ブルガリ マン イン ブラック
原名:Bvlgari Man in Black
種類:オード・パルファム
ブランド:ブルガリ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2014年
対象性別:男性
価格:100ml/23,210円
販売代理店ホームページ:KAWABE
黒いコンスタンティヌスの凱旋門
1884年にイタリアのローマで創業されたブルガリの130周年を記念して『ブルガリ マン シリーズ』第三弾として発売されたのが「ブルガリ マン イン ブラック」です。ネオ・オリエンタル(フローラルオリエンタル)と称されたこの香りは、前二作品の調香を担当したアルベルト・モリヤスにより調香されました。
「ブルガリ マン」が、大人の男性のさりげない心遣いと包容力を、清潔感溢れるウッディな香りで表現したならば、「ブルガリ マン エクストレーム」はそんな男性が見せる〝ONタイム〟の横顔です。さらに「マン イン ブラック」は、もっともっと大きな器と情熱を感じさせる熱い想いと確固たる信念を持つ男性から迸る情熱の香りなのです。
つまりは『香りのワードローブ』三部作として、「ブルガリ マン」が〝オフタイム〟「マン エクストレーム」が〝オンタイム〟「マン イン ブラック」が〝ドラマティック〟という具合に、それぞれ全く違う男性像が投影されているのです。
都会で戦う現代の剣闘士に捧げられた『火と灰の香水』
イタリア・シチリア島北方にある〝地中海の火山列島〟エオリア諸島に属するヴルカーノ島。過去6000年の間に9回の大噴火を繰り返しているこの島は、火山の泥を利用した泥風呂でも有名です。
ローマ神話に登場する火の神・バルカン(ウルカヌス)の名が冠せられたこの島には、ギリシア神話において火と鍛冶の神ヘーパイストスの鍛冶工房があるとされ、二つの神は同一視されています。
輝く太陽と地中海の恵みを受けた火の大地=ヴルカーノ島。かの地から生まれし、ローマの神バルカンの持つ、荒々しくも勇壮な男性性を、都会で戦う現代の剣闘士とも言える男性達に投影すべく生み出されたのが「ブルガリ マン イン ブラック」です。
それは当時のメンズ・フレグランスとしては非常に珍しいオード・パルファムにより、大自然の中でほとばしる都会の闘士の色気をボトルに封印した香りとも言えます。
チューベローズが存在するメンズ・フレグランス
スプレーがまるで噴火口のように、最初から出し惜しみなく、あふれんばかりの男の色気を、燃え盛る火山が爆発し、スパイスが弾け出すようにしてこの香りははじまります。
そして、すぐその後に、アンバーラムの雨が滴り落ちるのです。そのコクのある芳香が、酔わせるようにスパイスに溶け込んでゆきます。そんなスパイシーなラムの香りの背景に、タバコのダークなスモーキーさが加わります。
火山が爆発し、男の素肌の上に火山灰が積もり切った後、香りは、何かが突出した激しさよりも、黒い岩の上を流れる赤い溶岩のように、静かに滑らかに男性の肌の上でダンディズムの溶岩を流し込んでくれるのです。
スパイシーなラムは、苦味の効いたスエードレザーの滑らかさの上で、炭を思わせる香りを伴わせながら、男っぷりをより磨き上げてゆきます。ここからがこの香りのハイライトです。
肌の奥深くから現れるように、チューベローズの妖艶なインドールの効いた控えめな甘さがラムに愛を語らせ、男の余裕を乗せたイリスコンクリート(イリス・アブソリュートという記載もあるが、ブルガリはコンクリートと記載している)の火山灰を素肌に舞い散らせ、ミステリアスに香り全体を包み込んでゆくのです。
チューベローズというメンズ・フレグランスにおいてほとんど使用されない〝花の香り〟が使用されている所がこの香りの大きな特徴です。それは女性に媚びたり、〝モテ〟を意識するような香りでは無いこの香りに、抑え切れぬ男性性を感じさせる役割を果たしています。
やがて、甘いベンゾインとクリーミーなトンカビーンがひとつになり、蜂蜜のようなアロマティック・スパイシーな香りを生み出してゆきます。そこにアーシィー(墨汁のような)な(ダークチョコレートのような)ガイアックウッドが加わり、ウッディスモーキーな甘い余韻に包まれてゆきます。
レザーとタバコが見事にブレンドされた、キリっとした中に温かみも感じさせるロマンチックなドライダウンのはじまりです。
アイリスの火山灰を男の素肌に降らせよ!
まさにブルガリが得意とするフレッシュな香りから180度方向転換した墨(炭)のような香りの登場は、当時の人々を大層驚かせました。それは2010年に「ブルガリ マン」やクリードの「アバントゥス」から吹いたメンズ・フレグランスの新しい風の最後の到達地点だったのでした。
この香りからは〝土埃〟というエレガントとは対極にある野生的で無骨なかっこよさがあります。でありながらも、フォーマルな洗練された印象も兼ね備えている所が、この香りの〝憎いあなた〟なところなのです。
エオリア諸島の黒々とした溶岩を連想させる、しっかりとしたボトルのフォルムに、しなやかなローズゴールドのドラマティックなコントラストが一目見たら忘れられない強烈な印象を残してくれます。それはまるで黒いコンスタンティヌスの凱旋門のようでもあります。
キャンペーン・モデルとして、ファッション・モデルのパトリック・プティジャンが起用されました。ヴィクター&ロルフの「スパイスボム」とよく比較される香りです。
2015年に発売された「オールブラックス・エディション」
ちなみに2015年には、ニュージーランド代表のラグビーチーム「オールブラックス」とコラボした限定ボトルが発売されました。
こちらは「ブルガリ マン イン ブラック オードパルファム インテンス」として、「ブルガリ マン エクストリーム オードパルファム インテンス」と共に、香りの構成はそのままに濃度を高めた形で発売されました。そのボトルデザインも特徴的であり、マオリの伝統的なタトゥが施されていました。
「マン イン ブラック」のイメージは、まさにラガーマンのような筋肉隆々で野生的な〝火〟を思わせる闘志を感じさせるものとも言えるのです。
香水データ
香水名:ブルガリ マン イン ブラック
原名:Bvlgari Man in Black
種類:オード・パルファム
ブランド:ブルガリ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2014年
対象性別:男性
価格:100ml/23,210円
販売代理店ホームページ:KAWABE
トップノート:タバコ、カルダモン、シナモン、ブラックペッパー、ラム
ミドルノート:レザー、チューベローズ、アイリス
ラストノート:ガイアックウッド、ベンゾイン、トンカビーン