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作品データ
作品名:いつも2人で Two for the Road (1967)
監督:スタンリー・ドーネン
衣装:マリー・クヮント/パコ・ラバンヌ/ケン・スコット/ミシェル・ロジエ
出演者:オードリー・ヘプバーン/アルバート・フィニー/ジャクリーン・ビセット
オードリー・ヘプバーン・ファッション12年史。
とても洗練された映画でした。人生における男女間の愛のさまざまな様相を描くことにおいても、時を前後させながらストーリーを語る手法においても。
オードリー・ヘプバーン
1950年代はじめから1960年代半ばの12年間を5つの時間軸に分けて交差する物語(正確には6つだが、1つは夫マークに扮するアルバート・フィニーの不倫パートのみでオードリーが登場しないので、5つとする)。
この作品こそが、1953年に『ローマの休日』でハリウッド・スターになったオードリー・ヘプバーン(1929-1993)の以後14年間のファッション・アイコンとしての総決算的な役割を担った作品とも言えます。本作においてオードリーが着るファッションは約30着です。しかもどのファッションもその時代を反映させたものでした。
あらゆるオードリーのファッション・ムービーの中で、最終的に行き着くのが、この作品なのです。オードリーをファッション・アイコンと崇める女性にとってのリトマス試験紙であり、それが表面的であるか本質的であるかを推し量ってくれるのがこの作品なのです。
そもそもオードリー自身がこの作品に出演した当時、自分自身のスタイルに疑問を感じていました。30代の半ばを越えて、オードリー=〝妖精〟のイメージ・チェンジを決意し、そして、見事に自分自身の新たなるイメージを創造することに成功し、〝永遠のスタイル・アイコン〟となった作品、それが本作「いつも二人で」なのです。
オール・ホワイト・ルックとルイ・ヴィトンのモノグラム
オードリー・ルック1 ホワイトパンツ・ルック<第五期 1965年>
- 大きめのサングラス
- 白のパンツスーツ。3つボタン
- 白のカットソー、ラウンドネック
- ルイ・ヴィトンのハンドバッグ
お互いに非難する言葉しか出なくなった冷め切った夫婦がオープニングで登場します。「消音器をつけて撃ちまくらないでくれ」と夫は妻をなじり、妻は「出会ったのが不幸の始まり?」とまで言ってしまうこの二人。もはや倦怠期を越えて、離別期を迎えようとしている二人の描写からこの物語は始まります。メルセデス・ベンツ230SLに乗り、仕立ての良いファッションに身を包むが、全然幸せそうに見えない二人。
ここで一つ言わせていただくならば、本作の60年代ファッション(半分は50年代ファッション)は実に個性的であり、その分、時代を感じてしまう部分もあります。しかし、今見るとぱっと目にはセンスが良くないと感じるだけ、当時においても先鋭化したスタイルがフィルムの中に焼き付けられていると言うことであり、それだけ60年代ファッションの本質を知る貴重な映画と言うことなのです。
それにしてもオールホワイトのスタイリングにルイ・ヴィトンを持つオードリーの姿がとてつもなく凛々しく、アンドロギュヌス的な魅力に満ち溢れています。
アップスタイルもまた魅力的なオードリー
オードリー・ルック2 女学生ルック<第一期 1954年>
- ネイビーのカーディガン
- 白のブラウス
- 女生徒のようなロングスカート
- 黒のメリージェーン
トレンチコートとオードリー
オードリー・ルック3 トレンチコート・ルック<第三期 1950年代後半>
- カーキーのトレンチコート、バーバリー65/66AW、ニー丈、エポレットあり
- クリームのタートルネックセーター、ジバンシィ65/66AW
- サルヴァトーレ・フェラガモのローファー
本作では実に多くのファッション・ブランドのアイテムが登場します。まさにバーバリーからフェラガモまで。よくスタンリー・ドーネン監督が、ジバンシィ禁止令を出したというエピソードが出ますが、実際のところ本作にも、ジバンシィは登場しています。その一つはトレンチコートの中のタートルネックのセーターにおいてです。今でも十分にカッコいい女が演出できるトレンチコートのアンサンブルです。