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ジェームズ・ボンド

『007/ロシアより愛をこめて』Vol.2|ジェームズ・ボンドとグレーのスーツ

ジェームズ・ボンド
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ファッションの本質は、遊び心を失わない心にある

本作においてトータルで8種類のスーツとタキシードを着たジェームズ・ボンド。埃まみれになっても、鼠の大群に襲われても、もちろんヘリコプターに襲撃されても、スーツスタイルを貫き通す愚直なエレガンス。

このシーンではカジュアルな方が戦いやすいだろ?という合理主義よりもダンディズムを優先する精神。大のオトナが時計に仕込んだワイヤーやら、アタッシュケースの秘密兵器やらに夢中になってどうするんだ?なんて言う人には、ファッションの本質は、死ぬまで理解できないでしょう。

ファッションの歴史とは、子供心をくすぐるものと洗練されたものの奇跡的な融合により生み出されてきました。秘密兵器を身につけたスーツスタイルの紳士二人が、テタンジェのシャンパンを飲むひと時。

エレガンスの本質とは何か?スパイと殺し屋のファッション。そのいかがわしさ。そう!ファッションの本質はこのいかがわしさにあるのです。

ショーン・コネリー時代のボンドムービーの魅力とは、そのセックス好きを隠さないところも含めて、いかがわしさと洗練が絶妙に同居しているところにありました。だからこそ必要でなくともジェームズ・ボンドはスーツを着ているのでした。

美女と銃とスーツがあればボンドムービーは撮れる。

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ボンドはイスタンブールで5種類のグレースーツを着ていました。

ジェームズ・ボンドは何気に左利きなのだ。

公開当時、スクリーンで、ジェームズ・ボンドがイスタンブールで5種類のスーツをチェンジしていたことが分かる人はいなかったはず。

さらにVHSで自宅で鑑賞できるようになってからも、ダークグレーとライトグレーの二種類のスーツを着ているなとしか認識できなかったはずです。

DVDとブルーレイ時代が、ファッション業界にもたらした最大の恩恵は、過去の映画の中から、ファッションの歴史を学んでいく膨大な教材が与えられたということです。

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ジェームズ・ボンドのファッション4

イスタンブール到着時のスーツ
  • テーラー:アンソニー・シンクレア
  • チャコールグレーのデュピオーニ・シルクスーツ(皺になりにくい生地なので飛行機の移動に最適)、シングル、低めの位置に2つボタン、ナローラペル、シングルベント、サイドアジャスターつきスーツパンツ
  • ターンブル&アッサー、ペールブルー・ポプリン・シャツ、ターンバック・カクテル・カフス
  • ネイビーブルーのシルクネクタイ
  • 白のリネンのポケットチーフ
  • ブラックレザー・3アイレット・プレイントウ・ダービー、ブラッチャー
  • ジェームス・ロック & カンパニーのオリーブブラウン・フェルト

本作のJBは、椅子に座ってもボタンを外さない。

スーツの全体のシルエット。シューズがとても美しい。

公開当時、額縁の裏をチェックする仕草が、少年たちの心をときめかせた。

ショーン・コネリーはこのシーンで、2つ目のボタンを留めてしまった。

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癌と闘いながら最後の仕事を全うした男の物語

本作はメキシコの名優ペドロ・アルメンダリスの遺作です。

『三人の名付親』のペドロ・アルメンダリス。

『007/ロシアより愛をこめて』から、エンドロールに〝James Bond Will Return〟の宣言が流れるようになりました。つまりこの作品からボンドムービーのシリーズ化は決定したのでした。

一方、この作品がひとりの男の人生のフィナーレを飾ったのでした。その男の名をペドロ・アルメンダリス(1912-1963)と申します。ジョン・フォード監督の西部劇『アパッチ砦』や『三人の名付親』に出演したメキシコの名優です。

撮影時、すでに末期癌に侵されていたペドロは、後に残される家族のために2週間の撮影に臨みました。いくつかのシーンでは歩くことすら出来ない状態のため、ダブルを雇い、なんとか出演シーンを撮り終えたのでした。そして、ペドロは1ヵ月後(映画公開される4ヵ月前)にピストル自殺したのでした。

この作品から約25年後にペドロの遺児ペドロ・アルメンダリス・Jrは、『007/消されたライセンス』(1989)に出演することになります。

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ジェームズ・ボンドのファッション5

イスタンブール滞在スーツ
  • テーラー:アンソニー・シンクレア
  • グレンチェックの綾織りのスーツ、シングル・ジャケット、低めの位置に2つボタン、スリムノッチラペル、シングルベント
  • ターンブル&アッサー、ペールブルー・ポプリン・シャツ、ターンバック・カクテル・カフス
  • ネイビーブルーのシルクネクタイ
  • 白のリネンのポケットチーフ
  • ブラックレザー・3アイレット・プレイントウ・ダービー、ブラッチャー

グレンチェックがよく分かる写真。

撮影時、すでに末期癌だったペドロ・アルメンダリス。

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ジェームズ・ボンドのファッション6

イスタンブール・ロマキャンプスーツ
  • テーラー:アンソニー・シンクレア
  • チャコールグレー・フランネルスーツ、シングル、低めの位置に2つボタン、ナローノッチラペル、サイドベンツ
  • ターンブル&アッサー、ペールブルー・ポプリン・シャツ、ターンバック・カクテル・カフス
  • ネイビーブルーのシルクネクタイ
  • 白のリネンのポケットチーフ
  • ブラックレザー・3アイレット・プレイントウ・ダービー、ブラッチャー

ダークグレーのスーツと、水色のシャツとネイビーブルータイの絶妙なバランス。

美しいフランネルスーツ

戦闘で白のポケットチーフが失われました。

ジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩め、ホルスターを付けたまま電話するボンドのカッコよさ。

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ジェームズ・ボンドのファッション7

イスタンブール・ラストスーツ
  • テーラー:アンソニー・シンクレア
  • グレーのグレンチェックスーツ、シングル、2つボタン、スリムノッチラペル、ダブルベンツ
  • ターンブル&アッサー、ペールブルー・ポプリン・シャツ、ターンバック・カクテル・カフス
  • ネイビーブルーのシルクネクタイ
  • 白のリネンのポケットチーフ
  • ブラックレザー・3アイレット・プレイントウ・ダービー、ブラッチャー
  • ロレックス・サブマリーナー6538
  • ジェームス・ロック & カンパニーのオリーブブラウン・フェルト
  • べっ甲のウェイファーラー・サングラス

ウェイファーラー・サングラス

グレーのグレンチェックスーツ

先のスーツと同じくこのスーツも泥だらけになります。

タチアナ・ロマノヴァと一緒に逃げるボンド。

1963年4月25日、イスタンブールにて撮影中の二人。

ロレックス・サブマリーナー6538

細いラペルのジャケットには上質な生地が必要です。

このスーツのジャケットはダブルベンツ。ベントが入るほどスーツはカジュアル寄りになります。

作品データ

作品名:007/ロシアより愛をこめて From Russia with Love (1963)
監督:テレンス・ヤング
衣装:ジョセリン・リカーズ
出演者:ショーン・コネリー/ダニエラ・ビアンキ/ロバート・ショウ/ロッテ・レーニャ