【連載記事④ 最終回】究極のルイ・ヴィトンのフレグランスの旅
日本人にとって、憧れのラグジュアリー・ブランドである以上に、もはや土着文化とも言えるほどに、どんな田舎の人々でさえも、その名を知り、ひとつは持っている高級品を作り出しているブランド、それがルイ・ヴィトンです。
ルイ・ヴィトンの歴史は、創業者のルイ・ヴィトン自身が、14歳で家出し、1837年にスイス国境沿いの村から2年かけて徒歩でパリに出てきたことからはじまります。そして17年間訓練を積んだトランク職人のルイ・ヴィトンが1854年にパリのヴァンドーム広場近くのヌーヴ・デ・カプシーヌ通り4番地で自身の工房を開いたことからはじまります。そして多くの人々にオーダーのトランクを提供してゆきました。
人々の旅を守るトランクを生み出すブランド、つまり〝旅のブランド〟であるルイ・ヴィトンが「オート パフューマリー」=オーダー香水のサービスををスタートしたのは、2020年11月のことでした。しかし当時、世界中にコロナウイルスが蔓延していました。
やがてパンデミックが明け、2023年10月に、日本ではじめて秋山さんご夫妻がルイ・ヴィトン表参道店で購入されました。今回、ご夫妻が日本で最初のルイ・ヴィトンのオーダー香水を購入したという事実は、1883年(明治15年)1月9日に板垣退助がパリでトランクをオーダーして以来の、ルイ・ヴィトンと日本の関わり合いにおける歴史的な出来事と言えます。
今後は2500万円~4200万円するというルイ・ヴィトンのメイド・トゥ・オーダー香水の「旅」を、日本人で唯一経験された秋山さんご夫妻のご厚意により、現地で撮影した動画の静止画を切り取らせて頂きます。最終回は、御夫人の臨場感あふれるお言葉と共に、「ルイ・ヴィトンの香りの旅」を皆様と共有出来れば幸いです。
プロローグ:『ルイ・ヴィトンの香りの旅』

右からカミーユ・キャヴァリエさん、秋山さん夫妻、間にジャック・キャヴァリエさん、秋山さんの会社の仲間である妹さんと安藤さん、主任アシスタントであるメリッサさん。

ルイ・ヴィトンの香りの聖地の入り口の前にて。
私と主人で経営している天然石サロンの従業員であり大切な仲間の二人(一人は私の妹)と共に、今回の『オーダー香水の旅』に出たのは、起業した頃から考えていた私たち4人の共通の目標を達成したことを記念して、〝サロンの守護神となる香り〟を作りたいと考えたからでした。
そんな時、ルイ・ヴィトンの表参道店で私が全面的な信頼を置いているフレグランス・スペシャリストのOさんから〝ルイ・ヴィトンのメイド・トゥ・オーダー香水〟の存在についてお聞きしました。そして「コレだ!」と感じました。
今までほとんど海外旅行の経験がなかった私たちの今回の『旅』が上手くいったのは、ルイ・ヴィトン表参道店のスタッフの皆様が、渡航前からサポートして下さったお陰です。この場を借りて感謝申し上げます。
帰国した時には、フレグランスに対してだけでなく、すべてにおいてすっかりルイ・ヴィトンの大ファンとなった私たちの『旅』は、2024年5月24日19時40分のフライトからはじまります。
北京首都国際空港乗り換えでシャルル・ド・ゴール空港に、25日早朝に到着した私たちは、その日は、ルイ・ヴィトンが手配してくださったホテル、オペラドゥービルに滞在しました。ストライキの影響もあり、グラース行きが危ぶまれたのですが、幸運にも空路を確保して頂き、明日についての軽いブリーフィングを済ませた後、はじめてのパリを堪能しました。
そして翌日より、念願のルイ・ヴィトンのオーダー香水ツアーがはじまりました。
午前9時にホテルを出て、オルリー空港に到着し、午前10時55分発の飛行機で、コート・ダジュール空港に着いたのが、12時20分でした。今回のツアーのアテンド兼通訳をつとめて下さる光村さんは、当時ルイ・ヴィトンの本社で働いているワールドトレーナーの方で、一販売員として京都の店舗からキャリアを重ね、今では日本の全販売員の方々の憧れの的である素敵な方でした。
ツアーを終え帰国した私たち4人が、何よりも感動したのは、彼女の存在に対する感謝でした。この方の存在があればこそ、ジャック・キャヴァリエと私たちの距離を近づけて下さり、一切の際限なく、心に忠実に、理想のオーダー香水について思惑することが出来たのです。
では『ルイ・ヴィトンの香りの旅』はじまります。
2024年5月25日、香りの都・グラースに到着しました。

