作品名:クレオパトラ Cleopatra (1963)
監督:ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ
衣装:アイリーン・シャラフ/レニー・コンリー/ヴィットリオ・ニーノ・ノヴァレーゼ
出演者:エリザベス・テイラー/リチャード・バートン/レックス・ハリソン/ロディ・マクドウォール/マーティン・ランドー
絨毯な中から現れるエリザベス・テイラー
クレオパトラ・ルック1 魔法のじゅうたん
- ちびまる子ちゃんのようなおかっぱ頭、内巻き
- オレンジっぽい朱色のフロントスリット・ノースリーブワンピース、大きく両サイドにスリット。絞られたウエスト
- 白のロングプリーツスカート
- ゴールドバングル、ウラエウスの紋章
- ゴールドのレースアップサンダル
- ゴールドの短刀
紀元前48年から30年、つまりクレオパトラが20歳から39歳の間で展開される、リズ・テイラーのクレオパトラは間違いなく過小評価されています。クレオパトラそのものとも言えるこの何ともいえない浮世離れした雰囲気は、彼女だからこそ出せた雰囲気であり、それは撮影中のこの一言に示されています。
「私は、世界で一番美しい女性を演じているのです。だからこそ、私自身が、最も美しい時だけ、私はカメラの前に立つのです」。いけしゃあしゃあと撮影に3時間遅れで現れたときに言い放った言葉です。そして、そんなリズ・テイラーの言葉を吹替えした、1975年の小川真由美がとても素晴らしいです。ちょうど2年後の『八つ墓村』で化け猫になるこの時代の真由美は、間違いなく〝クレオパトラに最も近い日本人〟でした。
ちなみに絨毯から現れるクレオパトラのショットにおいて、リズは、最初はフラットサンダルを履いているのですが、立ち上がって歩くシーンでは、ハイヒールを履いています。
リズ・テイラーの全く違和感のない恐ろしさ。
クレオパトラ・ルック2 ホワイトガウン
- ちびまる子ちゃんのようなおかっぱ頭、内巻き
- 白色のフロントスリット・ノースリーブワンピース、大きく両サイドにスリット。絞られたウエスト
- ゴールドバングル、ウラエウスの紋章
私は9歳のときからカメラの前に立ってきたが、もし、それ以来今までの年月を、どこかの大勢の身も知らぬ観客を満足させるためだけに過ごしてきたとしたら、両手両足のないだるまさんと同じになっていたろう。
エリザベス・テイラー
リズ・テイラーという女優の恐ろしさは、マリリン・モンローやオードリー・ヘプバーンといった同時代の女優とは全く違う「ハリウッドを生き抜いた凄み」にあります。その凄みがあるからこそ、彼女がクレオパトラの衣裳を身に着けていても、凄まじいメイクアップをしていようとも、現実味を生み出すことに成功しているのです。
恐らく、マリリン・モンローやオードリー・ヘプバーンだと、クレオパトラの役柄に食われてしまったことでしょう。この作品のリズの恐ろしさは、役柄に食われるどころか、逆に20世紀フォックスという映画会社もろとも、クレオパトラを食い尽くしたところにあるのです。
クレオパトラ=リズ・テイラーの美容
私は映画女優にふさわしい体型の典型だそうだ。両肩は美形で、バストは豊満で、ウエストは細く、おしりが幅広でない。きこえはよいが、私も貴女たち皆さんと同じように、変えられたらと思う箇所が2,3ある。上腕部、あまりにも短すぎる脚、二重になりかけているあごの先端。
エリザベス・テイラー
実に印象的なのがクレオパトラが全身マッサージとネイルケアを受けている姿です。古代エジプトにおいて、マッサージは非常に盛んで、砂糖・蜂蜜でつくられた脱毛剤と軽石でむだ毛をとり、化粧水、クリームなどもすでに製造されていました。実際のクレオパトラも、薔薇や蜂蜜、牛乳、アロエ、真珠といったものを愛好しており、入浴を好み、美容にとても気をつかっていたと言われています。そんなクレオパトラの美意識が見事に体現されています。
これほど美しい従者に囲まれ、毎日、(自分自身の努力はほとんどなく)長時間かけて全身ケアされたならば、驚異的な美が手に入ることは間違いないだろうという説得力があります。