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ルイ・ヴィトン

【ルイ ヴィトン】クール バタン(ジャック・キャヴァリエ)

ルイ・ヴィトン
©LOUIS VUITTON
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クール バタン

原名:Cœur Battant
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2019年
対象性別:女性
価格:100ml/45,100円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン

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ルイ・ヴィトン香水復活三周年を記念する〝集大成の香り〟

©LOUIS VUITTON

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2016年9月に、7つの香りによって70年ぶりに復活したルイ・ヴィトンのフレグランスのコレクション「レ パルファン ルイ ヴィトン」から、三周年記念作品として発売された第10弾の香り「クール バタン」は、ルイ・ヴィトンの専属調香師ジャック・キャヴァリエにより調香されました。

「クール バタン」とは、フランス語で〝(胸の)鼓動、高鳴り〟という意味です。ルイ・ヴィトンのアンバサダーを務めるエマ・ストーン(2016年に『ラ・ラ・ランド』でアカデミー主演女優賞を受賞)を迎え、大々的なキャンペーンが行われました。

シプレフローラルのこの香りにより、このコレクションのコンセプトである「70年の時を経て、蘇えるルイ・ヴィトンの香りの旅」が、ついにエンディングを迎えることになるのでした。恋に疲れた「女ひとり旅」シリーズも、ここに、新たなる恋を手にし、大団円となったのでした。

私はしばしば新しいバランスを見つけ出すために、不均等な香りの組み合わせを模索します。なぜなら、あまりにバランスが取れすぎていると、どの香りも目立たなくなるからです。それはまるで絵画のようなものです。すべてが完璧すぎると、そこからは感情は消え失せてしまうのです。どんな犠牲を払おうとも私がルイ・ヴィトンの香りの中に求めるのは、常に感情だけなのです。

ジャック・キャヴァリエ

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ワンプッシュ毎に、あなたの地球の鼓動を感じることが出来る香り

©LOUIS VUITTON

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ルイ・ヴィトンで使用しているパチョリは、25年前に調香師が使用していたパチョリとは異なります。 今ではトップノートなしでパチョリ精油をデザインできるようになりました。 精油の真ん中の部分だけを残すことができます。 パチョリ精油は好きなようにカットできます。 非常に高価なため、これを行っているブランドはそれほど多くありません。

「クール バタン」では特定の品質のパチョリを使用していますが、これは「ミル フー」に使用しているパチョリとは異なります。

ジャック・キャヴァリエ

アーネスト・ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』の有名な名句〝しかし、あなたは地球が動くのを感じたか?〟この言葉をワンプッシュするたびに実感することが出来る香り、それが「クール バタン」です。目的地を定めずに、感情の赴くままに出発する〝風まかせの旅〟の香りとも言えます。

突然炎のごとく、押し寄せる果蜜の香り、それは高い糖度と滑らかな果肉、芳醇な香りにより「洋ナシの貴婦人」と呼ばれるル レクチェ(日本国内では新潟県が産地)の果汁が、寄せては返す感情の波のように素肌の上に引き伸ばされていく感覚からはじまります。それはまるで新たなる恋のときめきに〝高鳴る心〟から押し寄せてくる情熱の息吹のようです。

洋ナシとの相性が抜群な天然の植物性ムスクであるアンブレット・シードがそこに溶け込むことにより、二つがひとつになるようなめくるめく恍惚感に包まれてゆきます。

続けて現れるエジプト産ジャスミンとイランイランが、この香りの〝愛の不毛〟を示す天使でもあり死神なのです。あえてグラース産のジャスミンでも、中国産のジャスミン・サンバックでもなく、インドールの効いたエジプト産のジャスミンを使用したのは、この香りの絶対的なテーマである、アニマリックな本能とめまいを導き出す濃厚さが必要だったからです。

そして、獣が身を潜めているような野生の水仙と清らかなパチョリハートが注ぎ込まれ、聖夜のような星空が頭上に広がってゆくのです。さらに、ほんのりとレザーの香りが漂います。