メルセデス・ベンツのブラックのVクラス。ドライバーはUFCファイターのような、あらゆるトラブルに対処してくれそうな男性でした。
コート・ダジュール空港から出た瞬間、主人はずっと「南国のようだ!沖縄のリゾートのようだ!」と大はしゃぎしていました。たしかに一日中どんよりしていたパリとはうって変わって快晴の下、ヤシの木がそこらかしこに植えられており、とても開放的で、はじめての本格的な海外旅行に緊張していた私の心もリラックスしていきました。
そして空港でスタンバイしてくれていたルイ・ヴィトン手配のメルセデスのバンに乗りました。グラースに向かう途中で、ルイ・ヴィトンの方で手配してくださっていたお城と地中海が見える三ツ星のレストランでランチを食べました。
コートダジュールの空気を胸いっぱいに吸い込んでいるだけで、香水を愛する私の心は揺り動かされます。どうして?それはこの自然の大地の香りこそが、フランスの現代香水の〝生みの親〟である著名な調香師達の嗅覚に影響を与えていた〝フレンチ香水の母〟であると実感したからでした。
そんなことをバンの窓を開放して、コートダジュールの風を浴びながら、考えているうちに、午後14時過ぎに、香りの都・グラースに到着しました。約20年間、香水を愛してきた私の夢の一つである、〝グラースに行く〟という夢が叶えられた瞬間でした。

グラース市街地を少しだけ探索しました。天気は快晴でした。

右手に大きなカジノがあります。当時、大改修工事が行われていました。
グラースに着いた時、ドライバーさんが気を利かせて下さり、街の中心辺りでバンを止めて、少しだけ探索することになりました。自然が豊かな街です。町全体がローズ祭りのディスプレイで賑やかだったのですが、毎年行われているこの祭りは終わったばかりでした。
ですが、春の花の香りと大地の恵みを運んでくれているような、うっとりするほど美しい大自然の息吹を感じることが出来ました。コートダジュールの中でもグラースはまた全然違った香りがします。それは京都のような歴史のある街が持つ、一種の風格と趣が加わっているからでしょうか。ひとつひとつの香りが五感を覚醒させる何かを、グラースで強く感じました。
ふたたびバンに乗り、ツール・ド・フランスのテレビ中継でよく出て来そうな、山の傾斜に沿ってぐるぐる回る急な坂道を登っていくと、塀越しに、溢れんばかりのメイローズが咲き誇っている大邸宅が目に飛び込んできました。
私は座席から飛び上がるように「ここだ!」と叫んでしまったことを記憶しています。同席していた4人がびっくりした程でした。それほど見事なメイローズが咲き誇っていたのでした。まさにこの瞬間、私のグラースははじまりました。

私がメイローズが咲き誇る大邸宅を見つけた瞬間の動画の静止画。
すると光村さんが「到着しました」と仰いました。すぐに目の前に、ルイ・ヴィトンのモノグラム・フラワーが描かれた漆黒の門扉が現れました。ジャック・キャヴァリエ氏のアトリエがある「レ・フォンテーヌ・パルフュメ」に到着しました。
門が開いたとき男性が歩いてきました。その姿を見て私は思わず「ジャック!」と叫んでしまいました。実際はジャックによく似た男性で、この建物の管理責任者の男性の方でした。
代官山の私たちのサロンからここまで約1万キロの距離があると聞いて感慨深いものがありました。
そう!ついに、夢にまで見ていたルイ・ヴィトンの香りの聖地にやって来たんだ!そして明日、ジャック・キャヴァリエさんと対面することになるんだ!と考えているだけで、ドキドキしてきました。

「レ・フォンテーヌ・パルフュメ」の門扉には、ルイ・ヴィトンの二代目当主のジョルジュ・ヴィトンが1896年にデザインした星型のモノグラム・フラワーが描かれています。

