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【アラン ドロン】サムライ(クリスティーヌ・ナジェル)

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©SPR Japan
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サムライ

原名:Samourai
種類:オード・トワレ
ブランド:アラン・ドロン
調香師:クリスティーヌ・ナジェル
発表年:1995年
対象性別:男性
価格:30ml/6,050円、50ml/8,250円、100ml/10,450円
公式ホームページ:サムライ

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『サムライ』への憧れ


太陽がいっぱい』『冒険者たち』『さらば友よ』などの代表作を持つフランスの映画スター、アラン・ドロン(1935-)は、10代後半に〝ディエンビエンフーの戦い〟に参加し、地獄の戦場を経験したと言われています。しかし、彼自身が、インドシナ戦争について語ることはほとんどありませんでした。

過去について多くを語らないドロンは、やがて、60年代に押しも押されぬ国際的な映画スターになりました。しかし、1968年に〝マルコヴィッチ事件〟というスキャンダルによって、一気にマフィアに近い存在であるというダークな印象を世間に与えることになるのでした。

そんな彼が、『レッド・サン』(1971)で共演してから崇拝するようになったのが〝世界のミフネ〟三船敏郎(1920-1997)でした。そして、ミフネをイメージして、自身が1967年に出演した代表作『サムライ』からその名を取った香水を売り出すことにしたのでした。

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クリスティーヌ・ナジェルの処女作


すべてのはじまりは、『サムライ』を撮影する前からアラン・ドロンが感化されていた『武士道』の精神からはじまります。この頃、ドロンのベッドルームには、ただ一本の日本刀だけが飾られていたのでした。

やがて、1971年にずっと念願だった三船敏郎と『レッド・サン』で競演することになります。そして、ダーバンのCF撮影の契約を三船プロと取り交わし、1977年に5度目の来日を果たし、三船敏郎と中華料理(芝公園の留園にて)を食べているときに、〝世界のミフネ〟をイメージした香水を作る話になったのでした。

1978年にジュネーブにて、商標会社「Alain Delon Diffusion SA」を立ち上げ、1979年にマーク・バクストンによるファースト・フレグランス「アラン ドロン プールオム」を発表したのでした。そして、時は経ち、1995年に発売したのが、この「サムライ」でした。

トゥエリー・レクールによりデザインされたボトルデザインは江戸時代の武士の裃(かみしも)をモチーフにしたものです。今やエルメスの専属調香師へと大出世を果たしたクリスティーヌ・ナジェルが最初に調香した作品でした。

フィルメニッヒ社の研究員だったクリスティーヌが、アルベルト・モリヤスが楽しそうに調香する姿に感化を受け、アロマティクス・クリエーションズ(現・シムライズ)に転職し、クロマトグラフィーの責任者として働き、ミシェル・アルメラックの下で調香を学ぶ中で、アルメラックの監修の下、生み出した香りなのです。

ちなみにブランドは2007年にアラン・ドロンの手を離れ、ラリック・グループの傘下に入り今に至ります。

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『ボトルの中の思春期』

©SPR Japan

日本では、ヨドバシカメラやドンキホーテが出している香水という有難くないイメージが先行しているこの香りは、爽やかなベルガモットからはじまり、複雑さを廃したジャスミンとローズらしきホワイトフローラルの甘やかな香りに包まれてゆきます。

すぐにピンクペッパーとシダーウッドがムスキーなサンダルウッドとひとつになり、癖のない爽やかな余韻で包み込んでくれるのです。

日本においては、「シーケーワン」以上に、香りの民主化を実現していった香りです。恐らく〝1000%合成香料で生み出された香り〟なのですが、クリスティーヌの偉大さへの道は、この香りによって合成香料の錬金術をしっかりと習得したことからはじまったと言えるでしょう。

エルメスの道は、サムライからはじまっていたという意味においても実に感慨深い香りです。『ボトルの中の思春期』。この香りを身にまとっていた中高生が、大人になりエルメスに辿り着くのです。

つまりは、黒船が到来する前の〝サムライ〟なのです。この香りがすべてだった人が、心の鎖国から解き放たれ、もはや決して省みられることはなくなる香り。素敵な言葉で飾り立てると、とんでもなく噓くさくなる空前絶後の〝1000%合成香料で生み出された香り〟です。

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香水データ

香水名:サムライ
原名:Samourai
種類:オード・トワレ
ブランド:アラン・ドロン
調香師:クリスティーヌ・ナジェル
発表年:1995年
対象性別:男性
価格:30ml/6,050円、50ml/8,250円、100ml/10,450円
公式ホームページ:サムライ


トップノート:ジャスミン、ベルガモット、ローズ
ミドルノート:レッドペッパー、シダーウッド、タラゴン(ヨモギ)
ラストノート:サンダルウッド、ベチバー、バニラ、ムスク