ローズプリック
原名:Rose Prick
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:ギヨーム・フラヴィニー
発表年:2020年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/53,350円
公式ホームページ:トム・フォード
大トム・フォード思想=ハッタリの美学
私の所有するプライベート・ローズ・ガーデンの香りからインスパイアされた香りです。それは人々を陶酔させるような野生の薔薇の花束の香りなのです。
トム・フォード
トム・フォードというブランドの素晴らしさ。それは、「フレグランスには、真実よりも、ファンタジーが重要なのだ」という哲学をトム・フォードが持っているからなのです。
「トム フォード プライベート ブレンド」の新作として2020年2月に発売された、「ローズプリック」も、クリエイティヴ・ディレクターのキャリン・コーリーにより生み出された、そんなトム・フォードのハッタリズムに満ちた香りです。ジボダンのギヨーム・フラヴィニーにより調香されました。
「ローズブリック」とは、「薔薇の一刺し」という意味であり、あまりにも美しい薔薇に夢中になって鼻を近づけすぎて棘に刺されるという「美しすぎるものの危険性」を連想させるネーミングなのです。
しかし、このローズにはハッタリはない。
オーキッド栽培を趣味としているトム・フォードは、確かに、本当に、広大な土壌にまずは10000匹のみみずを解き放ち、ローズガーデンを作り上げたのでした。
そして、その広大なローズガーデンで、自分が本当に心の底から、形にしたいローズの香りというものについて、とくと考えた末に生まれたのがこの香りでした。それは彼が最も愛するローズであるココロコを中心にした理想のローズの香りなのです。
つまりは、彼が服をデザインするように、調香師がパタンナーのように、トム・フォードが望むものを忠実に生み出したのがこの香りなのです。だからこそ、今回の調香師は、ネームバリューがある必要は全くなかったのです。
まさにこの香りこそ、グッチ時代→イヴ・サンローラン時代を経て、数々の名香に関わってきたトム・フォードの集大成のローズの香りなのです。
三種類のローズの違いとは?
「ローズの三重奏」が最大の売りであるこの香りに対して、当然生まれる疑問は、三種類のローズは何が違うのだろうかということです。
ちなみにこの香りのために使用されている三種類のローズは、メイローズとブルガリアン・ローズ、そして、ターキッシュ・ローズです。その違いは以下の通りです。
- メイローズ(別名センティフォリアローズ)は、グラースが産地。「100枚の花びらがある薔薇」という意味。マリー・アントワネットが愛したローズであり、キャベツのような形状が特徴。栽培の難しさゆえに生産量が少なく、世界的に最も希少価値の高いローズである。アニマリックな催淫作用がある甘い香りが特徴。
- ブルガリアン・ローズ(別名ダマスクローズ)は、ブルガリア共和国のバルカン山脈とスレドナ・ゴラ山脈の間にある「バラの谷」で採れる。別名「オスマン帝国のローズ」。世界の70%の天然香料の薔薇は、このダマスクローズ。ブルガリア産は濃厚なフルーティな香り。
- ターキッシュ・ローズ(別名ダマスクローズ)トルコ南西部にあるウスパルタ県が産地。トルコ産はジャミーな蜂蜜のような香り。
この香りは贅沢な3種類のローズが、薔薇の棘をイメージした四川山椒とジンジャーのようなウコン(ターメリック)と遭遇するところからはじまります。とても(ベリーのように)ジャミーでパウダリーな酸味の効いた濃厚さがあります。
この香りの面白さは、柔らかなサフランのスモーキーな風に舞い、フレッシュなローズがそれぞれ調和するのではなく、スパイスに翻弄されながら、それぞれの個性をクリーミーにシンクロナイズさせていくところにあります。
そんな3種類のローズにパチョリとトンカビーンが絡み合い、ムスクとトルーバルサムが温かく包み込み、酸味の代わりに、甘い果実のような香り立ちとなるのです。
それはトム・フォードのローズ・フレグランスである「カフェ ローズ」や「ノワール デ ノワール」とは明らかに違う薔薇の香りです。
香水データ
香水名:ローズプリック
原名:Rose Prick
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:ギヨーム・フラヴィニー
発表年:2020年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/53,350円
公式ホームページ:トム・フォード
トップノート:四川山椒、ウコン
ミドルノート:メイローズ、ブルガリアン・ローズ、ターキッシュ・ローズ
ラストノート:パチョリ、トンカビーン、トルーバルサム