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キリアン

【キリアン】ラブ アンド ティアーズ(カリス・ベッカー)

キリアン
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ラブ アンド ティアーズ

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Love and Tears
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:カリス・ベッカー
発表年:2010年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売

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ジャスミンが奏でる「愛と涙」

この香りは、『愛』がテーマの最終章であり、私の最もパーソナルな香りです。

私は自分の結婚はもう終わったのだ、という考えに支配されていました。しかし、新たな愛が自分の中に芽生えているということに対して、疑いなく身を任せる決意もしていたのでした。

キリアン・ヘネシー(この時、メロニーと離婚し、のちに再婚する現在の妻エリザベスとの愛に生きる決意をしていた)

キリアン・ヘネシーは2007年10月に「バイ・キリアン」(現在は「キリアン」)という名でブランド創業するにあたり、6作品からなるコレクション「ルーヴル ノワール —愛が描く甘い誘惑の世界—」を発表しました。このコレクションは、三つのテーマに分けられています。

そして、2010年に9つ目の香りが誕生しました。「ラブ アンド ティアーズ(愛と涙)」には「surrender(身を委ねて)」という副題がついています。Les Ingenues(無邪気な者たち、ポール・ヴェルレーヌの詩)のテーマで生み出された、初めて誘惑する女性のための香水です。一言で表すならlove(愛)です。ディオールのフルーティージャスミンの名香「ジャドール」を生み出したカリス・ベッカーによる調香です。

この香りは、ひとつの恋愛の終わりと新たな恋愛に身を委ねるというアイデアから生まれた香りでした。それはキリアン自身が最初の離婚を経験している最中に、別の女性を愛していたという経験を反映させた香りとも言えます。

後にキリアンから発売される「インペリアル ティー」(2014年、調香師は同じくカリス・ベッカー)もジャスミン最高峰の誉れ高い香りなのですが、カリスの作った3つのジャスミンの香りを嗅ぎ比べてみると面白い発見があるかもしれません。

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さぁ、世界一美しいジャスミンを作ってみせよう!

唯一ジャスミンの花だけが、シトラス、グリーン、フローラル、アニマリックといった無限のスペクトラムを持ちます。まだまだ多くの可能性を秘め、未知の領域を持ち、愛を捧げるに値するこの花に私は夢中です。

そして、ジャスミンだけが、私がこの香りで表現したかった「興奮を伴う愛のはじまり、未知への恐れ、そして、最終的には愛に降伏する」という感情の豊かさを表すことができる花だと思いました。

キリアン・ヘネシー

限りなく美しく徹底的に破壊しないと感じることのできない〝ジャスミンの涙〟。日常の澱んだ空気を浄化するように、きらめくようなイタリア産ベルガモットの心地よさを、獣のようなフランス産ガルバナムがその研ぎ澄まされた牙で貪るようにしてこの香りははじまります。

私は、フレグランスは常に気分を高揚させるものであるべきだと考えています。

さぁ、世界一美しいジャスミンのはじまりです。そこにはジャスミンの香りにくっついて来るティーノートは一切存在せず、インドールも一切存在しません。ただただ摘み取ったばかりのジャスミンの繊細で新鮮な美しさがそこにあるのです。

愛の終着駅にあるのは、安らぎではなく、破壊なのかもしれません。そんな獣の心をリセットするようにすぐにグリーンジャスミンと水仙が、ガルバナムをなだめる様に鮮やかなグリーンノートで包み込んでゆきます。さらにパラグアイ産プチグレンがジャスミンにいのちを吹き込んでゆきます。

そして、もひとつインド産のジャスミンアブソリュートが解き放たれます。もう二度と誰も愛することは出来やしないと考えているその心に楔は打ち込まれるのです。スズランが可憐さと甘さと新鮮さを香りに与えてゆき、ジャスミンは、再び獣の心から、人間のもっとも崇高なる心=愛情を蘇らせるように、いきいきと香りを解き放ってゆくのです。

インド産とエジプト産をはじめとする5種類のジャスミンが使用されているこの香りは、フルーティーなスペイン産オレンジブロッサム、クリーミーでトロピカルなマダガスカル産イランイランにより、恋の高揚感も生み出しながら、スティラックスとシダーの温かいウッディの余韻に優しく包み込まれてゆくのです。

この香りがとても美しいのは、ただ明るいジャスミンではなく、悲しみの涙を流し切った後に、喜びの涙を流すジャスミンという繊細さを表現したところにあります。またいつかこの喜びの涙は、悲しみの涙に変わるはずなんだという確信が、ジャスミンをより〝優しく〟輝かせるのです。

このジャスミンは、世界一優しいジャスミンの香りなのかもしれません。

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5種類のジャスミンとは


「興奮を伴う愛のはじまり、未知への恐れ、そして、最終的には愛に降伏する」ジャスミンの香りについてより詳しく分析してみましょう。初期のキリアンの香りには全香料の内訳が公表されていました。この香りの場合は、

メディテレーニアン(地中海)・ノート

  • イタリア産ベルガモット・オイル 15g
  • パラグアイ産プチグレン・オイル 5g
  • フランス産ラバンディン Orpur オイル 5g
  • ガルバナム・オイル 5g

ジャスミン・ハート

  • インド産ジャスミン・アブソリュート 80g
  • エジプト産ジャスミン Orpur オイル 40g
  • ジャスミン・ヘッドスペース 180g
  • ソーラージャスミン・アコード 190g
  • ウォーター・ジャスミン・ノート 285g

フローラル・ノート

  • コモロ産イランイラン Orpur オイル 40g
  • ラッパズイセン・アブソリュート 10g
  • オレンジ・ブロッサム・アブソリュート 20g
  • スズラン・アコード 70g

センシュアル・ノート

  • シダー・オイル 25g
  • スティラックス・オイル 10g
  • オークモス・ノート 20g

が全てなのですが、ここにセンシュアル・ノートが存在するようにこの香りは「愛」における様々な部分(始まりから終わりまで)をジャスミンを通して表現しようとしています。

それは、興奮を伴う愛のはじまり → 愛・恋を感じるときの高揚感。未知への恐れ → 愛した人・恋した人との分からぬ将来への恐れ、もしくは、その人を愛してしまうことへの恐れ。愛に降伏する → どうあがいても愛に勝てず、愛に全てを任せ、愛によって人生が揺れてしまう。

つまりは、ジャスミンのピュアな側面(シトラス)は恋の高揚感、官能的な側面(フローラル)は愛への恐れ(花は時として惑わせ毒をも持つ)、アニマリックな側面 → 愛への降伏(一瞬ためらいながら、恋の奴隷になってゆく)という流れなのです。

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香水データ

香水名:ラブ アンド ティアーズ
原名:Love and Tears
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:カリス・ベッカー
発表年:2010年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売


トップノート:ベルガモット、プチグレン、ラベンダー、ガルバナム
ミドルノート:ジャスミン、ウォーター・ジャスミン、イランイラン、水仙、オレンジ・ブロッサム、スズラン
ラストノート:シダー、スティラックス、オークモス