【イヴ サンローラン】シャンパーニュ／イヴレス（ソフィア・グロスマン）

シャンパーニュ／イヴレス

原名：Yvresse／Champagne
種類：オード・パルファム
ブランド：イヴ・サンローラン
調香師：ソフィア・グロスマン
発表年：1993年
対象性別：女性
価格：不明

「成功の美酒」＝シャンパーニュの輝き

シャンパーニュは、退廃的なサンローラン・ライフスタイルをエミュレートする快楽主義に満ちた香りです。

イヴ・サンローラン

イヴ・サンローランが1993年6月に生み出した「シャンパーニュ」は、〝成功の香り〟というキャッチコピーと共に売り出された香りでした。かつて10年前に「パリ」を生み出したソフィア・グロスマンによって調香されました。

そして、1700万ドルが欧米のマーケティング戦略のため投入され、3500万ドルもの売り上げを僅か半年であげ、ヨーロッパで3番目に売れた香水となりました。

しかし、1993年12月にこの香りは、シャンパーニュ産のスパークリングワインだけが〝シャンパーニュ〟という名称を使用することが出来るということで、訴訟され、敗訴するのでした。

そのため1996年に香りの名は「イヴ サンローラン」に変わり、更に同年「イヴレス Yvresse」（Ivresse＝陶酔、エクスタシーの意味。その頭文字をイヴのYに変えたもの）という名で販売されるようになり、1999年には完全に「シャンパーニュ」は市場から姿を消しました（香り自体は全く同じです）。

巨大なコルクとミュズレを想起させるジョエル・ディグリップによるボトルデザインがとんでもなく素敵です。

勝者を祝福し、敗者に慰めを与える香り

まさにナポレオンの名言のように、「勝者を祝福し、敗者に慰めを与える」香り。それが「シャンパーニュ」です。この香りは、その外観からしてまさに「ルイ・ロデレール クリスタル」のような威風堂々とした存在感を持っています。

そんな黄金色のボトルから香りを解き放つと、しっかりと聞こえるほどの音を立てながら、勢いよくピーチ、ネクタリン、アプリコットが泡立ち、溶け合う、フルーティーなスパークリングワインのような香りが弾け出します。

そこにミントの冷やしたシャンパンボトルのような感触とアニスの凝縮感が、複雑な味わいを連想させるように円やかに加わってゆきます。

泡立つフルーティーの後にやってくるのは、ライチの透き通るようなクリーミーさと、（往年のキャロンの香水のように）大量のカーネーションに包まれた、豊かで熟成した酵母のようなフローラルブーケです。まるでグラスの中のシャンパンをまわすように、体中にキメの細かい泡が浸透し、甘い果実と花々が優しく抱擁してくれるような、うっとりと酔わせるような熟した質感で包み込んでくれます。

この香りの素晴らしさは、そんな歓喜の後にやって来る深淵にあります。フルーツとローズ、ヴァイオレットがオークモス、ベチバー、パチョリによってシプレーの深い闇に引きずり込まれていくのを五感で感じ取ることが出来ます。

やがて、深淵の中、クリーミーなアンバー、バニラ、ベンゾイン、ココナッツが注ぎ込まれてゆき、再び優しい抱擁の世界へと返り咲いてゆくのです。この香りのローズは二度咲きします。

そして、世界で最も快適な空間で、成功の味を噛み締めるような充足感で満たされてゆくのです（たとえ今、あなたが敗者であろうとも、成功のための新しい一歩を踏み出す力を与えてくれる香りです）。

女性として生まれた喜びを全身で感じる香り

最後に、そう思う気持ちまでは誰も侵害できないので、こう断言させてください。私にとってこの香りの名は、永遠に「シャンパーニュ」です。

それはまるで『巴里のアメリカ人』（1951）のレスリー・キャロン（1931－）のように、もう全身を使って女性として生まれた喜びを満喫しているかのようなパフォーマンスを肌の上で見せてくれる香りなのです。そう、ジョージ・ガーシュウィンの旋律と共に・・・

エドモン・ルドニツカの「ロシャス ファム」から大いなる影響を受けた香りです。

香水データ

香水名：シャンパーニュ／イヴレス
原名：Yvresse／Champagne
種類：オード・パルファム
ブランド：イヴ・サンローラン
調香師：ソフィア・グロスマン
発表年：1993年
対象性別：女性
価格：不明

トップノート：ピーチ、ネクタリン、アプリコット、キャラウェイ、アニス、ミント
ミドルノート：シナモン、ライチ、ローズ、ローズ油、カーネーション、ヴァイオレット、アイリス、ジャスミン、スズラン
ラストノート：オークモス、アンバー、ベンゾイン、パチョリ、バニラ、スティラックス、シダー、ムスク、ココナッツ、ベチバー