作品名:007 ユア・アイズ・オンリー For Your Eyes Only(1981)
監督:ジョン・グレン
衣装:エリザベス・ウォーラー
出演者:ロジャー・ムーア/キャロル・ブーケ/リン=ホリー・ジョンソン/ジュリアン・グローヴァー/カサンドラ・ハリス
ムーア=ボンドが最も愛した男。Q
ジェームズ・ボンド・スタイル4 グレー・フランネルスーツ
- テーラー:ダグラス・ヘイワード
- グレーのフランネル2ピーススーツ、シングル、ノッチラペル、2つボタン
- フランク・フォスターのクリーム色のコットンドレスシャツ
- グレーのグレナディンタイ(ショーン・コネリー=ボンドのアイコニック・タイであり、シリーズ最後のグレナディンタイ)
- ブラックレザーベルト
- ブラックレザーローファー
- セイコーハイブリッド H357-5040
ボンドムービーに絶対不可欠なものとしてあげられるのが、マネーペニー(本作のロイス・マクスウェルはとても老けている)とQ(デスモンド・リュウェリン=007の笠智衆)の存在です。
そして、この二人が画面に登場するとき、ボンドは寅さんが〝とらや〟に戻ってきたときのようなリラックスした雰囲気を見せるのがお約束なのです。このお約束が存在してこその〝殺しのライセンス〟であることを、ダニエル・クレイグのニューボンドは、分かっていない節があるので、ボンドムービーとして、若干物足りなく感じるときがあります。
ボンドムービーに絶対必要なのは、大人が憧れる風光明媚なリゾート地と、秘境、ゴージャスなボンドガールの衣装、敵と会釈するボンドおじさんの余裕っぷり、そして、ボンドの子供っぽい一面を垣間見せてくれる007ファミリーとの掛け合いなのです。
それは非日常的な展開を日常にして生きているボンドの中に、突然現れるボンドの日常的な一面だからこそ素晴らしいのです。だからこそ、ボンドとQのやり取りは、マンネリであってこそ神聖なものとなるのです。ロジャー・ムーア時代のボンドムービーにはその空気がしっかりと確立されていました。
3作品連続イタリアで活躍する007
ジェームズ・ボンド・スタイル5 シアリング・ブルゾン
- シアリング・ブルゾン、外側は茶色のスエードのシープスキンで、内側はラムウール、フロントジップ、茶色のリブの袖と裾
- ブロンズブラウン・カシミアタートルネック
- ブラウンウールのトラウザー
- サイドジップのブラウンレザーブーツ
1956年に冬季オリンピックが開催され、『ピンクの豹』のメインロケ地でもあった、イタリアのコルティーナ・ダンペッツォでロケが行われました。ここに3作品連続イタリアを舞台に物語が展開することになります。そして、この後『007 カジノ・ロワイヤル』までイタリアは姿を消すことになります。
シリーズ最高峰のスーパースキーアクションへ!
ジェームズ・ボンド・スタイル6 ボグナー・スキーウェア
- ボグナー・スキーウェア、Bロゴ・ファスナー、ブルー・フロントジップ・スキージャケット
- ネイビーのVネックニット、各袖に二本と、胸元に一本の白のストライプ
- 白のタートルネック
- ネイビーのスキーパンツ
- ネイビーのレザーグローブ
- ネイビーと白ボーダーのスキーキャップ
- ガルモントのスキーブーツ
- ピエール・カルダンのスキーゴーグル
この作品でジェームズ・ボンドを演じるロジャー・ムーアも50代半ばを迎えていることもあり、リゾート・ウェアやカジュアル・ウェアを着ると洗練とは程遠い姿を露呈してしまうようになっています(本人もそのことをすごく気にしていたようです)。
しかし、そんなおじさんスキーヤーが、危なかしい雰囲気を見せながらも、魅せてくれる、雪山のスキーアクションが素晴らしいです。その撮影は、『女王陛下の007』『007 私を愛したスパイ』でスキー撮影を担当したウィリー・ボグナー(1942-)によるものです。彼はボグナー・スキーウェアのCEOでもあり、この作品のためにスキーウェアを提供していました。70歳を越えてもなおハワイの大波でスキーをするようなぶっ飛んだ男です。
ちなみに雪山でボンドを襲うオフロード・バイクは、ヤマハ・XT500でした。そして、ボブスレーのコースをスキーとオフロード・バイクが滑走するのでが、このシーンで23歳のイタリア人スタントマンが死亡しています。