門扉が開くと、建物と門と迎賓館が見えます。遠くに見えるこの男性をジャックさんと私は間違えてしまいました。
「レ・フォンテーヌ・パルフュメ」にある迎賓館

門扉を入るとその右手に大きなヴィラ=迎賓館があります。

真ん中にあるひとつの門を潜るとアトリエが見えてきます。

振り返ると入り口と左手にヴィラが見えます。

一般開放されていない迎賓館である超高級ヴィラで滞在させて頂きました。
グラースの大自然の中に佇むルイ・ヴィトンの香りの聖地に、遂に到着しました。渡航前にルイ・ヴィトンの公式動画を見て、ずっとずっとこの地を夢にまで見てきました。
「ついに来たね。なんか夢のような場所だよね」と主人が感慨深げに私に耳打ちしました。私たち四人は、かなり前から、それぞれルイ・ヴィトンのフレグランスを愛用するようになっていたのですが、今、視界に飛び込む柑橘類、花々、木々、そしてグラースの大気、そのすべてを全身で満喫している中で、それぞれ身に纏っているルイ・ヴィトンのフレグランスが、これほど美しく香り立つ瞬間を感じたことはありませんでした。
「レ・フォンテーヌ・パルフュメ」に到着して一番最初に感動した事についてその夜四人で語り合ったこと。それはそれぞれのルイ・ヴィトンのフレグランスが、まるで生まれ故郷に戻ってきたように、想像を絶する、美しい物語を、素肌を透かして心に染み入るように広がっている感覚に満たされていることです。
グラースの地でグラース生まれのフレグランスを身に纏うことを、香水愛好家の皆様にお勧めします。真の意味での〝香りの持つ魔法〟を感じることが出来ると思います。

一ジャック・キャヴァリエさんの意見が多く取り入れられているヴィラの内装。

円卓の上に、摘み立てのグラースローズがいけられています。

グラースローズの香りの美しさをたっぷりと堪能しました。

ヴィラの一階は、店舗では感じることが出来ない、ルイ・ヴィトンの世界観が凝縮された空間です。

グラースローズが描かれた壁紙がとても素敵でした。

一階にふたつのリビングルームがありました。

対面の壁には、金箔のオブジェがありました。右手の階段を上がるとダイニングキッチンがありました。

ここから外に出ると門扉の前に出ることになります。
ヴィラに足を踏み入れた瞬間、私たちはルイ・ヴィトンのイベントで見ていた数々のホーム・ファニチャーが生活スペースに見事に同化している、すべてルイ・ヴィトン製の最高級のラグジュアリー空間に圧倒されることになりました。一般公開されていない迎賓館であるということだけあって、すべてが絵になる空間がそこに広がっていました。
そしてその場で、ルイ・ヴィトンからふたつのプレゼントを頂きました。ヴィヴィエンヌとトランクが描かれたレザー製のノートブックとヌメ革のラゲージタグでした。
ちなみにルイ・ヴィトンのラゲージタグは、お店ごとにホットスタンピングが押されており、翌々日に、ヴァンドームのお店のホットスタンピングをして頂く事になりました。
後日、妹がこのラゲージタグをつけて都内某所のルイ・ヴィトン・ブティックを訪問した時、スタッフの一人がびっくりして色々尋ねてこられたとのことです。

レザー製のメモブック。ライトピンクとライトブルーの二種類でした。

全く何も加工されていない自然な牛革であるヌメ革で作られたラゲージタグ。
ヴィラにある四つの客室のひとつ〝スズラン〟と名付けられたお部屋

一階にあるもうひとつのリビングルームは、開放的ではなく、プライベート感があり客室に繋がっています。壁に埋め込まれているトランク・モチーフのアートがありました。

照明、ソファ、リビングチェア、ミラーが見事に調和しています。

別の角度から見ると、〝スズラン〟と書かれたドアの存在が分かります。
一階にもうひとつ宿泊者だけのプライベートなムード漂うリビングルームがありました。ヴィラには全部で4つの客室がありました。それぞれの部屋に〝スズラン〟〝ジンジャー〟〝ジャスミン〟〝オレンジ・フラワー〟の名前がついていました。
それぞれの部屋が名前に合わせたコンセプトで作られており、一切かぶらないルイ・ヴィトン製のファニチャーで統一されていました。
まるでルイ・ヴィトンの路面店でハイジュエリーやエキゾチックレザーのご案内をして下さるときに通して頂けるVIPルームのような、洗練されたルイ・ヴィトンのインテリアに包まれた空間の中に、24時間浸ることが出来るかなり贅沢なひと時が過ごせました。