ルイ・ヴィトンの最後の旅。それは、新たなる恋を見つけた女性が、男性とはじめて愛を交わす時に全身で感じる〝この愛のときめき〟をワンプッシュで再現しようとした香りです。だからこそ、この香りには、倦怠感(レザー)が漂うのです。どれほど、新鮮なものであっても、ずっと新鮮だったなら、それは新鮮であるという価値すら失われるという実に哲学的な香りなのです。

この香りは「愛の不毛」の香りです。だからこそ、愛のはじまりの美しさをワンプッシュごとに体感し、やがて感じる倦怠感を香りで捉えることに身悶えする喜びすら感じるようになるのです。

ルイ・ヴィトンの「女のひとり旅」シリーズが、とてつもなく素晴らしいのは、どの香りも、愛と恋に媚びず、ひとりで生きていく女性像が存在し、最後に手にした恋に対してすら、それが終わりの始まりであることを、(特に男性に)示してくれる香りだからです。だからこそ、世界中の男性は、ルイ・ヴィトンの香りを身に着ける女性に夢中になってしまうのです。

「クール バタン」。つまりこの香りは、恋に対しても一瞬一瞬の自分の感情に忠実に生きようとする女性の「感情至上主義」宣言なのです。だからこの洋ナシは、どんな冷たく凍ったハートさえも、溶かしてしまう、とろけて匂い立つ洋ナシなのです。

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エマ ストーン×ルイ ヴィトンが描く『軽蔑』

©LOUIS VUITTON

私は普段から色々なフレグランスを使い分けることに喜びを感じています。ルイ・ヴィトンだと一番愛用しているのは「アポジェ」です。それは南フランスを思わせる華やかな花の香りです。 また、「アトラップ レーヴ」にもハマっています。

エマ・ストーン

エマ・ストーンが登場するキャンペーン・フィルムは、ブリジット・バルドーの『軽蔑』(1963)の舞台にもなったイタリア・カプリ島のマラパルテ邸と、パリのルーヴル美術館の中庭クール・カレに特別に花々を敷き詰めて撮影されました。

ちなみにこのマラパルテ邸というのは、クルツィオ・マラパルテ(1898-1957)がアダルベルト・リベラに設計させ、1938年に建築した建物です。

マラパルテという人は、16歳で祖国イタリアを守るためにフランス外人部隊に入隊し、第一次世界大戦を戦い、最終的にイタリア陸軍の大尉にまでなり、1922年にベニート・ムッソリーニ率いるファシスト党のローマ進軍に参加した生粋の〝行動する漢〟でした。

やがて、彼は、ムッソリーニの独裁化を批判し、投獄され、追放された時に、失意の中、自己の再生を目指し、作り上げたのがこの建物なのでした。そして、後に、作家として成功を収めることになるのでした。

イタリア南部のカプリ島にある要塞のような大豪邸の名を「マラパルテ邸」と呼びます。©LOUIS VUITTON

屋上にはソラリウムがり、そこに至る階段をブリジット・バルドーは歩いた。

そして同じ階段をエマ・ストーンも歩いた。©LOUIS VUITTON

額縁に見立てた大窓が存在する居間にバルドーは座った。

そして、エマ・ストーンも同じロングソファーに座った。©LOUIS VUITTON

ソラリウムで日光浴するバルドー。エマ・ストーンは日光浴はしない。

こちらは2018年にアンソニ・ヴァカレロが監督したサンローランのキャンペーン・フィルムです。主演はケイト・モス。同じ場所で撮影されています。

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香水データ

香水名:クール バタン
原名:Cœur Battant
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2019年
対象性別:女性
価格:100ml/45,100円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン


トップノート:洋ナシ、アンブレットシード、カスカロン
ミドルノート:エジプト産ジャスミン、イランイラン、水仙
ラストノート:モス、パチョリ