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ボーイ シャネル|〝運命の人〟それは、重なり合いながらも同時に対立する存在

シャネル
シャネル
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ボーイ シャネル

原名:Boy Chanel
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:オリヴィエ・ポルジュクリストファー・シェルドレイク
発表年:2016年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/37,400円、200ml/66,000円
公式ホームページ:シャネル

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ボーイそれは、ココ・シャネルにとっての〝運命の人〟

©CHANEL

調香師オリヴィエ・ポルジュ。©CHANEL

私は「ボーイ シャネル」を創るとき、ユニセックス・フレグランスを創ろうとは考えませんでした。より男性的な香りを創り、それを女性が身に纏うとよりステキになる、そういう風に考えられる香りを創りたいと思いました。

それはまるでボーイフレンドのシャツを女性が着ているような・・・つまり、人生における他の多くのことと同様に、ジェンダーはそれを身につける人によって決まるのです。

オリヴィエ・ポルジュ

2007年にシャネルのプレステージ・コレクションとして「レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネル」がスタートしました。その17番目の香りとして2016年に発売されたのが「ボーイ シャネル」です。2015年にシャネルの4代目専属調香師に就任したオリヴィエ・ポルジュによるコレクション第二弾としてのアロマティック・フゼアの香りです。クリストファー・シェルドレイクも調香に参加しています。

ちなみにこのタイミングで、「レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネル」は、オード・トワレからオード・パルファムにリフォーミュラされました。

ココ・シャネル(1883-1971)にとって運命の男性であり、もっとも大切な人だったアーサー・〝ボーイ〟・カペル(1881-1919)の名を冠するアイテムをシャネル社が生み出す時、それは天に召されたココ・シャネルに対して、ガッカリさせるような代物を万に一つの確率であっても創造してはいけないという重い十字架を背負わされることになります。

©CHANEL

かつて2011年にルージュ・ココシャイン(リップスティック)#54ボーイと、そして2012年からは、現在も定番であるハンドバッグ・シリーズとしてボーイ・シャネルが販売され、どちらも大好評を得ています。

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この日ココは、もう二度と誰も愛さないと心に誓いました。

1913年に、ボーイ・カペルの援助によりシャネルは2号店をドーヴィルに出した。©CHANEL

私は、ボーイから漂う、革、馬、森、革磨き石鹸の匂いが好きだった。

ココ・シャネル

ココ・シャネルにとって、1909年のボーイ・カペルとの出会いはまさに運命の出会いでした。それはファッション・デザイナーとして自立するきっかけにもなりました。

シャネルとボーイがホーストレッキングではじめて知り合った1909年の或る日、二人は全く会話を交わしませんでした。しかし、シャネルはボーイのグリーンアイに一目惚れしていました。運命的な出会いを感じたからこそ、一言も彼に話しかけることが出来ませんでした。

シャネルが1910年にパリ1区カンボン通り21番地にオープンした「シャネル・モード」という名の帽子専門店(第1号店)に出資した人こそボーイでした。さらに1913年に、彼の出資により、週末にはパリからの訪問客で賑わうリゾート地ドーヴィルに、二号店をオープンしました(シャネルは出資してもらった資金を、後に全て完済している)。

そして1916年、初コレクションでジャージー・ドレスを発表し、シャネルは大成功を収めるのでした。1918年にボーイは、上流階級の娘と結婚するも、1919年12月22日にシャネルとのクリスマス休暇を楽しむために、彼女のもとへ向かう途中に、自動車事故で死亡しました。まだ38歳でした。

ボーイからシャネルが受けた影響は計り知れません。オススメの詩や哲学などを自ら書いたノートを贈られ、孤児院育ちのシャネルに教養とエレガンスを教えてくれたのもボーイでした。

そして、彼のハイセンスなメンズ・ウェアをヒントに、女性のファッションに対する革新の糸口を見つけました。そんなボーイとの9年間の日々は、まさにココ・シャネルにとっての覚醒の日々だったのでしょう。ボーイの死から7年経った1926年に、ボーイを憐れむようにリトルブラックドレスは誕生し、シャネルはモード界の寵児となるのでした。

