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【シャネル】チャンス シリーズの全て

シャネル
©CHANEL
シャネル
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チャンス

Chance by Chanel 2002年にシャネルは、女性用フレグランスの新作「チャンス」を発表しました(発売は2003年)。これは、1996年の「アリュール」以来となるシャネルの女性用の新作フレグランスでした(ちなみに、その後の女性用の新作の香水は、2017年の「ガブリエル シャネル」まで待たなければならない)。

発売と同時に、その大々的な広告キャンペーンにより、「シャネルは水商売または昔の大人の女性の香り」だという従来のイメージを覆すことに成功しました。

2002年という新世紀のはじめに、若者の支持を見事に獲得するチャンスをシャネルは「チャンス」シリーズによりものにしたのでした。

No.5」は、臆することなく女性らしさを表現する香りです。「ココ マドモアゼル」は、なりたい自分になる自由を表現しています。「ブルー ドゥ シャネル」は、神秘性と複雑さを表現しています。しかし、チャンスは違います。明るく、喜びに満ち、楽観的な香りのコレクションなのです。

私たちのラグジュアリーのビジョンにおいて、チャンスは他とは一線を画しています。それは、気負わないラグジュアリーの表現です。チャンスは洗練された軽やかさと輝きを体現しています。まさに光り輝くコレクションです。

シモーナ・カッタネオ(現シャネルのフレグランス&ビューティ部門社長)

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ひとりの女性がすべてを変えた。


フレグランスにおけるシャネル帝国の復興は、1978年にパルファム&コスメ部門のマーケティング・ディレクターに就任したジーン・ジンマーマンによる功績であることはあまり知られていません。

彼女が、ジャック・ポルジュの才能を見抜き、三代目調香師に抜擢しました。そして、2005年に引退するまでに、「ココ」(1984)「アリュール」(1996)といった香りを市場に投入し、見事にシャネル帝国を興隆させたのでした。

そんな彼女が、有終の美を飾るべく最後の挑戦に乗り出したのが「チャンス」(2002)でした。シャネル史上初の円形ボトルが採用されたこの香りの売りは、「トップ、ミドル、ラストノートは存在せず、言葉で表現することが難しい、一瞬ごとに変化する、ミステリアスさ」でした。

シャネルのアートディレクターだったジャック・エリュによる円形ボトルとサイコロをイメージしたキャップの組み合わせは、香水の歴史においても類稀なるものでした。アイデアとして面白いほとんど実用化不可能なデザインを現実のもとした画期的なボトルデザインでした。

完璧な円形が銀色に輝く宝石のようなボトルデザインを採用したのである。ガラス容器を美しい円形に仕上げ、口の部分のメタル製パーツは、滑りにくく、きつすぎない適度な強度に調整されて円状に巻き付けられている。一見、単なる円形のように見えるが、作るためには非常に高度な技術が必要とされるそうだ。

『シャネルの戦略』著者:杉本香七、編著:長沢伸也

ジーンが、2005年に引退するとき、シャネルは最大の香水市場であるアメリカにおいて、(着任時から)4倍以上の売り上げである5億ドルを上げるようになったのでした。

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チャンスを愛するふたつのパターン

2024年にジャン=ピエール・ジュネ監督と写真撮影はスティーヴン・マイゼルにより新たなキャンペーン・フィルムの撮影が行われました。©CHANEL

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この世界に安全などない。チャンスがあるだけだ!

ダグラス・マッカーサー

チャンス・シリーズ(別名・チャンス五姉妹)が、フレグランス業界に与えた影響は計り知れません。それは何よりも、世界中の10代後半から20代前半の女性に対して、ラグジュアリー・ブランドのフレグランスを身近に感じる初体験のきっかけを生み出した所にあります。

このコンセプトのため、その調香スタンスは、シャネルの専属調香師ジャック・ポルジュのそれまでのスタンスとは全く違ったものになりました。

今までのフレグランスのすべてが、シャネルのファッションにマッチすることを前提に調香されていたことに対して、このフレグランスは、明らかに、シャネルのファッションにマッチしないことを前提に生み出されたものでした。

