1961年オスカードレス=クリスチャン・ディオール
1961年4月のオスカーナイトにリズ・テイラーが着ていたドレスは、レモン・イエローのトップとローズ飾りのついたベルトとフローラル・ボールガウン・スカートで構成されたクリスチャン・ディオールのドレス〝ソワレ ア リオ〟でした。イヴ・サンローランの後にディオールの主任デザイナーになったマルク・ボアンの1961年春夏のスリム・ルックを見て注文した12着のドレスのうちの1着です。
そして、1949年から69年にかけロデオ・ドライブに存在した人気ジュエラーWilliam Ruserによるダイヤモンドとパールのイヤリングを身に着けています。
マルク・ボアンのディオール
クリスチャン・ディオールの急死により、1957年11月15日、当時弱冠21歳だったイヴ・サンローランのディオール主任デザイナー就任が発表されました。そして、その二ヵ月後にコレクションにおいてのトラペーズラインの発表。その大成功により、ディオール二世としてサンローランは喝采を浴びました。しかし、サンローランは、1960年にアルジェリア戦争のため徴兵されました。
そんなサンローランの後継者として、ディオールの存亡をかけて主任デザイナーの地位を託されたのが、元々ジャン・パトゥーにいた34歳のマルク・ボアンでした。彼はサンローランの斬新さとは対象に、伝統を重んじ、よりディオールに近いデザインを手がける人でした。1967年にはディオール初のプレタポルテを発表し、ファッション界に大旋風を巻き起こします。そして、1989年にジャン・フランコ・フェレと交代するまで不動の「ディオールの主任デザイナー」として29年間君臨したのでした。
二人の女優が同じディオールドレスを着た瞬間。
1961年7月14日、リズ・テイラーとエディ・フィッシャー夫妻はソ連のモスクワ・クレムリンのレセプションに参加しました。ディオールオリジナルの、ボートネックに幅広いベル型のスカートという形の、白いシフォンのカクテルドレスに身を包み、一時間遅れて堂々と現れました。しかし、なんとそこには、全く同じ格好をしたジーナ・ロロブリジーダ(1927-)がいたのでした。
どういうわけか、ジーナ・ロロブリジーダがリズの選んだドレスを知って、受けをねらってまったく同じ格好をしてみせたんだ。この埋め合わせに、リズには次のシーズンのドレスを無料で進呈したよ。彼女、刺繍の入ったじつに高価なガウンを選んでね。
マルク・ボアン