー、カカオ