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オードリー・ヘプバーン

『麗しのサブリナ』Vol.5|オードリー・ヘプバーンとリトルブラックドレス

オードリー・ヘプバーン
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元祖小悪魔ルック=「リトルブラックドレス」

1953年7月に、オードリー・ヘプバーンは、パリのジバンシィのブティックにて、ユベール・ド・ジバンシィの目の前で『麗しのサブリナ』の衣装を選んでいました。その彼女の目に、1926年にココ・シャネルが発表したリトルブラックドレスからインスパイアされたブラックドレスが飛び込んできたのでした。

「〝デコルテ・バトー〟と呼んでいたドレスです」とユベールは回想します。「のちに〝デコルテ・サブリナ〟と呼ばれるようになりました。オードリーはこのネックラインを愛していました」。彼女が最後に選んだ(三つ目の)このドレスは、自分のコンプレックスである鎖骨を隠し、美しい肩のラインを強調してくれるというポイントで選ばれたものでした。ジバンシィはこのドレスに、帽子を組み合わせるとは想像もしていませんでした。

「オードリーは、いつもファッションにひねりを加えました。何か粋な、驚きを与えるものを衣服に加える人でした。3つのコスチュームを選ぶにあたって、私もアドバイスはしました。しかし、彼女は何を自分自身が求めているかよく知っていました。自分の似合うものも似合わないものも知り尽くしていました。そして、私は、ここまで私のコレクションを着こなしてくれる人なら楽しみだと考え、衣装を提供しました」。オードリーとユベールの信頼関係はこうして始まったのでした。

正面から見たLBDの麗しのシルエット。

オードリーのウエストの細さが分かるショット。

シルエットが、お人形さんみたいです。

ジバンシィが童話の中のプリンセスをイメージしてデザインしたヘッドドレス。

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サブリナのファッション6

リトルブラックドレス
  • デザイナー:ユベール・ド・ジバンシィ
  • リトルブラックドレス、ジバンシィ1953SS
  • 黒グローブ
  • リトル・プリンセス・ハット耳をほとんど覆いつくす中世風のトーク、黒のヴェールとラインストーンをちりばめたヘッドドレス、ジバンシィ1953SS
  • 黒のローヒールパンプス、レネ・マンシーニ1953SS
  • イヤリング以外に余分なアクセサリーはなし(重要なポイント!)

リトルブラックドレスの生地は、うねの入ったコットンピケであり、ウエストの絞りとフレアの対比が素晴らしいバレリーナスカートです。両肩にリボンのストラップが付き、深いVバックでボタンダウンです。フロントはホリゾンタルネックラインで、深くカーヴィーなアームホールが特徴です。

このドレスは、ジバンシィのデザインをイーディス・ヘッドが縫ったものとされています。

19世紀に生まれた男=ハンフリー・ボガート。どうしてこの時代の男には独特の色気があるのでしょうか?

ボギーとホールデンは、共に無名だった『前科者』(1939)で共演した時に仲たがいしていました。

当初ライナス役はケーリー・グラント(『シャレード』)でした。しかし、撮影開始一週間前に突如降板しました。

リトルブラックドレスの生地感がよく伝わるフォト。

深いVバックでボタンダウンです。

20代の美女は、素敵な中年男性の間でこそその輝きは増すものです。

サブリナカットの素晴らしさが分かる写真。

セットで待機するオードリー。素晴らしいスカート!

全体がはっきりと分かる写真。

私はこれを見て、キャットウーマンぽいなと感じました。

オードリーのウエストの細さが際立つLBD。

このリトルブラックドレスが、1953年SSの広告写真に使用されたときの写真。

イーディス・ヘッドがこのLBDを見て描いたデザイン画。

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サブリナのファッション7

フレンチボーイルック
  • デザイナー:イーディス・ヘッド
  • タータンチェックのシャツ。シャツのカラーを立て、袖をゆるくまくる
  • タック入り白のショートパンツ
  • エスパドリーユ

フレンチ・カジュアルの象徴のようなボーイルック。

ハイウエストのパンツルック。スタイルが良く見えます。

ビーチリゾート・ルック

腰の位置が高くないオードリーも、すごく脚が長く見えます。

まだ分かりにくいのですが、このシャツの着方がすごいのです。

シャツのボタンを締めていません。

実は、シャツのボタンを締めずに、着物のように打ち合わせで身体に巻きつけて着ています。

メンズのジャケットをシャツの上に着る。

オードリーはメンズミックスがすごく上手です。

ちなみにプライベートフォトでもオードリーはこの着方をしています。

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ビーチリゾートウェア「美少年ルック」

とても健康的なオードリーの太もも。

あの有名なサブリナパンツは、ジバンシィではなく、イーディス・ヘッドが創造したパンツです。この作品の極めて特異な点は、二人の一流のファッション・デザイナーが、一切共同作業をしなかったことが、オードリーの溢れんばかりの多面的な魅力を解き放ったところにあります。

1つの映画の中で、これほど、後世のファッション・シーンに影響を与えるスタイルが続々と登場する映画はそうそうありません。

オードリーは、チェックのシャツのボタンを留めずに、カシュクールスタイル(着物のように打ち合わせで身体に巻きつけてフィットさせるトップの着方)で着ています。このスタイルはバレエの稽古着の着方の影響から来ています。

オードリーがショートパンツを履くと、そのサブリナカットによって、少年のようなでありながら、少女のようでもあるという性の境界線を漂う振り子のような感覚に包まれます。それはまさにアンドロギュヌスの魅力です。ゆえにこのスタイルは別名「美少年ルック」とも呼ばれています。

以下、この衣装の原型となったテスト写真です。

衣装合わせの写真。前で結ぶタイプの白のコットンシャツです。

衣装合わせのフォト2.こちらは白のカシュクールです。かなりビョルン・アンドレセン・チックでアンドロギュヌスの極みです。

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ジバンシィとの友情


ファッション・アイコンとは何かを教えてくれる人。それが、オードリー・ヘプバーンです。スカートスーツを着ると洗練されたパリジェンヌになり、ドレスを着れば、上流階級の誰よりもエレガントなシンデレラになる。そして、ショートパンツを履くと、アンドロギュヌスになる。

ファッション・アイコンとは、ただやみくもにラグジュアリー・ブランドを身に付ける(ミックスする)人のことを指すのではなく、ファッションの持つ真の力を示してくれる人のことを指します。オードリーは、一着服を選ぶのに、最低1~2時間かけたと言われています。本当にファッションを愛する人は、よく思考する人でもあるのです。

だからこそ、ジバンシィの服を含めて、彼女は、撮影等で使った衣装に関しても、ギャラの中に衣装の購入も含むという契約の形で、ただで貰う事は絶対にしない人でした。

ある人が彼女に尋ねました。「あなたならジバンシィにただで服を作ってもらえるでしょ?」と。その問いに対し、オードリーはこう答えました。「ユベールは、私の大切な人です。だから私はお金を払って、彼の仕事に敬意を払いたいのです」と。

オードリーが不滅のファッション・アイコンである理由はこの人間としての誠実さゆえなのかも知れません。どんなものでも着こなす人と、そうでない人。オードリーは後者だったからこそジバンシィのミューズに成り得たのではないでしょうか。

作品データ

作品名:麗しのサブリナ Sabrina (1954)
監督:ビリー・ワイルダー
衣装:イーディス・ヘッド/ユベール・ド・ジバンシィ
出演者:オードリー・ヘプバーン/ハンフリー・ボガート/ウィリアム・ホールデン