ココ オードゥ トワレット
原名:Coco Eau de Toilette
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ、フランソワ・ドゥマシー
発表年:1984年
対象性別:女性
価格:50ml/14,520円、100ml/20,350円
公式ホームページ:シャネル
もっとも安く買うことができるシャネルの服
1984年にシャネルの三代目専属調香師ジャック・ポルジュ(と補佐役のフランソワ・ドゥマシー)が、ガブリエル・シャネルのニックネームを冠した初のウィメンズ・フレグランス「ココ」を発表しました。この香りは、オードトワレだった「クリスタル」(1974)を除くと、ココ・シャネルの死後初めて発表されたフレグランスでした。
ちなみに「ココ」は二人にとって、当時人気を独占していたイヴ・サンローランの「オピウム」に対する挑戦状として生み出された香りでもありました。つまりとんでもなく高いハードルに向かってジャンプした香りだったのでした。
そして、同年発売されたこのオード・トワレ・ヴァージョンこそが、地球上でもっとも安く購入することができるシャネルの服なのかもしれません。
そんなこの香りは、スパイシーなクローブがアルデハイドによってやさしく背中を押されるようにして、マドモアゼル・シャネルのアパルトメントの扉を開けるように弾けていくところからはじまります。
そして、部屋の中に入ると同時に、甘くも懐かしいピーチとマンダリンの香りが、生き生きとまるで若き日のココがそこにいるかのように香り立ちます。
やがて、(N°5の主役である)グラース産ジャスミンとローズドメの官能的な響きが聞こえてきます。「ココ」におけるフローラルはあくまでバロックの空気を生み出すための背景の役割を担うものです。そして、アンバーを中心にインドネシア産のパチョリ、トンカビーン、バニラが包み込むような余韻で包み込んでくれます。
本当に魅力的な女性は、甘い空気を生み出す人であっても、べたべたと甘ったるくはないということを教えてくれる香りです。
特筆すべきはドライダウンと共に姿を現す、1954年当時の71歳のマドモアゼルを連想させるベンゾインとサンダルウッドの年齢を超えた女性の貫禄です。美しさを失ったものにだけ持ちうる〝荘厳〟の領域に達した女性の凄みが、〝温かさ・甘さ・静謐さ〟によって無言で示されるのです。
若さを女性の魅力の物差しとしない、成熟こそが女性の魅力であることを知る、〝シミ・ソバカス・シワを愛せる〟賢明な男性を指し示してくれるリトマス試験紙。
目尻に美しいシワがよる笑顔が魅力的な大人の女性の香りであり、パーティ・ピープルを気どる大人になりたくない流されやすい女性にとっては、とうてい理解不可能な深みを持つ香り(または白黒映画の魅力が分からないお子様に対しても同じく)。
クラシック音楽と同じで、大音響で聞くと耳障りですが、程良い音量と環境で聴くと、この上なく、優雅な気持ちへといざなう香りです。
香水データ
香水名:ココ オードゥ トワレット
原名:Coco Eau de Toilette
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ、フランソワ・ドゥマシー
発表年:1984年
対象性別:女性
価格:50ml/14,520円、100ml/20,350円
公式ホームページ:シャネル
トップノート:コリアンダー、シチリア産マンダリン・オレンジ、ピーチ、ジャスミン、ブルガリアン・ローズ
ミドルノート:プロヴァバンス産ミモザ、クローブ、チュニジア産オレンジ・ブロッサム、クローバー、ローズ、イランイラン
ラストノート:ラブダナム、インドネシア産パチョリ、アンバー、サンダルウッド、ブラジル産トンカビーン、ソマリア産オポポナックス、シベット、バニラ