ファンタスマゴリー
原名:Fantasmagory
種類:エクストレ・ドゥ・パルファン
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2025年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/86,900円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン

「レ・ゼクストレ コレクション」=究極のルイ・ヴィトンの香り

©LOUIS VUITTON / Florian Joy
バニラは、私たちの記憶に直接語りかける香りであるため、常に香りのキーノートとして使われてきました。文化を超えて、ビスケットの味や甘さを通して、私たちを子供時代へと結びつけます。現代人は、あの心地よく優しい香りを真に求めているのです。
ブルボン種ではなくタヒチ種のバニラを使用した理由は、より繊細で複雑な香りで、ベルベットのような、まるでケーキのような質感で、母が牛乳を沸騰させる際に浸み込ませたバニラのさやの香りを思い出させてくれるからです。
低温冷凍した後、CO2抽出を行っているので、バニラのさやから最も純粋で自然由来の香りを引き出すことが出来ます。この工程により、原料のフローラルな香りとグルマンな香りの両方が保たれ、ピエール・エルメのマカロンとクレーム・アングレーズを掛け合わせたような味わいが生み出されているのです。
ジャック・キャヴァリエ
ルイ・ヴィトンがジャック・キャヴァリエを専属調香師にしたのは、2012年1月のことでした。そして、2016年9月15日、約70年ぶりにルイ・ヴィトンの香水「レ パルファン ルイ ヴィトン」が発売されることになりました。
それから5年の月日が流れ、ルイ・ヴィトンとキャヴァリエが、5周年の節目にあたり、新たなる船出として2021年10月7日に最高級コレクションである「レ・ゼクストレ コレクション」を発表したのでした。
それは30%の賦香率(香料の濃度)というパルファンの濃度の越えたエクストレ・ドゥ・パルファンを、点付けでなく、スプレー仕様で生み出した画期的な香りでした(ちなみにパルファン ド コローニュは12%、通常ラインは15%)。
エクストレをスプレー仕様にするために、キャヴァリエは30年間の調香師としてのキャリアを全て注ぎ込み、肌との相性が良い天然香料を厳選し、ブレンドしました。そして、肌の上で、新たなる生命の息遣いを生み出すように、濃度の高い香料を使用しながら〝蝶のように舞い、蜂のように刺す〟つまりは、「持続性があるにも関わらず、強くなく儚げな印象さえ覚えるくらいに、軽やかで柔らかく、そして穏やかな香り」を考案したのでした。
香りがはじめて現代アートの領域に踏み込んだ〝究極のルイ・ヴィトンの香り〟とも言えるこの5種類の香りは、通常のルイ・ヴィトンの香水(100ml 42,900円)の約2倍の81,400円の価格がつけられていました(発売開始当時の価格です)。
そんな〝究極のコレクション〟の第七弾の香り「ファンタスマゴリー」が2025年10月16日に発売されました。〝fantasmagory〟はある種の造語で〝18世紀末に幻灯機を用いた幽霊ショーやイルミネーションショー〟という意味があります。
ガラスの帆船に乗って、ルイ・ヴィトンの幻想の香りの旅へ

フォンダシオン・ルイ・ヴィトン © Fondation Louis Vuitton / Iwan Baan

©LOUIS VUITTON
「レ・ゼクストレ コレクション」という〝究極のルイ・ヴィトンの香り〟を理解するために必ず知っておかなければならないこと。それはフランク・ゲーリーのデザインにより、2014年10月に開館したフォンダシオン・ルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン財団美術館)という巨大建造物についてです。
ガラス3600枚を使用したというこの〝空に浮かぶガラスの帆船〟こそが、このコレクションのインスピレーションの最大の源なのです。そして、あなたはこの〝ガラスの帆船〟に飛び乗り、ルイ・ヴィトンが生み出す空想の旅へと出発するのです。
それは、それまでの香水の調香における常識を飛び越え、「トップノート、ミドル(ハート)ノート、ラスト(ベース)ノートをなくすことで、各香調の真髄を浮かび上がらせた」(ジャック・キャヴァリエ談)香りなのです。
この香りのヴィジュアルが必ず浮遊しているのは、〝空に浮かぶガラスの帆船〟から見た幻想の香りだからです。そして、世界中のブティックにおいて並びが決まっているのも、この香りにはれっきとした物語が存在するからなのです。つまり〝空に浮かぶ空想の船〟の旅は、左から右に進行してゆくのです。
世界中に、恋愛、世界紀行、東洋の神秘、大自然をテーマにした香りは沢山あるのですが、意外なことに、幻想的な世界観をテーマにした香りはなかなかありません。このコレクションは、そんな幻想的な世界観をテーマとして取り上げた画期的な香りです。
「ステラー タイムズ」でひとつの幻想の旅を終えたあなたが、次の新たなる幻想の旅の扉を開ける香りとして6番目の香り「ミリアド」を経て、さらに新しい幻想の旅=ファンタスティック・ヴォヤージュに乗り出すのです。
ピエール・エルメのマカロンとクレーム・アングレーズを掛け合わせたような味わい