それは、明らかに、ファスト・ファッションにマッチする香りであり、ファスト・ファッションを格上げするラグジュアリー・ブランドからの贈り物でした。

だからこそ、このフレグランスを身に着ける女性は、はっきりと二つの傾向を示すことになるのです。

ひとつは、ファスト・ファッションで、身を固めている女性にとっての唯一のラグジュアリー・ブランドであり、もうこれ以上は何もいらないと考えさせるフレグランスです。

そして、もうひとつの傾向は、「マイ・ファースト・シャネル」としてのフレグランスです。つまり、彼女はチャンスから、シャネルに目覚めるのです。

まさに「チャンス」とは、前者の方々にとっては一生ものであり、後者の方々にとっては、1年から2年で使い切ると同時に決して振り向かないフレグランスとなるのです。そういう意味においては、初体験の相手と結婚する女性と、そうでない女性という風にたとえることも出来、どちらにとってもきわめて理想的な五つのパートナー像がここにはあるのです。

チャンス五姉妹(特にチャンスとチャンス オー タンドゥル)は、世界的に、全ブランドのフレグランスの中で、「ココ マドモアゼル」と並ぶトップ5の売り上げを上げています。それほどのベストセラー・フレグランスに成り得たのはこういった背景があるからなのです。

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幻のクレイヨン ドゥ パルファム セット

©CHANEL





2020年6月5日(金)に数量限定でクレヨンタイプの4種類(各1.2g×4本)の「チャンス」が発売され、即完売しました。恐るべきチャンスです。

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チャンス五姉妹

チャンス


チャンス(ジャック・ポルジュ)2002年
動き続ける星座のように、幸運の星へと導いてくれるシャネルの香り
全てはパイナップルからはじまった。果肉にピンクペッパーとパチョリが溶け込み、ジャスミンとアイリスのパウダリーな甘さに包み込まれていきます。

チャンス オードゥ パルファム(ジャック・ポルジュ)2005年
ミンクの毛皮とダイヤモンドに愛される裕福な美女の香り
オリジナルのオード・トワレと濃度が違うだけで同じ香り。あなたがその香りを選ぶのではなく、あなたがその香りに選ばれる香りです。

チャンス オー フレッシュ


チャンス オー フレッシュ(ジャック・ポルジュ)2007年
あなたの素肌にセカンド・チャンスがやって来る。
真夏のチャンス。ウォーターヒヤシンスのマリンノートがシトラス→ウッディに溶け込む香り。チャンス・フォー・メンとしても使用できます。

チャンス オー フレッシュ オードゥ パルファム(オリヴィエ・ポルジュ)2023年
オリヴィエ・ポルジュが再解釈した、さらに美しい「シャネルのグリーン」
最初から最後までフレッシュなレモンが感じられ(EDT版より弾けています)、両方に共通で使用されているジャスミンは、EDT版よりも華やかで明るく目立ってゆく、よりユニセックスな香り。

チャンス オー タンドゥル


チャンス オー タンドゥル(ジャック・ポルジュ)2010年
最高の最初の香水。世界で一番売れている「チャンス」
日本でもっとも売れているチャンス。柔らかなローズとクリーミーなムスクが漂う、夢心地でロマンチックな「ずっと笑顔の香り」です。

チャンス オー タンドゥル オードゥ パルファム(オリヴィエ・ポルジュ)2019年
チャンスのはじめてのローズ
EDTのヒヤシンスとアイリスの代わりに「チャンス」で唯一ローズを投入した「大人のチャンス」。更なる万能性を高めた香りとなっています。

チャンス オー ヴィーヴ


チャンス オー ヴィーヴ(オリヴィエ・ポルジュ)2015年
オリヴィエ・ポルジュによる〝はじめてのチャンス〟
ジャスミンとグレープフルーツの香りで、エレガントで少しだけ大胆な、シトラスがもっとも暴れているチャンス。

チャンス オー スプランディド


チャンス オー スプランディド(オリヴィエ・ポルジュ)2025年
五番目のチャンス。それはシャネル初のラズベリー・フレグランス
よりフルーティーでフレッシュなオープニング。それでいて甘すぎず、ジャムのような甘さもなく、まるで摘みたてのラズベリーが満開のローズガーデンに佇んでいるかのようです。