〝スズラン〟のお部屋。こちらのドアは、リビングルームに繋がっています。

とても変わったデザインのルームテーブルが備え付けられています。

実際は優しいグリーンの壁でした。

ベッドの傍にルイ・ヴィトンのキャンドルが置かれていました。
午後19時にルイ・ヴィトンが手配して下さっている三ツ星レストランでディナーを頂く前に、宿泊するお部屋を案内して頂きました。
まずひとつめは〝スズラン〟の名が付けられたお部屋です。ドアを開けたと同時に、素晴らしいラベンダーの香りが広がり、優しいグリーンを基調とした内装の素晴らしさを引き立てていました。
そしてベッドの隣のサイドテーブルの上に、かつて店舗でも販売されていたというルイ・ヴィトンの「パフュームド キャンドル」が置かれていました。あらゆる場所にこのキャンドルが置かれており、たっぷりと堪能させて頂きました。

©LOUIS VUITTON

©LOUIS VUITTON

©LOUIS VUITTON

©LOUIS VUITTON

©LOUIS VUITTON

©LOUIS VUITTON
憧れのワードローブトランク

第二の客室のドアには、〝ジンジャー〟のボタニカルアートとその名が描かれていました。

「ジンジャー」と名付けられたお部屋の個性的な照明。
二階に上がると〝ジンジャー〟と名付けられたお部屋がありました。先程と全く違う部屋の雰囲気でした。こちらは全体的に温かいムードが漂うお部屋で、私たち夫婦はこちらに滞在することにしました。
そして三階に上がってゆきます。頭上の照明が星が散っているようなデザインでとても印象的でした(線香花火のようでもありました)。

二階から三階に上がる階段の頭上にある照明が、星が散っているようなアールデコ調でした。

〝ジャスミン〟のボタニカルアートとその名が描かれているお部屋に入ります。

アンティークのワードローブトランクが設置された世界で唯一の客室です。

シックなソファとテーブルの下に、ジャスミンの刺繍が施されたじゅうたんが敷かれています。

自宅にひとつ置きたいと真剣に考えた、ワードローブトランク。

違う角度から見た〝ジャスミン〟ルーム。

石張りの壁とシャワールームに通じる壁には…

壁紙にジャスミンが描かれています。これは一階に描かれていたメイローズと同じスタイルのボタニカルアートでした。

とにかくヴィラのすべての照明が、ひとつひとつ違った凝ったデザインでした。

このお部屋だけ石張りの壁でした。

このお部屋の窓から見えるグラースの景色。眼下にアトリエが望めます。
〝ジャスミン〟と名付けられたお部屋が特に素晴らしく、石張りの壁と、壁に描かれたジャスミンのボタニカルアートもさるものながら、何よりも私が感動したのは、タイタニックの時代のアンティークのトランクで作ったワードローブトランクが部屋に設置されていることでした。
一点ものなのですが、購入するとしたら○千万円なのではないでしょうか。妹がこの部屋に滞在することになりました。
ルイ・ヴィトンのお店のようなお部屋〝オレンジ・フラワー〟

〝オレンジ・フラワー〟と名付けられたお部屋のドアに描かれたボタニカル・アート。

四つ目のお部屋は、ルイ・ヴィトンのお店のような作りでした。

ベッドの両サイドに設置されているランプが素敵でした。

近くでランプを見てみるとこんな感じです。砂漠の民が使いそうなノマドなデザインでした。

こちらの室内には、リビングルームのようにルイ・ヴィトンの数々の小物が展示されていました。

『L’audacieux』というタイトルのルイ・ヴィトンの伝記本が置いてありました。322ページのかなり重厚な本でした。

ルイ・ヴィトンのプレートが置いてありました。絨毯の柄も素敵でした。

先程のお部屋とは正反対の方角から見える、窓から見えるグラースのの景色が南フランス全開でした。

こちらのお部屋のシャワーと洗面台が一番広々としていました。
同じ三階に、もうひとつのお部屋がありました。こちらのドアには〝オレンジ・フラワー〟という名が描かれていました。ルイ・ヴィトンのオブジェ・ノマド コレクションが展示されており、最も身近にルイ・ヴィトンのエスプリを感じることが出来るお部屋だと思いました。
特にベッドの左右に備え付けられているランプが砂漠の民のキャンプのようなムードを感じさせてくれ、とてもロマンチックでした。この頃になると、光村さんと私たちはすべてに圧倒されていて、言葉が出なくなっていました。
無言で五人で立ちすくみ、目が合った瞬間「すべてがすごくて、もう言葉にならないですね」と誰からともなく口にした言葉が印象的でした。