©LOUIS VUITTON / Florian Joy

©LOUIS VUITTON / Florian Joy

©LOUIS VUITTON / Florian Joy
レ・ゼクストレの香りの根底にある考え方は、伝統的なトップノート、ハートノート、ベースノートではなく、独自の構成で、多くの場合、強調された一つの成分、この場合はバニラを基調としているということです。
ほんの少しのアーモンドエキスがクリーミーさと柔らかさを高め、ジンジャーの意外なアクセントがバニラの甘さを抑え、爽やかな柑橘系の香りに仕上げています。
肌にスプレーしてから約1時間後、ジンジャーの香りが本格的に感じられ、唐突にスパイシーな香りが立ち上ります。香りが最高潮に達するのは約3時間後。香りが落ち着き、温かく、レザーのような、そして魅力的な香りへと変化します。
「ファンタスマゴリー」は、部屋の向こう側からでも感じられるような香りではありませんが、一日中肌にぴったりとフィットします。
ジャック・キャヴァリエ
かつてルイ・ヴィトンには「コントロモワ」というバニラの香りが存在しました。とても人気のあった香りなのですがあまりに希少価値の高い香料を使用していた為、安定した供給が不可能となり廃盤となってしまいました。
ルイ・ヴィトンからバニラの香りが消えた後も、ルイ・ヴィトンのフレグランスを愛する人々は、LVのモノグラムが刻印されたバニラの香りを身に纏いたいと願っていました。そんな願いを叶える形で生み出されたのが、この「ファンタスマゴリー」です。
バニラビーンズの全体の生産量のわずか1割ほどとされ、希少価値の高い品種であるタヒチ種バニラ(パプアニューギニア産)が使用されているだけでなく、さや全体から採取した成分を、二酸化炭素抽出を行う前に低温冷凍することで、 限りなくピュアな香りを実現しています。
最初に結論から入ると、バニラ・フレグランスの究極形態とも言える香りです。もう一つの究極形態がフランシス・クルジャンが極秘裏に生み出した「ドゥーブル ヴァニーユ」がラム酒を感じさせるバニラとするならば、こちらはシャンパンのように泡立つバニラの決定版なのです。
太陽の光が降り注ぐように、スプレーを吹きかけた瞬間からフレッシュに発泡する二酸化炭素抽出したジンジャーと、スパイシーなアニスのニュアンスがあるタヒチ種バニラの輝きを浴びるような感覚からこの香りははじまります。ジンジャーを用いることで、バニラ特有の濃厚さを際立たせる、シャープで樹脂のような温かさを醸し出してゆきます。
すぐにパウダリーに甘やかなイタリア産アーモンドとクリーミーなアマレットの酔わせるコクのある甘さが、ほのかなフローラルのニュアンスとひとまとめになりながら、タヒチ種バニラ特有の複雑な魅力へと昇華してゆきます。
やがてスエードのようなレザーの香りが幻想的に重なり合い、シルキーでエアリーな、夢のようにエレガントな極上のバニラが、光の輪のようななめらかな輝きでやさしく満たしてくれます。
とても素晴らしいのは弾けるようにではなく、ゆっくりと円やかに泡立つバニラの感触を全身で受け止めているような、ラグジュアリーな贅沢な静けさを感じることが出来るところです。
香水データ
香水名:ファンタスマゴリー
原名:Fantasmagory
種類:エクストレ・ドゥ・パルファン
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2025年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/86,900円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン

トップノート:アニス、ジンジャー
ミドルノート:アーモンド、フラワーノート
ラストノート:バニラ、レザー

