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カイエデモード香水図鑑を応援する|2025年5月30日~31日終日

2025年夏に9年目を迎えるカイエデモード香水図鑑。このたび聖地調査が完了し、5月より東京・横浜・名古屋・大阪・京都・神戸の約100か所の『香水超聖地ガイド』の更新を行っております(6月中に完成予定)。さらに、4月末より、これからの日本の香水業界を動かしていく25人のキーパーソンのインタビュー記事『フレグランス・アイコン・インタビューズ』を公開させて頂いております。

この大いなる活動にあたり、2025年5月30日~31日終日にあたりご寄付を募らせて頂きます。

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【ディオール】ディオール オム パルファン(フランシス・クルジャン)

クリスチャン・ディオール
©DIORBEAUTY
クリスチャン・ディオール
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ディオール オム パルファン

原名:Dior Homme Parfum
種類:パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2025年
対象性別:男性
価格:50ml/17,050円、75ml/20,460円
公式ホームページ:ディオール

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21世紀はじめにエディ・スリマンがディオール・オムを起こす。

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私の香水は、大胆で力強く、それでいてとてもシンプルなことで知られています。ボトルに込められたメッセージが、とてもシンプルに伝わる香水が好きなのです。もしかしたら、それは私の本来の性格から来るものかもしれないのですが、25年前にニューヨークで働いていた時に学んだことでもあります。

アメリカでは、要点を絞って、自分の売り込み方をしっかり理解し、すぐにメッセージを伝えなければなりません。フランスのように、待つ時間なんてありません。とにかく、すぐに行動に移さなければならないんです。

フランシス・クルジャン(以下すべての引用は彼からのもの)

1995年から2004年にかけてディオールのパルファム部門のグローバル・マーケティング・ディレクターだったサビーナ・ベッリは、1999年に「ジャドール」旋風を起こし、ふたたびディオールが、アメリカ市場を席巻することに成功しました。

その勢いの中、「デューン プールオム」が1997年に果たせなかった、メンズ・フレグランスの覇権へ再挑戦したのが、2001年に発売された「ハイヤー」でした。しかし、期待していた成功を収めることは出来ませんでした。

あまり知られていないのですが、2001年(2001-2002秋冬のパリコレクションから)よりクリスチャン・ディオール初のメンズ・ライン、ディオール・オムをスタートさせたエディ・スリマンが「ハイヤー」に深く関わっていました。

彼は元々1997年にイヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュのメンズラインのクリエイティブディレクターに抜擢されるも、2000年にイヴ・サンローランがグッチ・グループに買収され、ディオールに移籍することになりました。

ディオール・オムが社会現象と言えるほどの大旋風を巻き起こし、2003年夏に3年間の契約延長をし、メンズ・フレグランスのクリエイティブ・ディレクターも兼任することになりました。

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まずはオリジナルの『ディオール オム革命』のおさらいから。

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かくして「ハイヤー」に引き続きエディ・スリマンが関わった香りが、ディオール・ラ・コ レクシオン・プリヴェの「ボア ダルジャン」、「オー ノワール」、「コロン ブランシュ」の3つのユニセックスの香りでした。

そして、この延長線上に、2005年に生み出されたディオール・オム初のメンズ・フレグランスが「ディオール オム」でした。それはエディが調香界の若き貴公子オリヴィエ・ポルジュとタッグを組み「21世紀に新たに付け加えられた男性にとってのエレガンスの最後のアイテムとしてのコロンの一提案」として創造されました(IFFにより製造された)。

アイリスを男性用フレグランスのために使用すべく、シャネルのNo.19からヒントを得た画期的な香りであり、アイリスの女性らしさとベチバーの男性らしさが巧みにブレンドされています。まさにメンズ・フレグランスにフローラル旋風を巻き起こすきっかけになりました。

それは、それまでメンズ・フレグランスにおけるフローラル(この香りまで10のフレグランスしか存在しない)と言えば、ラベンダーとローズしかなかったフローラルにおける「第三の男」が誕生した、ゲームチェンジの瞬間でした。

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2004年に選ばれなかった男が生み出す〝新しいディオール オム〟

