究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
カイエデモード香水図鑑より感謝申し上げます|2025年8月23日

2025年8月21日~22日終日に渡りご寄付を募らせて頂きました。日本の香水文化を豊かにしていくお手伝いを微力ながらしていきたいというカイエデモードの活動に対し、多くの方々の賛同を頂き、心より感謝申し上げます。併せて改めて、今までご支援頂いている皆様にも、この場にて感謝申し上げます。

詳細ページへ

【アムアージュ】フィグメント マン(アニック・メナード)

アムアージュ
©AMOUAGE
アムアージュ
この記事は約6分で読めます。

フィグメント マン

原名:Figment Man
種類:オード・パルファム
ブランド:アムアージュ
調香師:アニック・メナード
発表年:2017年
対象性別:男性
価格:不明

スポンサーリンク

ブータンの〝シャングリラ〟をテーマにした〝香りの理想郷〟

©AMOUAGE

クリストファー・チョン ©AMOUAGE

「フィグメント」は、私の想像の中のブータンを表現した香りです。幻想でも現実でもない、それは人生の強烈な美しさを形作る断片から構成される、嗅覚のホログラムです。

この香りは、アンティークのエナメル加工を施したオペラグラスを通して時空を超えて鑑賞される、最も完璧なオペラとして、私の想像の中に現れました。花の刺繍が施されたシルク糸で豊かに飾られた舞台の上で、それは私にとって命を吹き込まれ、徐々に繊細で神聖な庭園へと変化していくのです。

クリストファー・チョン

オマーン帝国から誕生した高級香水ブランド・アムアージュが世界的なブランドになったのは、2007年にクリエイティブ・ディレクターに就任したクリストファー・チョン(元々バリトン歌手)の手腕によるものでした(2019年5月1日に辞任)。

2017年7月に『ポートレイツ・オブ・ライフ』シリーズの第二部 第三章にあたる「フィグメント ウーマン」と「フィグメント マン」というペア・フレグランスをプロデュースしました。世界一幸福な国と呼ばれるブータンを主題にした香りです。

「フィグメント マン」は、オリエンタルウッディの香りとしてアニック・メナードにより調香されました。ちなみに「フィグメント ウーマン」はカリーネ・ヴィンチョン・スペナードロシー・ピオットにより調香されました。

スポンサーリンク

雪山の頂から密林の湿った大地まで、愛で空が落ちてくる香り

タクツァン僧院

©Harper’s Bazaar India

ブータンのホログラム表現、つまり私の心と想像力がブータンをどのように捉えたかからインスピレーションを得ました。サンダルウッドを主要成分として使用しました。私にとってサンダルウッドは最もクリアで、スピリチュアルで、透明感のある素材だからです。最高のサンダルウッドはインド産ですが、絶滅危惧種であるため、次善の策としてスリランカ産を使用しています。クリーミーなアンダートーンと滑らかな質感が特徴です。

ブータンへの私のイメージを表現したかったので、レモンとピンクペッパーで始まります。とても清潔で透明感のある香りで、まるで霧のような香りが立ち込め、輝くサンダルウッドと家の建設に用いられる石の豊かさが香り立ち、やがてパチョリが大地の豊かさへと誘います。

クリストファー・チョン

ブータンと言えば、ジェームズ・ヒルトンの世界的なベストセラー『失われた地平線』(1933)で描かれた理想郷シャングリラです。ちなみに東京駅のすぐ傍にある「シャングリ・ラ ホテル 東京」を擁する香港の高級ホテルチェーンのシャングリ・ラ・ホテルズ&リゾーツの名前は、ここからつけられたものです。

〝想像の産物、作り事、虚構〟という名のこの香りは、息を吞むような〝香りの理想郷〟を、クリストファー・チョンが、21世紀最後の魔女であるアニック・メナードと共に創り出した〝シャングリラ・フレグランス〟です。

この香りについてクリストファーは、〝旅行が好きで、あらゆる文化を受け入れる人〟に向けて作られた香りであると表明しています。

超現実から架空の楽園への扉を開くように、スプレーをひと吹きした瞬間、エアリーなピンクペッパーの爽快感と共に、この世のものとは思えないひんやりしたグリーンレモンと清らかにバラ色にピリッと甘やかなゼラニウムの〝虹と雪のハーモニー〟に満たされてゆきます。

すぐにシベットとジャコウネコのムスクのようなアニマリックな香りと大地の香りが、最後まではっきりと感じられるところが、この香りにブータンが持つ険しい山々の頂の澄み渡る高地の空気と、麓の森の湿った大地のコントラストを感じさせてくれる〝キモまたはクサミ〟となります。

一面、壮大なる白銀の世界に圧倒されるように、冷たさが広がる中、艶やかに色めくベンゾインと深く艶やかなガイアックウッド、そしてスモーキーなフランキンセンスとレザーのようなラブダナムの香りが漂ってきます。

やがて視界は一気に開け、エアリーでフレッシュな白銀の世界から一転して、燦燦と太陽が大地を温める、スパイシーでアーシィーなパチョリを中心に、インドールの効いたジャスミンとクリーミーなサンダルウッドと湿った土と森林が香るペトリコールのようなベチバーがすべてを呑み込んでゆくのです。

スポンサーリンク

墓地に埋葬されたあなたがゾンビになって蘇るような〝不死身の香り〟

ブータンの雪山

プナカ・ゾン

端的に言うと「フィグメント」は私の想像力から生まれています。私はこれまでかなり旅をし、たくさんの場所を見てきました。しかしまだ訪れていない、夢にまで見ている場所が一つあります。それは幸福の国としても知られるブータンです。

もしかしたら、現実では私が想像する美しさが台無しになってしまうのではないかと恐れているから、訪れたくもないのかもしれません。旅に加えて、オペラも私の情熱です。そこで、この二つの世界が交わる場面を想像します。

それは中東のどこかにあるオペラの舞台から始まり、舞台は私をブータンへと連れて行きます。私の想像上のブータンです。そこには、古代の刺繍が飛び交い、重なり合い、絵のように美しい刺繍の庭園を創り出す、驚くほど美しい世界が広がっています。こうして「フィグメント」が誕生するのです。

クリストファー・チョン

ブルガリの「ブラック」で〝大気汚染の香り〟をひとつの香りのアートへと昇華させたメナード様が、ルラボの「ガイアック 10」の〝香りの昭和枯れすすき〟を経て、ついに到達した〝地球への愛〟を全身で受け止めていくのです。

この湿った大地とピートとカビ臭く苔むした匂いする大自然の中には、しっかりと動物との共存が謳われているのです。あまりにも個性的で唯一無二すぎて、すみやかに廃盤(2023年に)になってしまった〝早すぎた香水〟です。

ある意味、ヨーロッパの古びた墓地に埋葬されたあなたがゾンビとなって蘇るような、土の中から生まれるような不思議な感覚で包み込んでくれる〝不死身の香り〟とも言えます。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:フィグメント マン
原名:Figment Man
種類:オード・パルファム
ブランド:アムアージュ
調香師:アニック・メナード
発表年:2017年
対象性別:男性
価格:不明


トップノート:ゼラニウム、レモン、ピンクペッパー
ミドルノート:アニマルノート、ベチバー、サンダルウッド
ラストノート:アーシーノート、ラブダナム、ガイアックウッド