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女性の肌の上に残る、愛する男性のしるし

ボーイ・カペル、1911年。ネット上での彼とシャネルと称される写真は、ほとんど間違った情報です。

ココ・シャネルのために、いつも白い花を贈っていたというボーイ・カペル。二人の名をひとまとめにしたこの香りは、レモンとグレープフルーツがアルデハイドによってシュワッときらめきながら、どこからともなくやって来るアロマティックな甘さを持つラベンダーとオークモス(最初から!)とひとまとめになるようにしてはじまります。

それはまさにシャネルがボーイに出会った瞬間に感じたような淡い煌めきと衝撃です。そこには典型的なフゼアの持つ苦味やスパイシーさはありません。

まるでボーイ・カペルの肌から漂う匂いのようにフレッシュでミンティなゼラニウムがラベンダー、クマリンと溶け込んでゆきます。一方でどこからともなくシャネルの肌から放たれる香りのように爽やかなローズ、オレンジブロッサム、そして(アーモンドのような)ヘリオトロープにサンダルウッドとバニラが溶け込み、それぞれが近寄りつつ離れつつ、フゼアとオリエンタルの境界線上を素肌の上で行きつ戻りつしてゆきます。

この微妙な甘やかさを素肌で感じることが出来るのが「ボーイ」の醍醐味なのです。やがてフゼアとオリエンタルが、まるでシャネルとボーイのようにはじめて言葉を交わすのです。つまりは花束に包まれるフゼア、もしくはクールガイの腕に抱かれるオリエンタルの香りになるのです。

そしてホワイトムスクが厳かに広がる中、クリーミーなサンダルウッドが、パウダリーなバニラに溶け込んだクマリンと、ミルキーなヘリオトロープの全てを包み込みながら、シャネルの肌の上に残るボーイの甘い余韻を、時空を越えて、私たちの肌の上に蘇らせてくれるのです。

閃光のようなはじまりから一転して、コール・ポーターの名曲と珠玉のジャズヴォーカルに満たされていくような、二人の関係を束の間の愛以上のものに高めていく、最初から最後まで存在するラベンダーの控えめなエレガンスを全身で受け止めていく贅沢な香りです。

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重なり合いながらも、同時に対立しているCCマーク(ココマーク)

ビアリッツのボーイ・カペルとココ・シャネル、1917年。

シャネルのCCマーク(ココマーク)には二つの意味があります。ひとつはココ・シャネルのCCです。そしてもうひとつの意味は、ココ・シャネルとボーイ・カペルが永遠に離れないという意味です。ちなみに重なり合いながらも、同時に対立しているのがこのCCマークのセンスの良さです。

だからこそ「ボーイ シャネル」だけがコレクションの中で、香水名とシャネルの間のスペースが接近しているのです。

父のジャック・ポルジュが、2011年に同じくラベンダーをメインに生み出した「ジャージー」と比較してみるととても面白いでしょう。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイドⅢ』で「アロマティック・フゼア」と呼び、「1880年代に合成香料の技術が一気に広まり、パーキンの合成した安価なクマリンを用いたウビガンの「フジェール ロワイヤル」が生まれなければ、今のフゼア系香水は存在しない」

「シャネルは、若者に大人のたしなみを教えようというアプローチで、フゼアの源流に立ち返った。バート・レイノルズが熊の絨毯に裸で寝そべっていた時代よりはるか昔の、フゼア本来の抑制された魅力をうまく引き出している。素晴らしい」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ボーイシャネル
原名:Boy Chanel
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:オリヴィエ・ポルジュクリストファー・シェルドレイク
発表年:2016年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/37,400円、200ml/66,000円
公式ホームページ:シャネル


トップノート:グレープフルーツ、ラベンダー、レモン
ミドルノート:ゼラニウム、オレンジブロッサム、ローズ
ラストノート:クマリン、ヘリオトロープ、サンダルウッド、バニラ、モス、ホワイトムスク