エキゾチック ボヤージュ
Les Voyages Exotiques 21世紀に入り香りは新たなる段階へと進み始めました。それは、「花の香り」「女の香り」「男の香り」「エレガントな香り」「カジュアルな香り」という概念を越えた「旅の香り」によってです。
インターネットが普及し、携帯電話も急速な進化を遂げていたこの時代に人々が香りに求めていたもの。それは、「旅客機」の役割でした。その香りを身に纏うと、瞬間移動したかのようにその土地の空気に包まれる(もしくはその土地を訪れたときの想い出が蘇る)そんな香りを人々は求めはじめたのでした。
香りによって、世界を旅するのではなく、香りによって、世界中の大地のパワーを手にする。21世紀に生み出された「旅の香り」の概念は、フレグランスの芸術的な側面をより押し広げていくことになりました。それは明らかにフレグランス革命と呼べるものでした。そして、この革命は、2003年に発売された二つの香りによって成し遂げられたのでした。
ひとつは、エルメスから発売された「地中海の庭」。そして、もうひとつはラルチザンから発売された「ボア ファリヌ」でした。さて、この二つを調香した調香師は同じ人物でした。その男の名をジャン=クロード・エレナと申します。
2003年、香りは「風と落葉と旅びと」になったのでした。
京都から来た男。ベルトラン・ドゥシュフール
エルメスにおける「地中海の庭」の大成功により、2004年にジャン=クロード・エレナは史上初のエルメスの専属調香師に就任することになりました。そのことにより、ラルチザンは、「エキゾチック ボヤージュ」の概念を生み出した調香師を失うことになりました。
そして、「エキゾチック ボヤージュ」の命運を一人の男に委ねることにしました。1997年に「メシャン ルー(いじわるオオカミ)」という香りをラルチザンで調香しており、コムデギャルソンにおいて益々その奇才ぶりを発揮していたその男の名をベルトラン・ドゥシュフールと申します。ちょうどコムデギャルソンにおいて「キョウト」(2002)という香りを発表した後のことでした。
2004年に発売された第二弾「タンブクトゥ」は、世界的に爆発的なヒット作となりました。そして、その一年後に発売されたエレナの第二弾の庭シリーズ「ナイルの庭」の爆発的な大ヒットの影響と合わせて、フレグランス業界は、「世界大紀行ブーム」に突入することになりました。
別名、「ドゥシュフール、俺の旅シリーズ」と呼ばれるようになった「エキゾチック ボヤージュ」は、ドゥシュフールが最も愛するアフリカ大陸からはじまり、ヒマラヤ山脈を経て、カリブ海を経由し、ハバナ、そして、イスタンブールにたどり着きます。それは、エルメスのエレナの旅とは全く真逆のまるでジェームズ・ボンドの旅のような旅程でした。
2011年に、カリーヌ・バンションとエリザベス・マイヤーに委ねられたリオデジャネイロの香りによって、「エキゾチック ボヤージュ」は、7つの偉大なる「旅の香り」を残し、リオのカーニバルの喧騒と共に終幕を迎えたのでした。
7つの「エキゾチック ボヤージュ」
第一弾 インド洋レユニオン島
ボア・ファリヌ 2003年
第ニ弾 アフリカ・マリ共和国
タンブクトゥ 2004年
第三弾 ブータン王国
ゾンカ 2006年
第四弾 パナマ カリブ海の小島
フルール ド リアン 2008年
第五弾 キューバ ハバナ
ハバナ バニーユ(バニーユ アブソリュマン) 2009年
第六弾 トルコ イスタンブール
トラベルセ ドゥ ボスフォール(イスタンブールの空) 2010年
第七弾 ブラジル リオデジャネイロ
バチュカーダ 2011年