ダイニングキッチンには、ワインセラーも完備されておりました。
最後に中二階にあるダイニングキッチンに案内して頂きました。シャンパンやワインも〝すべて飲んでください〟と説明されました。このキッチンで早朝、ミシュランシェフにより朝食ビュッフェが作られ、さらに、ジャック・キャヴァリエさんと共に食べるランチのために違うミシュランシェフが手配されるとのことでした。
とにかくフランスは食事が素晴らしい!これだけは間違いありません。
念願のルイ・ヴィトンの噴水を見ることが出来ました。

ヴィラとアトリエの間のスペースにあるガーデンテーブルとガーデンソファ。

そこらかしこに植えられているオレンジの木には果実が実っていました。

そして、シトロン。芳醇な匂いを放ってくれていました。

ヴィラを出るとまず最初に目に飛び込んでくるアトリエの全景。

思わずアトリエの前の芝生に横たわり、草原の輝きに溺れました。

妹も天然の芝生とグラースの太陽の光を満喫していました。

アトリエの右手の小路を進んでいくと、有名なルイ・ヴィトンの噴水がありました。

噴水は、1640年に作られました。
初日、「レ・フォンテーヌ・パルフュメ」は、私たち四人と光村さんで貸し切り状態でした。クローズされているアトリエ以外すべての敷地内の探索を許され、ずっと念願だったルイ・ヴィトンの噴水を見ることが出来ました。
かの地で私が強く感じたのは、ただ単に、ZOOMで日本から、グラースにいる調香師と会話し、自分たちのための香水を作ってもらうのと、このグラースという香りの聖地を肌で感じて、一日じっくり過ごした後で、香りのコンサルテーションを受けることの大きな違いです。
この日は、各自の部屋割りを終えた後、ルイ・ヴィトンが手配してくれたグラースのはずれにある三ツ星レストランでディナーを食べました。そして夢のような一日を、贅沢なルイ・ヴィトンの迎賓館と共に過ごすことが出来ました。
いよいよ、ジャック・キャヴァリエさんと初対面する日。

ヴィラに到着して二日目の朝、写真を撮っている二人。奥に見えるのが「レ・フォンテーヌ・パルフュメ」です。朝食のテーブルには、オレンジジュースとマンゴージュースが置かれていました。

ダマン・リュミエールのコフレ カルマンから好みのティーバッグを選ぶことが出来ました。

朝食のビュッフェ。チーズとハムとスモークサーモンが並んでいました。

朝食ビュッフェのメニューです。ミシュラン・ガイドに載っている『Lou Pinatou』が提供していると書いてあります。

チーズとハム、スモークサーモンが、日本で味わったことのない新鮮さと美味しさでした。

ホールミルク(普通のミルク)、ゴートミルク、アーモンドミルク、オーツミルクの四種類のミルク。

妹が食べたオムレツとアボカドです。

私は大好物なエッグベネディクトをお願いしました。
ヴィラ二日目。コートダジュールの5月の朝は肌寒いとのことなので、もし寒かったら朝食はリビングルームで食べる予定でした。しかし、無事快晴となり、中庭のガーデンテーブルで食べることになりました。
グラースの大自然の中で、鳥の囀りを聴きながら食べるミシュランシェフによる朝食バッフェは、格別でした。この時、ジャック・キャヴァリエさんの主任アシスタントのメリッサさんが出勤して来て、光村さんと何か打ち合わせしていました。主人が私に「ジャックに一歩ずつ近づいてるね」と再び耳打ちしてきたので、一気に緊張してしまいました。
想像してみてください。私たち香水愛好家にとって、ジャック・キャヴァリエさんと会えるということがどういうことかを。嬉しさと同じくらい、不思議な畏れ多い感覚が襲ってきました。
光村さんのアドバイスで興味深かったのは、メリッサさんから〝ジャックはすごく話し好きで、ずっと永遠に話し続けられる人なので、朝食を食べた後に、荷造りをしておいた方が、ニースからパリに戻る飛行機に乗り遅れなくて済むだろう〟ということでした。
朝食の会話の中で、光村さんからお聞きした、ルイ・ヴィトンのアート・オブ・パッキングのお話がとても印象深かったです。私たちにとってこの方は、天使のような方でした。