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ジバンシィ

【ジバンシィ】ランテルディ オードパルファム(アン・フリッポ/ドミニク・ロピオン/ファニー・バル)

ジバンシィ
©Givenchy Beauty
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ランテルディ オードパルファム

原名:L’Interdit Eau de Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:ジバンシィ
調香師:アン・フリッポ、ドミニク・ロピオン、ファニー・バル
発表年:2018年
対象性別:女性
価格:35ml/12,100円、50ml/15,510円、80ml/18,480円、100ml/21,230円
公式ホームページ:ジバンシィ

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オリジナルはオードリーが愛した香りでした。

1958年に、ハリウッド女優がはじめて香水の広告に現れました。©Givenchy Beauty

ユベール・ド・ジバンシィオードリー・ヘプバーンの関係は、『麗しのサブリナ』によって生まれた衝撃的な出会いから、以後彼女の『ティファニーで朝食を』をはじめとするほとんどの主演作の衣裳を手がけ、1993年のオードリーの葬儀においては、ユベール自身が棺の担ぎ手になるほどの兄と妹のような関係でした。

オードリー・ヘプバーンとユベール・ド・ジバンシィが1950年代のファッション・シーンを席巻している真っ只中の1957年に、ジバンシィより「ランテルディ」という名の香りが発売されました。

それはシャネルの「No.5」の影響を強く感じさせる、パウダリーでスパイシーなフローラルアルデヒドの香りで、ニナ・リッチの「レールデュタン」を1948年に生み出したフランシス・ファブロンにより調香されました。

元々、1954年に、ユベールがオードリー・ヘプバーンのために作らせた香りをオードリーに嗅がせたところ、甚く気に入り、商品化することを「禁じた(Mais je vous l’interdis !)」ため、ついに3年後に商品化が認められた時に「ランテルディ(禁止)」と名づけられたという伝説が生まれました。

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オードリー・ヘプバーンの『ランテルディ神話』

©Givenchy Beauty

何かを禁止すると子供はすぐにやりたがることを思い浮かべたのです。ですから、『禁止』と名づけてみようと思いました。

ユベール・ド・ジバンシィ

オードリーが発売を禁じたという伝説は、本当の話ではなかったのですが、この香りの広告にオードリー・ヘプバーンが登場したことにより、ハリウッド女優が歴史上はじめて香水の広告に現れた瞬間となりました。

私が、香水ランテルディをローンチし、オードリーをイメージキャラに使ったときも、彼女はお金を受け取ろうとしませんでした。

ユベール・ド・ジバンシィ

『麗しのサブリナ』においてジバンシィのクレジットが出なかったことに対する恩返しの機会がやってきたとばかりに、オードリーは「ランテルディ」の広告(1958年、バート・スターンにより撮影された)に無償で協力しました。

ユベールは何度もそれは公平ではないとギャランティーの支払いを希望したが、オードリーは「サブリナで示してくれたあなたの寛大な態度にはとても感謝してるの」とだけ答え、受け取りを拒絶するのでした。

以後、常にジバンシィのコレクションには駆けつけ、毎回市場価格で洋服類(香水も含む)を購入していたのでした。

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クレア・ワイト・ケラーの指揮の下、新たなる命を与えられた『禁止』

©Givenchy Beauty

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私の調香師としてのキャリアはジバンシィからはじまりました。そして、今、このフレグランスは、ジバンシィの精神の究極です。

ドミニク・ロピオン

ジーン・セバーグ、ウィンザー公爵夫人、若き日のエリザベス女王とジャクリーン・ケネディも夢中になったこの香りはやがて1990年代前半に廃盤となり、その後続品として、1993年に「ランテルディⅡ」が発売されました。

そして、2002年に復刻し(ジャン・ギシャールオリビエ・ギロティンにより)、2007年に50周年の復刻版として、オレンジフラワー、ホワイトローズ、ジャスミン、ヘリオトロープが強調されたものが発売されました。

そんな魅力的な逸話に満ちた「ランテルディ」が61年ぶりに、21世紀バージョンとして、2017年3月にリカルド・ティッシの後を継ぎアーティスティック・ディレクターに就任したクレア・ワイト・ケラー(メゾン初の女性の主任デザイナーであり、メーガン・マークルのウエディングドレスを作った)の指揮の下、2018年9月に完全リニューアルされました。

クレアが「ジバンシィの新しい責任者になると分かったとき、私は女性の新しいビジョンを創造したいと思いました」という思いを込めて生み出された、フローラル・ウッディの香りは、アン・フリッポドミニク・ロピオンファニー・バルによって調香されました。

21世紀「ランテルディ」のコンセプトは、自分の中で禁止していたライン、もしくは今まで知らなかった『禁断』を越えて新しい自分を手に入れるスリルです。

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ストロベリーとオレンジ・ブロッサムとチューベローズの香り

©Givenchy Beauty

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オレンジ・ブロッサムは私のお気に入りの天然成分のひとつかもしれません。この香りで、最も輝かしいものから最も神秘的で官能的なものまで、オレンジ・ブロッサムの貴重な側面をすべて探求する機会を得ました。

