【007/ロシアより愛をこめて】
From Russia with Love 100万ドルの低予算で作られた第一作目『007/ドクター・ノオ』の世界的な大ヒット(60倍以上の売り上げをあげる)を受けて、翌年2倍の予算をかけて製作された007シリーズ第二弾の本作は、ジョン・F・ケネディも絶賛したイアン・フレミングの原作に忠実に作られました(そして、JFKが最後に見た映画)。
まだボンド・カーは登場しないのですが、本作より、Q(デスモンド・リュウェリン)が登場することになります。ブロンドヘアの屈強の殺し屋との格闘、殺し屋の秘密兵器が殺人時計や殺人靴、ヘリコプター、ボートチェイスといった娯楽要素が倍増され、更なるボンド・ファンの拡大に寄与した作品です。ちなみに、ダニエル・クレイグのボンドが目指したボンド像がここに存在します。
『007危機一発』の題名(水野晴郎が考案)で1964年4月25日に日本で初公開され、前作『007は殺しの番号』の配給収入の4倍の収入を上げます。しかし、1972年のリバイバル公開時から『007/ロシアより愛をこめて』に題名は改められ今に至ります。
あらすじ
ショーン・コネリー扮する初代ボンドも、ロバート・ショウが演じたレッド・グラントというシリーズ屈指の好敵手に恵まれ、世界中の青少年、淑女、男性が憧れるダンディズムを発散するに至りました。本作で初めて秘密結社スペクターの No.1 ブロフェルドが登場します。この世界征服を企む秘密結社というコンセプトもまた世界中の青少年を夢中にした理由のひとつでした。
そして、もう一人特筆すべきは、史上最高のボンドガールという呼び声が高いダニエラ・ビアンキの存在です。極めて、タイムレスな美を発散するこの女性は、彼女を見た観客が恋せずにはいられない愛らしい魅力に包まれていました。彼女の存在があればこそ、この後のボンドガールの役割が明確になったのでした。
忘れてはならないのが、マット・モンローの主題歌です。この作品より、ボンドムービーの主題歌は話題を呼ぶことになるのでした。本作は1963年の世界興行収入で第1位となり、日本においても翌年公開され、前作の4倍の興行収入を上げ、いよいよ007ブームが日本全土にも吹き荒れることになるのでした。
ちなみに日本公開当時の題名は『007/危機一発』でした(1972年のリバイバル公開より、現在のタイトルに変更された)。
ドクター・ノオの野望を阻止された秘密結社スペクターは、英国のMi6の秘密諜報部員ジェームズ・ボンドの抹殺を誓い、元ソ連情報部のクレップ大佐(ロッテ・レーニャ)主導で一大作戦を立案させました。そのために選抜された史上最強の殺し屋レッド・グラント(ロバート・ショウ)と、ボンドを釣り上げる餌として暗号解読器「レクター」をソ連の情報員タチアナ・ロマノヴァ伍長(ダニエラ・ビアンキ)を騙し、奪還させ、イギリス亡命を偽装させることにしました。
タチアナの亡命を助力するためにイスタンブールに飛んだボンド。そして、苦心の末に、「レクター」を手に入れ、タチアナと共にオリエント急行に乗車した二人の後を追うように、殺し屋レッド・グラントもまた乗車していたのでした。さぁ、ボンド君、我らスペクターが何重にも張り巡らせた包囲網を君はかわせるだろうか?
ファッション・シーンに与えた影響
1963年に公開され世界規模のスパイブームをいよいよ本格的なものとした『007/ロシアより愛をこめて』が、ファッション・シーンに与えた影響は、以下の二点でした。
- グレースーツの魅力がたっぷりつまっている。登場人物のほとんど全員がグレースーツ
- タチアナ・カットと呼ばれるスタイリッシュ・ショートボブ
具体的なファッション・シーンにおける影響力よりも、この作品は、男性にとって、ジェームズ・ボンドが永遠のスタイル・アイコンであることを決定付け、女性にとっては、ダニエラ・ビアンキの存在が、ボンドガールは女性にとっての永遠の憧れであることを明確にした作品でした。
作品データ
作品名:007/ロシアより愛をこめて From Russia with Love (1963)
監督:テレンス・ヤング
衣装:ジョセリン・リカーズ
出演者:ショーン・コネリー/ダニエラ・ビアンキ/ロバート・ショウ/ロッテ・レーニャ