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アイリス パリダは、厳格な特性を持つ神秘的で扱いが難しい花です。崇高で近寄り難く、格好良さの中に反抗的な面を持ち、どことなく捉え難いディオールの男性像にも通じます。新たな香水の創作にあたり、私はアイリスを花から根まで全体的に捉えるというアイデアに取り組みました。アイリスは、繊細な花びらがつく1本の美しい茎をもつように見えながら、実際は力強い地下茎に支えられており、私はそれを力強い香りの〝背骨〟として思い描きました。

そのセンシュアルで意志の強い香りは、まるでチョコレートとも言えるようなほのかなカフェインの香りがします。類い稀な品質のトスカーナ産アイリス パリダ バターにより、繊細さと力強さのコントラストを極限まで高めることができました。パウダリーな柔らかさとアンバーベースの力強さを組み合わせることで、〝心を奪うディオール オム〟が完成しました。

イタリア・フィレンツェのアイリス・パリダが使用されています。この希少で贅沢な根茎を得るために、3年の栽培期間と、さらに3年の乾燥を必要とします。乾燥された根茎は粉末にし、水蒸気蒸留により最低20時間蒸気にさらされます。蒸留後、抽出されたエッセンシャルオイルを冷却し凝固させ、“ バター”と呼ばれるワックス状ペーストが生まれます。

しかし、オリジナルの「ディオール オム」は、2011年のリニューアルと2020年のリニューアルを経て「ディオール オム」の背骨とも言えるアイリスがなぜか取り除かれていました。一方で、2014年に発売された「ディオール オム パルファン」には、アイリスとレザーが残っていました。

そんな流れを汲み、二代目調香師フランシス・クルジャンは、「ディオール オム」20周年をセレブレートする形で、はじめて「ディオール オム」を手掛けることになりました。かくして2025年1月24日に「ディオール オム パルファン」で発売されました。アイリスはそのまま存在しますが、レザーは取り除かれ、グルマンアンバーが強く香るように変更されています。

ちなみにクルジャンはかつて2004年に「ディオール オム」のコンペで、オリヴィエ・ポルジュに負けた苦い経験がありました。

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香りのテーマは〝偶然の出会いの物語=アイリス×アンバーウッド〟

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男性的なアイリスの繊細さと力強さのコントラストを極限まで高めていくディオール オム。この特徴的な骨格を出発点に、クラシックな構造を再解釈し、パウダリーな柔らかさとアンバーベースの力強さを組み合わせることで、魅惑的なシルエットを再デザインしました。

空に向かって力強く空高くそびえる高層ビルのように、優美な豊かさと響き渡る力強い存在感を放つ、コンクリートとガラスから浮かび上がるような、センシュアルな豊かさと神秘的な花のオーラを解き放ってくれます。

偶然の出会いの物語〟がテーマであるこの香りは、柔らかくなめらかなアイリスが、パウダリーにフローラルの官能美を広がらせていくようにしてはじまります。男性の素肌の上に重なり合う愛する女性のくちづけのような、リップスティックを思わせる繊細な愛の花の香りに満たされていくようです。

そしてすぐに猛々しくもクリーミースパイシーなアンバーウッドがバニラとクマリンと混ざり合いながら、躍動する甘さと塩辛さを溶け込ませ、アイリスに華やかでエレガントな男性美の輝きを与えてゆきます。

ベチバーとパチョリにより、アイリスがほのかにコーヒーやチョコレートを思わせる薫りを漂わせているのですが、ウッディさを抑えたこのほのかな余韻が、素肌とぶつかり合う時、得も言えぬ香りの奥行きを感じさせてくれるのです。

やがてすべてがひとまとめになり、ガラスの建物のような、そしてウイスキーグラスのような、クリスタルの煌めくシックな甘い透明感へと移り変わってゆきます。

ディオール・メンズのタキシードラインにインスパイアされた、ブラックラッカーが優雅さを添える、角張ったシルエットのボトルデザインがとても印象的です。

2011年から「ディオール オム」のキャンペーン・モデルをつとめている映画スター、ロバート・パティンソンが新しいバットマンとなり、38歳になり、成熟した男の魅力を放ちながら、ニューヨークの街を駆け抜けます。今回も同じく香りのキャッチコピーは「I’m Your Man」です。

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香水データ

香水名:ディオール オム パルファン
原名:Dior Homme Parfum
種類:パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2025年
対象性別:男性
価格:50ml/17,050円、75ml/20,460円
公式ホームページ:ディオール


トップノート:アイリス
ミドルノート:アンバー
ラストノート:パチョリ、ベチバー