配合にはオレンジ・ブロッサムの 4 つの異なる性質、つまりコンクリート、フラクション、ネロリオイル、アブソリュートが含まれています。フラクションはこの香り専用に作られました。自分の希望に応じて独自の材料を作り上げることができるのは、ジバンシィのようなブランドだけが提供できるチャンスです。

アン・フリッポ

ジバンシィのスタイル、大胆な美しさ、時代を超えたエレガンスを体現するために、私たちはオレンジ・ブロッサムを選びました。オレンジ・ブロッサムには、様々な側面があり、最高の官能性、明るい輝き、または軽い新鮮さを表現できる、ユニークで複雑な花です。

この多面的な花の周りに、ジバンシィクチュールの精神にのっとった、明るく象徴的な白い花のブーケを作りました。しかし、ブランドの大胆さを体現するために、大胆なベチバーと力強いアンダーグラウンド ウッディアコードでコントラストをつけました。その結果、女性らしい美しさと大胆な前衛性を表現するコントラストのあるフレグランスが生まれました。

ドミニク・ロピオン

「ランテルディ」の恐ろしさは、『ティファニーで朝食を』をリメイクしても、決してオードリー・ヘプバーンの呪縛から逃れられないように、オードリーのイメージから逃れられない点にあります。そのため、どうしてもキャンペーン・イメージはのっぺりしたものとなってしまいます。

この香りの不幸なところは、まさに安易なリメイクだと受け止められやすいところにあります。しかし、香り自体は、オードリーの存在さえ忘れることが出来れば、とても魅力的です。

リトルブラックドレスを着たあなたが、賞賛の眼差しを浴びるようにスパークリングする洋ナシとストロベリーのきらめきを受け止め、チェリーカラーのリップが艶やかに色めく情景から「禁止命令の解除」ははじまります。この香りのチェリーは、魔性の甘酸っぱさよりも、温められたベリーリキュールのようなみずみずしさを漂わせています。

すぐに、妖艶なチューベローズではなく、透き通るような上品なチューベローズが、清らかな若い肉体を侵食するように、流れる水のようなアンブロキシドに洗われ、キャラメルの甘さに愛でられながら、素肌に到来してゆきます。そこに、ジャスミンとオレンジ・ブロッサムが加わり、うっとりするようなクリーミーな甘い輝きに満たされてゆきます。

やがて、パチョリとベチバーが、静やかだったチェリーの妖艶さと心の闇を表に引きずり出すように、フルーツパチョリの余韻で、女としての情念を、とことんまで甘やかすように、優しさで包み込んでくれます。

この香りの奇抜さは、アンダーグラウンドのウッディアコードから生み出されています。非常に明るい白い花のブーケと、より暗く力強いベチバーの香りを対比させるのは大胆な試みでした。この対比から、このフレグランスの大胆な美しさが生まれます。

ファニー・バル

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ジバンシィの価値は、超えられない過去にある。

©Givenchy Beauty

人間の精神は、きわめて驚くべき禁止命令にさらされている。それは人間が人間自身を絶えず恐れているから、そうなるのだ。

「エロティシズム」 ジョルジュ・バタイユ

この香りには、オリジナルの香りの中枢を担った、アルデハイドは失われ、ピーチのトップノート、アイリス、ヴァイオレット、水仙、スズラン、ローズのミドルノートが失われています(特にアルデハイドとパウダリーなアイリスの喪失が決定的)。

2005年にオーレリアン・ギシャールにより、再調香された時には、かろうじて存在していた「ランテルディ」の翼は全てもぎ取られたのでした。

結果的に、オードリー・ヘプバーンのリアルな存在感を、現在の女性たちの身に振りかけてくれるというとてつもない野心を叶えてくれることはありませんが、なんとなくオードリー・ヘプバーンに憧れるような、ゆるい空気感は確かにあります。

キャンペーン・モデルには、『ドラゴン・タトゥーの女』『キャロル』のアメリカ人女優ルーニー・マーラ(1985-、この女優の表情は何かに怯えているようです)が起用されました。そして、撮影監督を『キャロル』の監督トッド・ヘインズがつとめました。この映像のムードが、そのままこの香りのイメージを伝えてくれているようです。

やはり本物のオードリーを超えることは並大抵ではなく、ジバンシィの価値は、超えられない過去にあることを教えてくれるのです。そして、もう一つだけ確かなのは、オードリー・ヘプバーンが21世紀に蘇える必要はないのです。

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香水データ

香水名:ランテルディ オードパルファム
原名:L’Interdit Eau de Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:ジバンシィ
調香師:アン・フリッポ、ドミニク・ロピオン、ファニー・バル
発表年:2018年
対象性別:女性
価格:35ml/12,100円、50ml/15,510円、80ml/18,480円、100ml/21,230円
公式ホームページ:ジバンシィ


トップノート:ベルガモット、洋ナシ、チェリー
ミドルノート:チューベローズ、オレンジ・ブロッサム、ジャスミン・サンバック
ラストノート:パチョリ、ベチバー、アンブロキシド、キャラメル、バニラ