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ケンゾー

【ケンゾー】ケンゾー ジャングル エレファント(ドミニク・ロピオン/ジャン・ルイ・シュザック)

ケンゾー
©KENZO PARFUMS
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ケンゾー ジャングル エレファント

原名:Kenzo Jungle L’Elephant
種類:オード・パルファム
ブランド:ケンゾー KENZO
調香師:ドミニク・ロピオン、ジャン・ルイ・シュザック
発表年:1996年
対象性別:女性
価格:不明

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高田賢三とジャングル・ジャップの1970年

©︎ 装苑 1972年3月号

©︎装苑 1972年1月号

きゅうくつな服は好きでない。あまり、かしこまった服も嫌ですね。遊べる服、楽しい服……素材も、木綿とかウールとか綿とか、できるだけ自然なものを使って、軽くて着心地のよい衣服、幸福な服を作るのが僕の願いです。

高田賢三(1989年)

2022年よりNIGOがクリエイティブ・ディレクターをつとめるファッション・ブランド、KENZOの歴史は、高田賢三(1939-2020)が、男子にも門戸を開いたばかりの文化服装学院を卒業後、1964年に船旅で単身パリに向かうことからはじまりました。

そしてパリで経験を積み、1970年にギャルリ・ヴィヴィエンヌにブティック「ジャングル・ジャップ」をオープンし、日本人としてパリに初めて出店したデザイナーとなりました。同年、ランウェイショーを行い、着物スリーブのプルオーバーを発表し、ヨーロッパでセンセーショナルな存在となりました。

このショーの衣服のための資金がほとんどなかったため、欲しい生地が手に入らなかったので、蚤の市でいくつか買い、日本にも戻り、木綿やシルクを買い集めました。それらを新鮮でシンプル、若々しいスタイルで裁断し、格子柄や花柄、ストライプやチェックをミックスしました。

民族衣装は、キモノもそうですが、ほとんど全部が四角い半面と直線カットの単純な組み合わせでできている。だれにも合うように服を大きく作って、からだを解放している。このことを知り、目から鱗でした。

高田賢三

立体裁断が基本のパリ・モードに、着物の幾何学的な形に由来する〝隠す美しさ〟を持ち込み、さらに木綿を素材に、レイヤードとオーバーサイズという概念を持ち込みました。そして後に、ヒッピー・ファッションを明るく上品なものへと転生させたフォークロア旋風の火付け役となるのでした。

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1978年に「キング・コング」で大失敗したKENZO

高田賢三、1970年 ©︎ 岩田弘行

アンリ・ルソーの『夢(The Dream)』 1910年。

高田賢三の香水に対する挑戦は、1978年からはじまりました。この年「キングコング」というバナナの香りがする香水を発表するも、まったく売れず、すぐに廃盤となりました。

1987年にケンゾー・パルファムが創設され(初代CEO兼クリエイティブ・ディレクターはピエール・ブロック、1999年に退任)、1993年にLVMH傘下に入り、1996年に、新体制の下、はじめて生み出されたのが「ケンゾー ジャングル エレファント」でした(ちなみにこの香りの4年後に発売された「フラワー バイ ケンゾー」からパルファム部門は一新されました)。

〝ジャングルの女神〟をイメージしたオリエンタル・スパイシーの香りは、ジャン・ルイ・シュザックドミニク・ロピオンにより調香されました。この香りの名前の〝ジャングル〟とは、高田賢三の最初のブティック「ジャングル・ジャップ」から採られました。

この香りのイメージはブティックのコンセプトである、アンリ・ルソーの『夢(The Dream)』です。このジャングルのイメージに、世紀末的なサイバージャングルの要素もミックスしたイメージで、この香りは生み出されました。

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マンゴーとスパイスボムが生み出す〝ジャングルの女神〟の香り

田辺あゆみ ©KENZO PARFUMS

テクノミュージックにインスパイアされたのです。彼らはビルに入った瞬間に香りがするような、パワフルな香水を求めていました。そして彼らのオフィスは5階にありました。

ドミニク・ロピオン

26歳の日本人の青年が、一ヶ月かけて船旅でパリ上陸を果たした時、最初に見た絵が、アンリ・ルソーが死の間際に描いた『夢(The Dream)』でした。ジャングルの中で、裸の女性が、ゾウ、ライオン、ヘビなどの動物を見守るその〝ジャングルの女神〟をボトルに封印したこの香りは、マンダリン・オレンジの爆発と共に弾けるクミンとクローブのアニマリックなスパイス・ボムからはじまります。

すぐに果実が薫る(=プレノール)、風に乗り、ジューシーなマンゴーが、秘めやかに咲くガーデニアとジャスミン、チューベローズ、イランイランの南国の花びらの上に、果汁を滴らせ、パウダリーな輝きを与えてゆくのです。

この香りの素晴らしいところは、最初から最後まで、終わりなくインドのスパイス(カルダモンを中心に、シナモン、キャラウェイなど)が寄せては返し、アンバーとひとまとめに、花蜜のようなアニマリックさを伴うスパイシー・オリエンタルのムードを生み出していくところにあります。かつて賢三がパリに向かう船旅で衝撃を受け、生涯脳裏に焼き付いて離れなかったというボンベイがそこにあるのです。

ときおり現れるパリのパティスリーから流れてきたようなヘリオトロープとバニラ、リコリスの香ばしくて甘い香りが、(砂糖漬けされたプラムのような)フルーティなスパイシー・オリエンタルに、魅惑のよろめきを与えていきます。

やがてクリーミーなサンダルウッドとパチョリ、カシュメランが溶け込み、インセンスのような酔わせる温かな余韻にすべては満たされてゆくのです。

KENZOにとってジャングルの王はゾウであるという、黄金のゾウが印象的なボトル・デザインは、ジョエル・ディグリップによるものです。ちなみに広告キャンペーン・モデルは、日本人としてはじめてパリのモデルエージェンシー〝エリート〟に所属していた田辺あゆみさんでした。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「透明感のあるフルーティなシダー・オリエンタルというスタイルは、「フェミニテ デュ ボワ」が最初。「ドルチェ ヴィータ」のコンセプトはクラシカルな調和で、資生堂のスマートなモダニズムもディオールの高級感もかなぐり捨て、クローブなどのスパイスをふんだんに使い、フルーツが気持ちを高揚させるなんとも楽しい作品だ。」

「フルーツのベースは人気の高いウルソール酸。「ココ」のような香水にわずかなレーズン香を加えるため、何十年もの間、少量ながら使われていた。ケンゾージャングルはそれを思うがままに注ぎ込んでいる。騒々しいが活気あふれる香り。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ケンゾー ジャングル エレファント
原名:Kenzo Jungle L’Elephant
種類:オード・パルファム
ブランド:ケンゾー KENZO
調香師:ドミニク・ロピオン、ジャン・ルイ・シュザック
発表年:1996年
対象性別:女性
価格:不明


トップノート:クローブ、クミン、マンダリン・オレンジ
ミドルノート:カルダモン、キャラウェイ、リコリス、マンゴー、イランイラン、ヘリオトロープ、ガーデニア
ラストノート:バニラ、アンバー、パチョリ