エディター・プロフィール:圭子・スカイウォーカー
生年月日不明。性別不明。国籍日本。見た目は30代前半、身長170cmくらい。藤圭子にすごく似ている。ラグジュアリー・ファッションに対する情報の幅の広さから、恐らく現役の関係者と推測される。本人とのやり取りはメールと電話と二度っきりの会見のみ。口癖「ファッション誌はあてにならないので読まないわ」。大好きなものは「ダイアン・アーバスの写真とニーナ・シモン」、最も嫌いなものは、「SNSに夢中な女子と、プチプラ自慢する人たち」とのこと。(長谷紅記) |
20.バレンシアガとマーク・ジェイコブス
前シーズン記事 2018年春夏おすすめラグジュアリーバッグPART18<バレンシアガ>
流行の最先端を行く二つのブランド。それは最先端でありながら両極端を行くブランドでもあった。 |
バレンシアガとマーク・ジェイコブスのバッグを見れば2018年冬のバッグのトレンドが100%見えてくるのよ。それは、
- スポーティー
- ミニバッグ
- フリーハンド
- 軽快さ
の4点であり、それはまさしくトレンド以外の何者でもなくて、タイムレスではないということ。つまりファッションにおいてトレンドとは、若者にとっての楽しみであり、大人の女性にとっては息抜き程度のものにすぎない。だから私はバレンシアガとマーク・ジェイコブスのバッグを基本的におすすめしないの。
しかし、バレンシアガを語るとき避けては通れないのが、トリプルSについてよ。
それはファッション史を塗り替えた瞬間だった。
2017ー18年秋冬メンズ・コレクションにおいて、デムナ・ヴァザリアは、アレキサンダー・ワンが生み出したネオ・バレンシアガを完全に別次元のものに進化させたの。それはもしかしたら、ラグジュアリー・ストリートというパンドラの箱を開いた瞬間かもしれないわけ(ストリートブームが終焉すると、見向きもされなくなる恐れあり)。
しかし、デムナがローンチしたトリプルSという、ランニング、バスケットボール、トラックの3種のスポーツシューズをもとにデザインされ、それらを重ね合わせた分厚いソールが特徴的のこのスニーカーが現在においては、女性のファッションにおいてもトレンドであるダッドスニーカー・ブームを巻き起こすきっかけになったのよ。
エブリデイ・トートXS 159,840円 ★★★☆☆
ラグジュアリー・ストリート・ブランドの最先端を走るバレンシアガから、エブリデイ・シリーズが誕生したのは、2017年プレフォールからのこと。発売と同時に、エブリデイ・トートは、大ヒット商品になったの。このバッグは、10万円をゆうに越える価格帯だけあって、上質なカーフスキンの一枚皮で作り上げられており(レザーポーチも付属)、軽量化されてとても使いやすいものなんだけど、ひとつだけ大きな問題を抱えているのよ。
デザイン性のあるブランドロゴならまだしも、ミニマルなブランドネームロゴは、廃れやすいというファッションの不文律があるの。そして、それは大流行した分だけその反動はすごくなり、やがては誰もが知る流行遅れなブランドへと急転直下していってしまうの。
バレンシアガというラグジュアリー・ストリートの申し子には、そのブームの終焉において、大いなる衰退の時期を迎える危険性があるの。そして、そうした時期に上質なレザーで作り上げられた10万円以上するブランドネームロゴ入りのトートバッグを持ち続ける気になるだろうか?そう考えると、私はこのトートを購入する気分には到底ならないの。
それはバレンシアガの他のブランドネームロゴ入りのアイテムに対しても言えることよ。
ちなみに、バレンシアガには、2014年(アレキサンダー・ワン時代)に発売され大ブームを巻き起こしたもうひとつのバッグが存在するの。その名は、「カバス(カバ)」であり、今では凄まじい数のコピーが出回っているバッグなの。芸能人が持っていて・・・などという謳い文句でブームになったバッグに見られる現象なんだけど、ここまで偽物が出回ってしまうと、私ならもう本物を持っていても、使いたくなくなるわね。
スナップショット 43,000円~57,000円 ★★★☆☆
一方で、10代から20代の女性のハートを掴んでいるラグジュアリー・バッグが、マーク・ジェイコブスのスナップショットよ。価格帯は4万円から6万円と、この年代の女性にとっては決して安くはないバッグなんだけど、お祝いで両親や恋人、愛人に買ってもらうバッグとして、今ではサマンサ・タバサやケイト・スペードを越える人気を誇っているの。
ちなみに、ここ最近、109やOPAのブランド=リエンダ、エモダ、リップ・サービス、エゴイスト、セシル・マクビーが、恐ろしいことになっているのよ。ここまで値段を落とさないと売れないのか?というほどまで値段が落ちていて、しかも、売り場は、田舎のイオンのような崩壊状態になっているのよ。
さて、マーク・ジェイコブス個人は、1997年から2014年にかけてルイ・ヴィトンのデザイナーとしてラグジュアリー・ブランドのデザイナーとして頂点に上り詰めていたんだけど、マーク・バイ・マーク・ジェイコブスが彼の市場価値を急落させたの。これはランバン・オンブルーやシー・バイ・クロエに似た現象とも言えるわよね。
そして、2015年3月にセカンドラインのマーク・バイとマーク・ジェイコブスを統合し、2016年春夏コレクションで、完全に若い女性をターゲットに絞った価格帯で、新たなるブランドのシンボルマークである「ダブルJ」を発表したの。こうして、スナップショットが生まれ、今では、大人には完全に相手にされないブランドになってしまったのだけど、その活路を若者に向けて、見事に生き残っているわけなの。